NEW YORKER

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Autumn / Winter 2018

Hiroshi Morioka

VOL.01

好みが100あれば、着こなしも100通り
今、ブレザーを着るということ

ファッションディレクター 森岡 弘さん インタビュー

Everybody Blazer, Everyplace Blazer.」…年齢も性別も関係なく、あらゆるオケージョンでブレザーを着てほしい。2018-19秋冬「ブレザーのニューヨーカー」から新解釈のピュアキャメル素材のブレザーが誕生。その魅力を、ファッションディレクターの森岡氏に聞く。

VOL.01

必ず一着は持っておくべきアイテム、ブレザー

── まず初めに。森岡さんの中でブレザーはどのような存在ですか?

森岡
ブレザーというと、本来はジャケットの中の一種ということになるのですが、僕にとってブレザーとジャケットは別モノですね。メタルボタンが付いているかどうかが大きな違いですが、歴史を辿れば、もともとブレザーにはユニフォーム的な意味合いがありました。ブレザーは、僕の中でずっと変わらずオールマイティーなアイテムで、「メンズクラブ」のエディターをしていた当時はスタッフみんなジャケットよりもブレザー派。ボタンダウンシャツやジーンズと同じ感覚で「男性ならブレザーは必携アイテム」といわれるような存在でした。なかでも使いやすいのは、ネイビー。いわゆる“紺ブレ”ですね。当時は結婚式のお呼ばれ服として着用する学生も多くいました。かしこまった場に着て行ける服でありながら、一方で街着として活躍するおしゃれ着でした。60年代に流行ったアイビールックの代名詞にもなり、その後もラギッド、プレッピー、アウトドア、渋カジ…とさまざまなファッションムーブメントの中心にネイビーブレザーがありましたね。

── 現在のファッションの流れ的にはどうですか?

森岡
実は今、ファッショニスタと呼ばれる感度の高い人たちが2シーズンほど前から着始め、この流れが広がってきており…これからブレザー人気が高まると思っています。イタリアを中心とした海外のメゾンからも、メタルボタンのジャケットがかなり出てきていています。これはもしかしたら、数シーズン後に大きな動きを見せるかもしれません。

── どーんと流行の波が来るかも!?

森岡
もちろん流行を追うのもよいのですが、ブレザーに関してはやはり「必ず一着は持っておくべきアイテム」と強く言いたいです。好感度は高く、フォーマルにもカジュアルにも着用できて、年配の方からビジネスマン、学生までさまざまなシーン・シチュエーションで着こなせるアイテムだからです。昔から言っていることなのですが、「着こなしに困ったらブレザー」はおすすめです。ドレスシャツとネクタイでカチッとした着こなしもできれば、カジュアルなTシャツの上に羽織るだけでもいい。ボトムスにおいてはコットンパンツ、デニムパンツ、いわゆるスラックス的なもの、さらにスウェットパンツやショーツにまで自由に合わせることができます。ドレスアップからドレスダウンまで全てのシーンに使えるので、もうコーディネイトはその日の気分で「お好きにどうぞ」です(笑)。

新提案、コートの代わりにブレザーを

── このキャメル素材のブレザー、デザイナーの中島さんにお聞きしたところ「コートの代わりにブレザーを」がコンセプトになっているそうです。

森岡
僕は常々「コートはコートとして着ないでいい」と考えています。防寒アイテムとしてだけではなく、まさにコートをジャケット感覚で着たり、コートの下がTシャツだっていいと思っているんです。その方がコートの楽しみ方が広がるから。このキャメル素材のブレザーは、生地感もしっかりしていますし「コート代わりのブレザー」として十分活躍してくれると思います。コートのようにラペルを立て、ハットやマフラー、グローブを合わせても様になりますね。

