- NAVIGATOR 地曳いく子(じびき いくこ)さん
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さまざまな女性ファッション誌のほか、女優などのスタイリングを行なう、キャリア30年超のスタイリスト。「着やせ」などの実用的なテーマを持ったスタイリングに定評があり、大人の女性の服選びの第一人者。著書に『50歳、おしゃれ元年』(集英社)、『50歳ファッション黄金セオリー さようなら、おしゃれメランコリー』(WAVE出版)、『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社)がある。
ワードローブを時代に合わせて
アップデートしていく。
──“服を買うなら、捨てなさい”とは、具体的にどういうことなんですか?
地曳: おしゃれになるためには、まずは似合わなくなったダサい服を捨てることが大事だということなんです。昔は最強だと思っていた鉄板コーデも、時代と共にどんどん色褪せていったりするでしょう? それは、年齢を重ねた自分と洋服のバイブレーションが合わなくなるから。その途端、その服は自分の足を引っ張る“ブス服”になってしまう。あとは、必要もないのに買ってしまって全然着ない服とかもありませんか?
──ありますね…(苦笑)。
地曳: それもこれも全部自分に似合う服を把握していないから、どんどん家の中に蓄積していってしまうんです。だから、まずはそういうアイテムを捨てて、ワードローブをスッキリさせる。そして自分のなかの精鋭だけを集めて、そのなかでファッションを楽しむんです。そうすれば似合わない服を着なくて済むし、いつでもモチベーション高くいられますから。
──でもそれで終わりではないんですよね?
地曳: そうです。ファッションってそもそも時代と一緒に進化しているので、洋服にも賞味期限があるんですよ。冷蔵庫の中に賞味期限切れのものがあったら、それを捨てて新鮮なものに買い替えますよね? ワードローブもそれと同じで、時代に合わせてどんどんアップデートしていかないと、時代遅れのダサい服を着ている人になってしまう。だから、あなたを素敵に見せる洋服にも目を輝かせていないとダメなんです。
──でも、それを買うならまずブス服を捨てなさい、と。
地曳: そういうことです。服を捨てるってもったいないし、なかなか勇気がいることなんだけど、でも着ない服を持っていたり、ブス服を捨てられないがために新しくて魅力的な服を着れないことのほうがもったいないと思いませんか?
──たしかに…。でも実際捨てるとなると、なかなか踏ん切りがつかない人も多いんじゃないかと。いつか着る機会がくるんじゃないかな? と思ったりもします。
地曳: うん、その気持ちはわかります。でも、着ていないということはどこかしら難があるわけで。思い出ってなぜかいいことばかり記憶に残っているんだけど、実際悪いこともたくさんあるんですよ。「シルエットがきれいに見えるけど着心地が最悪…」とか、「思っている以上に生地が傷んでる」とか。そんな服はあなたの価値を下げて、あなたをブスにするだけ! それならさっさと手放した方がいいです。恋愛で「昔の彼のことなんかきれいさっぱり忘れて、新しい彼を見つけましょう」っていうのと同じですよ(笑)。
おしゃれっていうのはダサい服を着ないこと。
──新しい洋服を買うときに、“着ないままの服”を買わないようにするにはどうしたらいいんですか?
地曳: まず、妥協して洋服を買わないこと。試着して「なんか変だな」って思うものは、たとえお買い得な値段でも買わない。あとは“たられば”で買物をするのも良くないですね。痩せたら穿こうと思って買ったボトムとか、パーティがあったら着ようと思って買ったドレスとか。そういう服って、買ってもまず着ませんから。なぜなら、“もしも”のタイミングが来たときにはすでに自分の気分が変わっていることが多いから。だから洋服を買うときは“いま着れるもの”を買うべきなんですよ。
──うーん、耳が痛いことばかりです…(笑)。他になにか意識しておくべきことはありますか?
地曳: いま着れる服とはいえ、「これ、私の好みにピッタリ!」っていう服もそうそう見つかるもんじゃないんですよね。だから「いま持ってるものよりはいい」っていうような気楽な価値基準で買物をするのがいいと思います。それでもお気に入りが見つからなければ、手ぶらで帰っても全然いいんです。世の中にはたくさん洋服があるから、違う場所できっとあなたに似合う服がみつかりますよ。
──そう考えると、なんだか気持ちが楽になる気がしますね。
地曳: そういうことを意識して自分のワードローブを常に進化させていると、私みたいな50代になったときにとんでもないことにならない。私なんかいまでも家のなかを断捨離中というか…。自分への戒めのためにこの本を書いたようなもんですから(笑)。だからみなさんの気持ちがよくわかるんですよ。
──たしかに、本を読んでいて納得する部分がすごく多かったです。とくに印象的だったのは、同じコーディネートを週に何度も着ていい、というところでした。
地曳: 毎日違う服を着なきゃいけないなんて、ただの迷信ですよ。仕事が忙しくて、ファッションに対してエネルギーを使えないシーンってたくさんありますよね? そんなときに付け焼き刃のコーディネートをしてもダサいことが多いし、「なんで私、こんな服着てるんだろう?」って自分のモチベーションまで下げちゃう。そうなるんだったら、そのときのベストコーデをいくつか繰り返して着たほうが、魅力的な自分でいられるし、気分も落ち着いていられますよね。
──そちらのほうが効率的で、仕事への集中力も増しそうです。
地曳: この本を出したあとに、とあるブロガーさんと対談する機会をいただいたんです。彼女のインスタグラムはすごく人気で毎日違うコーディネートをアップしてたんですけど、それのためだけに、さほど気に入っていない安い服を買うクセがついていて悩んでいた。だから、そこまでするくらいなら更新頻度を減らして、その分自分の好きなスタイルだけをアップするようにしたら? ってアドバイスしたんです。そしたら前よりも“いいね”やコメントの数が増えたらしいんです。