アメリカン・シーアイランドコットンとは

「シーアイランドコットン」の呼び名は、18世紀に西インド諸島産のバルバデンセ種（コットンの種類）がアメリカのシーアイランド地方に持ち込まれ、そこで栽培された綿花に由来します。ですが20世紀初頭にアメリカでのシーアイランドコットンの栽培は、壊滅的な害虫被害により断念され、別の種類の綿花栽培へと移っていきました。それから100年ほどの月日が流れ、技術者の情熱と農業進歩により復活を果たしたのが、現在市場に流通しているアメリカン・シーアイランドコットンです。
この綿花は、西インド諸島産シーアイランドコットンのDNAを100％受け継ぎながら進化を遂げた高い品質を誇る超長綿で、繊維長、繊度、強度、色艶において大変優れており、シルクのような光沢と繊細な柔軟性があり洗濯を繰り返しても風合いが保たれます。さらに繊維に含まれる油脂分が多く、触れたときにとても柔らかで、優れた吸水性も魅力です。

シプリらしい、素材へのアプローチ

英国王室をはじめ世界中の人々の羨望を集め続けてきた西インド諸島産シーアイランドコットンのDNAを100％受け継ぎながらさらなる進化を遂げた、「アメリカン・シーアイランドコットン」。そんな上質なコットンは、均一な糸で滑らかな表面感の生地に仕上げることが一般的ですが、シプリでは敢えて空気精紡という糸の紡績方法で、不均一でナチュラルなスラブ感がある糸に仕上げました。不均一な糸を使用することで、生地に仕上がった際にも不均一でニュアンスのあるカジュアルな素材感をお楽しみいただけると共に、素材に由来する柔らかさを体感していただけます。

「天地引き」という熟練の職人による裾始末

天地引きとは、Ｔシャツの裾や袖口部分に用いる裾始末の方法です。生地の表面にポツポツと小さな縫い目が現れ、一見頼りなく見える縫製方法ですが、縫い目の構造上縫い目方向への引っ張り強度は平２本針縫製より優れており、伸縮性のあるニット生地に適しています。
この天地引きという手法は、縫製時の手加減などにより縫いはずれや、逆に深く入り過ぎるということが起こりやすいため、縫製には熟練を要し、限られた人のみができる裾始末として価値観のある仕上がりとなっています。

染めについて

様々な工程を経て出来上がったTシャツは、東京都江戸川区に工場を持つ大正5年に創業された老舗の染色工場、「黒沼染工場」に依頼をし、反応染めという堅牢度の優れた染色方法で染めあげています。
この染色方法により、洗濯等でも色が落ちにくく、陽に焼けにくくなるため長く使用していただけるようにお作りしています。また、Tシャツの状態で染色を施す製品染めという手法を行うことで、ヴィンテージ感のあるニュアンスのある染め上がりとなっています。

このTシャツができるまで

かねてよりシプリのデザイナーの中で吊り編み機でTシャツを作りたいという想いが以前からあり、そこからこの企画はスタートしました。その想いを、シプリで以前からお世話になっている吊り編みを得意とする東紀繊維の担当の方へお話した際に、アメリカン・シーアイランドコットンの素材をご紹介いただきこの企画がスタートします。
やるからには巷に出回っている素材ではなく、一から素材を作りたいというデザイナー自身の考えの中で、空気精紡で糸を作るなどシーアイランドコットンという素材に対して一般的にはやらない製法を取り入れた、玄人好みの製品が出来上がりました。市場ではなかなか出回らないような、シーアイランドコットンという高貴で上質な原料を敢えてカジュアルに落とし込んだ、ラグジュアリーさを秘めたこのTシャツを、ぜひご堪能いただけますと幸いです。