── その生地感についてですが、このブレザーには内モンゴル・アラシャン地方で最上級といわれているキャメル100%が使用されているとか。

森岡
おお、それは凄い。肉厚でしっかりとしていて、キャメルならではのなめらかな風合いにちょっと懐かしい感じもしていいですね。その素材に、予定調和な金ではなく、あえて“ずらし効果”でガンメタル調のボタンを合わせたところにも面白みを感じます。金ボタンよりビジネスでも使いやすいでしょうね。それからシルエットもいいですね。イタリアクラシコトレンドのハイゴージを取り入れながら、フィッシュマウスラペルなど最近のアメリカの要素も加えられていて。ニューヨーカーさんならではの新しい解釈でデザインされた一着という印象です。

── このブレザーを使った森岡流おすすめのスタイリングを教えていただけますか?

森岡
ビジネスで着るなら、やはり王道はグレーのパンツですね。ネイビーのブレザーにはグレーのパンツ、これは鉄板です。ブレザーのシルエットがシャープでモダンな仕上がりですから、パンツもテーパードで裾幅19cm前後ぐらいのものを合わせるとモダントラッドな着こなしが楽しめると思います。そこにペイズリーやストライプ幅の広いネクタイをプラスすれば、ちょっと遊び心のきいたビジネススタイルに。やや硬めの仕事をされている方は、ブレザーと同じような色・生地感のパンツをチョイスして、ブレザースーツ的に合わせると小技をきかせたスタイルになります。遠くから見るとスーチングしているような感じでトーンをそろえるのがポイントです。学生はデニムやチノパンでもOK! もっと崩したい時は、ジャージやシャカパン、頭にはニットキャップなどを被ってスポーツミックス調も面白いと思います。アウトドアっぽくネルシャツ、ベスト、厚手のタートルネックニットなどもいいですね。本当に何でも合わせられるので、着こなしは貴方次第。今秋冬のマイ定番として推薦します!

定番だからこそ「どう着こなしたいか」を思い描く

── 森岡さんご自身が2018-19AWシーズンにこのブレザーを着るなら?

森岡
インナーには、ブレザーの色に合わせたネイビーのカーディガンとタートルネックのアンサンブルニット。ボトムスには同系色のテーパードパンツ。ワントーンでクールにまとめて、モダントラッドスタイルを楽しんでみようかな。ペイズリーなどの古典柄がプリントされたシルクストールを、カーディガンの中に垂らしてもいいですね。先ほどから、このブレザーは何にでも合うと言っていますが、さまざまに着こなせる分、「どう着こなしたいか」が重要になってくると思っています。ぼんやり袖を通すと、もしかしたら定番過ぎて普通に見えるかもしれません。もちろん普通もアリですが、トレンドアイテムとして一歩先のおしゃれを楽しみたいのであれば、「自分がどう着たいか」「どう遊んでみるか」などを思い描いて着ていただきたいですね。真っ白なキャンバスに、好きな絵の具で好きな絵を描くように、ブレザーというキャンバスに目指す自分を思い描いて袖を通してみてください。

── このブレザーは、自分で思い描いた着こなしが自由に楽しめるということですね。

森岡
はい。最近よく考えるのは、ファッションの位置付けです。いまの時代の服と人との関係って、並列より服がちょっと下で、服が着る人をサポートするぐらいのバランスがベストだと思うんです。人の印象をよりよく演出してくれるのが服。服が着る人より目立ちすぎると、よい印象を与えないと思います。自分で自分をプレゼンテーションしなければいけない時代。「あの人センスいいね」「いつもちゃんとしているね」という見え方はとても重要で、そういう服がこれから大事になってくるはずです。

Profile

Hiroshi Morioka

森岡 弘(もりおか ひろし)さん

男性ファッション誌『メンズクラブ』にてエディターとして活躍後、独立。1996年にクリエイティブオフィス「株式会社グローブ」を設立し、ファッションを中心に活動の幅を広げる。現在は俳優やアーティスト、文化人などのスタイリングを行なう他、イベントやショップのコスチューム、企業のユニフォームの制作などにも携わっている。

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