しなやかに、正直に。心身の探求者、島本さんの美の秘訣。
週1から始めたヨガがあっという間に週5!
―― モデルからヨガインストラクターへ転身されましたが、そのきっかけは何だったのですか?
東京でモデルの仕事をしながら、ときどき実家のある兵庫に帰っていたのですが、帰るたびになぜか母親の姿が少しずつ変わっていったんですよ。あれ、もっとお腹出てなかったっけ?とか、醸し出す雰囲気も明るく楽しそうだったので、お母さん変わったね、どうしたの?と。聞けば最近ヨガを始めたとのことで、「今度一緒に行く?」と誘われたのがヨガとの出合い。のちにインストラクターに転身したきっかけです。
―― モデルのときからヨガをしていて、というわけではなく?
そうなんです。そのとき確か…24、5歳でしたが、それまでヨガ経験はまったくなかったんです。
―― 初回から”ピン”とくるものが…?
ありましたね。「インストラクターになろう」とまでは、もちろん思いませんでしたが、「からだ中が”スーっ”として、なんかすっきりする!」と感動したことは覚えています。それで、これは絶対東京に帰ってからも続けよう、と決めてすぐに教室探し。からだを動かすことが好きだったので、スポーツジムのなかに入っているレッスンに参加することから始めたのです。
―― みるみるうちに、ハマっていったのですか?
はい。週1から始めたのですが、「週に1回じゃ全然足りない!」と週2、週3となり「まだまだ、ヨガならいくらでもできる!」と、気づけば週に5回通っていて(笑)。きっと、そのころ私が自分の将来について思い悩んでいる時期だったので、余計に夢中になっていったのかもしれません。
何かに無理に合わせている自分はキツかった。
―― 悩んでいたときに、ヨガに出合ったんですね。
まさに完璧なタイミングで。私は幼いころからモデルに憧れて、夢をかなえるべく上京し、そして実際にモデルの仕事ができて、充実感もあるにはあったのですが…。でも、それよりも自分のなかでどうしてもぬぐえない”しっくりこない”感じがずっとあって。
―― しっくりこない感じ。具体的にどういうことですか?
なんていうのか、自分が何かに無理矢理”合わせている”という感覚です。こんなメイクをしなきゃいけない、こんな服を買わなきゃ、こういうところに食事に行かなきゃ、とライフスタイルにまで自分で縛りをつけていて…。すごくフラストレーションがあったんです。第一線に行かなきゃ、とかもっと輝かなきゃ、のようなモデルとしての”こうでなきゃ像”が強すぎるあまり、バランスを崩していたのだと思います。
―― ヨガを始めて、その部分が変わってきたということですか?
そうですね。ヨガをしていると”なんかスタジオに来ると、気持ちもラクだな”と感じていました。”こうでなきゃ”という強い念みたいなものがどんどんゆるんでいって、自分でも不思議な感じがしました。
―― すごいですね。…すみません、よく分からないのですが、ヨガをするとどうしてそんなに驚くような変化が起きるのですか?
そうですね。やはりヨガでいちばん大事だとされている”呼吸”を整えるからではないでしょうか。呼吸が変わると意識も変わりますからね。深い呼吸が分かると、まず、物理的に本当にからだが軽くなるんですよ。
日常的な呼吸はどうしても、胸とか鎖骨あたりの上のほうばかりでしているんですね。これだと内蔵も動かないのですが、腹式呼吸を意識し、できるようになると、横隔膜や内蔵が動いて、マッサージされて、腸の活動もスムーズになりますし、血流もよくなって老廃物もきちんと出るようになります。ちょっと今自分のお腹を触ってみてください。固いという人は、緊張している人が多いんですよ。
―― か、固いです…。そして、今島本さんが深い呼吸したら、”ぐるるる”とお腹の音が!
そう、動くんです。お腹が固い人は手でさするだけでも、少しラクになりますよ。私もヨガを始めてから、徹底的に呼吸を見直しました。こんなに何十年も無意識にやってきたことを改めて習ったり覚えたりすることは新鮮でしたね。モデルとして動きについてはさんざん考えていたのに、呼吸はできていなかった!と(笑)。現代人には本当に多いと思います。
―― 呼吸を始め、少しずつ変化が起きていったのですね。
内側に向けた深い呼吸を覚えていくうちに、からだがゆるむことを体感しました。それとともに頭もクリアにすっきりしていきました。モデル時代は、未来のことで悩んでいたり、ライバルに対して「なんであの子ばっかり」なんて気持ちもあったり、隙あらば「あ、あの件どうしよっかな」と考え始めたりと、頭のなかは常にせわしなく動いていて、からだを休めていてもまったく休んだ気にならなかったのです。
でもヨガをするなかで、ただただ、吸う、吐く、と呼吸に集中して、からだの変化を感じていると、素の自分に戻っていく感じがして心地よかったのです。それこそ、からだが軽くなって飛んでいきそうなくらい(笑)。
―― そんなに!
