NEW YORKER

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Autumn / Winter 2019

HOUSE TARTAN

VOL.08

ニューヨーカーが大好きだから
ハウスタータンを着る、そんな存在に

ニューヨーカーウィメンズデザイナー 大橋智美 インタビュー

カジュアルに思わせて、ふわっと漂うロイヤルな空気。変わらないように、変わっていく表情。なんだかとっても奥深い魅力を秘めた、ブランドの「顔」ニューヨーカーのハウスタータンにフォーカスをあてたインタビュー。

VOL.08

それはアイデンティティそのもの、特別なもの

── ハウスタータンとはどういうものか教えてください。

大橋
ニューヨーカーで扱うタータンチェックには「ハウスタータン」と「シーズンタータン」の2つがあります。名称からもわかるようにハウスタータンはニューヨーカーブランドを象徴する柄で、これはスコットランド・タータン登記所にも正式登録されているもの。使用する色の濃淡やピッチ、白地の幅などにルールがあり、これに対してシーズンタータンは色や柄を自由に組み合わせたものになります。

── ニューヨーカーのハウスタータンのルールとは。

大橋
ネイビーとホワイトをベースに、アクセントカラーを加えたチェックです。具体的にいうと、ブランドを代表するアイテムであるブレザーのネイビー、生地の原料である羊毛のホワイト。そこに英国の厳粛なイメージを表すブラック、上品なイングリッシュローズのバーガンディ、快活な空を思わせるブルー、とブランドに縁のある5色で構成されています。先ほどもお伝えしたように色以外にもルールがあり、さまざまなパターンでの試行錯誤を経て、完成までに約1年を要しました。

── いきなりビビッドな色が入るということはないのでしょうか。

大橋
そうですね。ハウスタータンの色柄には登録されたルールがありますので、色柄を変化させたい場合はシーズンタータンで取り入れます。但し、オリジナルイメージを大切にしたいので、柄のバランスや色の配置を工夫しながら、ハウスタータンの基本イメージからかけ離れてしまうものはあえてつくらないようにしています。ハウスタータンは、ブランドアイデンティティそのもの、特別なものとして位置付けています。ニューヨーカーのショッピングバッグにも使用されているので、持っている人を見掛けただけで「あ、ニューヨーカーだ」と思っていただけるよう、あえて変え過ぎないことに気を使っています。

── 今秋冬もチェック柄は注目されています。

大橋
ハイブランドなどでも“クラシック回帰”というテーマで、タータンチェックなどトラディショナルパターンが人気を集めています。でもそれはチェックがトレンドということではなく、各ブランドが持つ歴史や伝統、長い時間をかけ大切に育んできた価値を再構築し、よりブランドの独自性を高めていくといった流れが今、来ているということ。このハウスタータンはニューヨーカーの財産なので、そういった時代の流れにもぴったりはまると思います。トレンドだからタータンチェックを着るのではなくて、ニューヨーカーブランドの独自性や信念などに共感していただいてハウスタータンが選ばれる…そんな存在になれたらいいなと。だからこそ、私たちはお客様に信頼していただけるものをしっかりとつくっていくことが使命だと感じています。

柄そのものが、アクセサリーになってくれる

── 今回、タータンチェックのシャツが2点登場しますね。

大橋
はい。ひとつは、ビッグタータン。思い切って大きくしました。ハウスタータンの柄を拡大することでかっちりし過ぎない、アシンメトリーな雰囲気に見えるところがポイントです。整列していないように見える格好良さが、いい意味で抜け感を演出してくれています。

── 襟を見ると、アシンメトリー感がわかりやすいです。

大橋
チェックは、このようにフォーカスしていくとアグレッシブな表情が出るんです。普通はチェックというと動かない・堅いといったイメージがありますよね。それが逆に信頼感が湧くところでもあるのですが、このように少し変化をつけるだけで“一歩前へ進もう”と感じさせてくれるような動きが出てきます。着る姿勢を変えてくれるようなアレンジにこだわりました。

── もうひとつは?

大橋
ハウスタータンの配色を逆転させたシーズンタータンです。色を逆転することで、白の割合が多くなります。白といっても、やわらかいウールのようなクリーミーな色をしているので、ネイビーとの組み合わせでより女性らしさや清潔感が感じられる仕上がりになっていると思います。白地を増やしミルキーなイメージにすることで、やわらかく、軽やかで、着やすい印象に。かっちりとしたブレザーなどを合わせても、全体として女性らしさを表現できるよう意識しました。

── スタイリングについてアドバイスをいただけますでしょうか。

大橋
カジュアルも、きちんと感のある着こなしも両方できますね。ビッグタータンの方は、柄自体に主役感があるので、濃色のパンツなどに一枚合わせるだけで軽快でハンサムなスタイリングが完成します。配色を逆転させたシーズンタータンは、デニムなどを合わせてもかわいいと思いますが、ニューヨーカーらしく着こなしていただくのであれば、ブレザーなどを合わせたり。シャツ自体がパールのネックレスを着けているような清潔感をもたらして、ブレザーのかっちりとした印象も和らげてくれます。個人的には、ややメンズライクなシャツなので、ベージュ系の女性らしいタイトスカートを合わせてみたいですね。ニューヨーカーのハウスタータンはチェックの印象が強く、柄そのものがアクセントになるため、ベーシックなカラーと合わせるのが一番素敵だと思うんです。今回ご提案するハウスタータンに関しては、黒やグレー、ベージュ、白などでぜひ試してみてください。

── シャツの襟を立ててハンサムな着こなしもできそうですね。

大橋
しっかりとした襟なので、立てて着ていただいてもOKです。ニューヨーカーはブレザーやジャケットをつくっているブランドでもあるので、それに合わせられるよう襟の形にもこだわっています。よく見ると、シャツの襟に若干のくびれがあるのがわかりますか? これによって、ジャケットの下でシャツの襟が浮いてしまうことがなく、きちんときれいに収まります。

── 細部までこだわりを感じます。さて、今回はハウスタータンの小物たちも登場するとか。

大橋
はい。スカーフやバッグなどを展開します。小物の方が差し色感覚で取り入れやすいかもしれないですね。ジャケットやコートの首元からスカーフのハウスタータンを覗かせれば、さりげなくアクセサリーの役目を果たしてくれます。ブランド55周年を記念したアニバーサリーグッズもいくつかご用意しています。オーセンティックで女性らしいベージュレザーのハンドバッグや、これまでのニューヨーカーでは見られなかったゴールドのスタッズを付けた遊び心のあるポシェットなどです。トレンチコートなどに合わせたら、とてもかわいいと思います。

ハウスタータンは、思いを伝えるラブレター

── 最後に、大橋さんにとってハウスタータンとは。

大橋
このハウスタータンが変わらずにいてくれるからこそ、ほかのものを時代とともに変化させていけるのかもしれません。デザインをしていてトレンドをキャッチすることも重要ですが、必ず帰るところがあるというのも大事なんです。ハウスタータンがあるブランドだから、新たに挑戦できるものがある。我が家があるから旅にも行ける、みたいな(笑)。そして、世代を問わず、このハウスタータンファンがいてくださるということもうれしいですね。ハウスタータンは、私たちつくる側にとってニューヨーカーからの「愛」を伝えるもの。そして、大変ありがたいことに、お客様からもいつの時代も愛され続けているもの。ハウスタータンは、それぞれの思いを伝えるラブレターみたいなものかもしれないですね。

Profile

Tomomi Ohashi

NEWYORKER Women’s デザイナー
大橋智美



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