ライバルとも戦わなくていいし、別に自分とだって戦う必要ないなって。戦いじゃなくて、ただ、”今の自分”に気づいたり、知ることが大事なんだ。という状態になって、すごく気持ちがラクになりました。
あんなに固かったからだが自然に柔らかくなり…
―― 先ほど、撮影の前の空き時間にヨガをしている島本さんを見て、からだのしなやかさに驚きましたが、元から柔らかかったのですか?
とんでもないです! 前屈なんて、”ん、どうした?”というくらい手が伸びない。
―― それが、あんなにも?! 訓練の賜物ですか?
いえいえ。あえて言うならば、きちんと決めてからは柔らかくなり始めましたね。”ヨガをやっていこう”って決めたときから。不思議ですね。でも、からだの動きと意識や考えというのはリンクしていますから、考えが変わったことも理由かもしれません。心身のつながりで言うなら、たとえば、心のなかに”恐怖”がある人は前屈がしにくいんですよ。
―― え? そうなんですか?!
はい、私は当時、”私はこう!”という思いがものすごく強かったので、それ以外の考えを受け入れるのは怖かったのかもしれませんね。それをからだの固さが如実に物語っていました。笑う行為もそう。笑うと腹筋を使いますよね。そうすると、お腹の緊張がやわらいで、からだ全体もゆるんだり。
ヨガで呼吸に合わせて、重力を感じながらからだを動かしているうちにからだも考えも同時進行で変化していったのだと思います。やりたいことと得意なことが違うこともよくわかりました。モデル時代の私は例えるなら「自分は木の素材なのに、一生懸命ガラス屋さんに通っていた」感じ? 気づくまでに多少寄り道はしましたけれど、自分の行くべき場所が見つかってよかったです。
―― その後、インドやタイ、オーストラリアに修行にも行かれていますね。
インドでは、朝5時から夜10時までという、すさまじいスケジュールでトレーニングをするのですが、これが全然苦じゃない、どころか楽しいんですね。ひとことでヨガといっても、動くヨガだけでなく、ヨガスートラと言って、哲学書を読んで勉強したり、インド占星術なんかもヨガに入るんですよ。
好きなことをつなげたら” 月ヨガ”が生まれた
―― 島本さんが編み出した”月ヨガ”は、どのように生まれたのでしょうか?
“月ヨガ”という仕組みを考えよう!と必死に生み出したのではなくて、好きなことを勉強していたら、自然とつながっていったという感じです。これには、祖母の影響も大きかったと思います。
―― おばあさまの影響ですか?
私をすごくかわいがってくれていた祖母と私の会話にはよく”月”という言葉が出てきたんです。会うたびに「お月様に、麻衣ちゃんが今日も元気でいますようにってお祈りしてんで」と言ってくれたり、彼女がつけていた月日記というのを教えてくれたり。月日記というのは、その日にあった出来事と一緒に月の形を記すものですが、いつしか私も祖母の真似をして”月日記”を付け始めたんです。
日記には、その日にあった出来事のほかにも、泣きたくなったり、イライラしたり、穏やかだったりと精神状態もつけていました。ずっとつけているうちに、月の満ち欠けのリズムと、精神面や出来事などが見事にリンクしているなと思ったんです。これは、ヨガのポーズに取り入れることができる!と研究をしました。
―― 月のリズムと自分の状態がリンクしているなんて考えたこともなかったです。
地球から最も近い惑星である月の影響は大きいのだと思います。新月から満月に向かって月が満ちていくときはからだの吸収力が高まって、心も栄養分を吸収する”アクティブ期”。
―― そういえば、満月の夜は泣きたくなる気もします(笑)
感情が高ぶって、コントロールができなくなるという人も多いですよね。逆に、満月から新月に向かって月が欠けていくときは、排泄力や解毒力が高まって、心やからだの老廃物が出ていき、からだがゆるむ”デトックス期”なんです。
―― その周期に合わせてヨガのポーズが変わるのですか?
はい、アクティブ期、デトックス期をさらにそれぞれ2周期ずつに分け、計4周期ごとに、その時期に合ったポーズで、美しくなりましょう、というのが月ヨガです。アクティブ期には、高ぶる感情を抑えて、大地に根を張るようなどっしりとしたポーズを、デトックス期には、緊張をほぐし、排出力を高めるようなポーズをいくつか提案しています。
新月から満月に満ちるアクティブ期(2014年7月27日〜2014年8月11日)には…
【膝をついた三日月のポーズ】
① よつんばいになる。このとき、肩の下に手があり、股関節の下に膝があることを確認する。
② そのままお尻を引っ張る。
③ そこから右足を大きく一歩前に足を出す。右足はかかとの上に膝がくるように。息を吐きながら行います。
④ 息を吸いながら両手を上に羽ばたかせる。この姿勢のまま5呼吸。①に戻り左足も同様に。
満月から新月に移るデトックス期(2014年8月11日〜2014年8月25日)には…
【反蓮華座のポーズ】
① 両足を伸ばして、背骨を立てて骨盤を起こします。L字型になるように。座骨をしっかりとおろす。
② 左足のつま先を右足のふとももの付け根の上に乗せる(つらければ太ももの中間くらいの位置でも)。
③ 両手を天に真っ直ぐ伸ばす。
④ 息を吐きながら股関節からからだを前に倒す。背骨が下のほうから伸びるのを感じる。①に戻り右足も同様に。
マットの上だけがヨガじゃない
―― 月の満ち欠けに合わせたヨガが、月ヨガなのですね。
はい、でもそれだけではありません。みなさん自分の星座はご存知だと思うのですが、もうひとつ月星座というのがあるのは知っていますか?
調べればすぐに分かると思うので興味があれば調べてみてください。
月星座は、考え方や感情など無意識の部分や内面を現すと言われているのです。星占いを見ていて”んーどうも違うな”と感じるようなときに、月星座のほうを見ると、しっくりくることがあります。
―― 本当は皆ふたつずつ星座をもっているということなんですね。
それぞれの星座には、牡羊座は頭部や目、牡牛座は首回り、というように、つかさどるからだの部位があります。自分の月星座を知って、その部位をほぐしたり、刺激するようなポーズをおすすめしていますが、これも”月ヨガ”なのです。
―― これなら、月が出ていなくてもできますね。
さきほどの月の満ち欠けのポーズも、月を見ながらしましょうというものではなく、家で朝でも夜でもいつでも大丈夫ですよ。もっと言うなら、マットのうえだけがヨガじゃなくて、そこから1歩出てもヨガ。どんなことを意識して、経験して、どんな自分になるのか、それもヨガなのだと思います。ときどきね、”あ、これは試されてるな”なんて、魔の手も伸びてきますからね(笑)。流されたいときは流されてもいいと思うのですが、そういうときこそ、あれこれ考える前の直感の力を信じます。
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服は、気持ちをつくるもの
―― ところで、島本さんは普段はどのようなファッションをすることが多いですか?
モデル時代は、ボディラインが出るような服が多かったんですけどね…すっかり変わって今は、ゆったりとした優しい素材のものを選びます。動きやすい、というのが第一条件かもしれません。服は気持ちをつくりますからね。ジャケットを着て、ヒールを履いているときは、気持ちもしゃんとしますし。何もないときは、できるだけ自分を解放できるような締め付け感のなく、それでいて、着ていて楽しくなるような服が好きです。
―― やはり食べ物なども気をつけているのですか?
東京にはさまざまな食べ物があるなかで、信用できる情報をもとに、できるだけからだにいいもものを取り入れたいとは思っていますが、でもいちばん大事なのは、”食べたいものを食べる”ことだと思います。私、1年間ベジタリアン生活もしていたことがあるのですが、もちろんその生活で健康になる方もいるとは思うのですが、合う合わないというのはあって。
私の場合、血液の状態もあまりよくなくなり、代謝も下がってしまったんですね。そのときに、これからはからだが求めているものを食べよう、と決めました。今、台湾と日本の半分ずつの生活をしていて、向こうの食べ物の奥深さや漢方には興味津々です。
―― 台湾との二重生活なのですか?!
そうなんです。”旧暦”で生活をしてみたいな、と思ったことがきっかけで1年の半分は台湾に住んでいます。今は太極拳の勉強も始めたのですが、ヨガとつながる動きもたくさんあって、すごくおもしろいです! 80歳過ぎたおばあちゃんとかのしなやかな動きや達人のようなからだの使い方を見ていると、私もまだまだだなと。また、この体験から”月ヨガ”のように、好きなことをつなげて新たなものが生まれたら楽しいですよね!
最後に島本麻衣子さんから
“美しくなるためのメッセージ”
自分の内面とつながることももちろん大事だけれども、緑や海、月など自然のパワーとつながることでも心とからだが癒されます。私は、20代半ばで初めてヨガに出合い、そこからインストラクターを目ざし、30代となった今、台湾での生活も始まり新たな道を歩んでいます。年齢に遅い早いなんてきっと関係なくて、”今の自分”に正直に行動すれば、そのすべてが最終的にうまくつながっていくんだと思います。