HOW TO

機能と見た目にこだわった 大人のための文房具


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仕事や勉強など日常のさまざまなシーンで活躍する文房具。日々使うものだからこそ、その機能やデザインにこだわれば、仕事がはかどったり、毎日の生活が少し楽しくなります。世の中のブームに後押しされるように日進月歩で改良が進む、文房具の奥深き世界をよく知る、古川耕さんにオススメの文房具を紹介してもらいます。

古川 耕

NAVIGATOR
古川 耕

1973年生まれ。ライター・放送作家。月刊「GetNavi」にて「文具でモテるための100の方法」を連載するなどメディアでの文具批評などを行う。「OKB(お気に入りボールペン)48」の総選挙を開くなど、文房具に対する愛情はとどまるところを知らない。


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古川耕さん愛用のこだわり文具

まとめる! 広げる! 立てる! 自由自在のメモシステム

古川 僕が今回紹介する愛用文具は、付箋よりやや厚めの、5×3(125×75mm)サイズの情報カード(A)とそのシステムです。

(A)

古川 この情報カードは日本で昭和40年代、思いついたことを何でもメモして知的生産に活用しようというような、つまりは今でいう「ハック」という観点から、ビジネスマンや大学生の間に大流行したものです。“意識の高い“使われ方といえるでしょう。かつてのブームを経験した読者には、懐かしいかもしれませんね。

でも、僕の使い方は当時の使い方とちょっと違います。例えば週間のToDoリストを書いて(B)、パソコンのモニターの前などにスタンドを使って立てます(C)

(B)

(C)

古川 そして、ニつ目の使い方…の前に、そもそも僕がこのメモシステムを導入したのは、会議中のメモ、取材中のメモ、卓上メモなど、それぞれの用途別に違う紙を使っていたことが不便だったからです。例えば自宅で書いたメモを外に持ち出したり、出先でとったメモを保存してあとから参照したいと思ったとき、この情報カードのさまざまな周辺グッズが使えると気がついたんです。

例えば、未使用の紙をストックして卓上メモの代わりにするボックス(写真(D)右の木の箱)、すぐには捨てられない情報カードを一時保管するボックス(写真(D)真ん中の木の箱)、1年間=約52週のToDoリストをまとめて保管する箱(写真(D)左の黒の箱)とか。

(D)

古川 ほかにも項目ごとに情報カードを入れて携帯できる、蛇腹になっているパスポートサイズのファイル(E)もあります。

(E)

古川 前置きが長くなりましたが、ニつ目の使い方としては、こういった周辺グッズを駆使しつつ、情報カードを外に持ち出したり、保存してあとから閲覧したりとシステマチックな情報管理として運用しています。

(F)

古川 そのほかにも、情報を俯瞰して全体を見たいときにも重宝してます。これなら、こうやって広げて(F)全体の構成を考えたり、順番を入れ替えたりして流れを考えることもできるわけです。パソコンでいうところのカット&ペーストのような感覚で、広い紙面のノートにまとめて書くより自由度が高いんです。


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古川さんの解説付き! オススメ文具

「スタンダードデザイン」「最新機能」「面白い」の3カテゴリー別

スタンダードデザインの文具

発売から何十年と経っても変わらない、その愛らしいデザインで人気の文具を主に取り揃えました。もちろんデザインだけでなく、その機能にも注目です。

油性ボールペン
「証券細字用 No.460」¥80
〈三菱鉛筆〉
唯一無二の持ち心地
「まず色を含めた見た目が非常にかわいい。また、フォルムが独特で、手にもつグリップ(黒い部分)のところが細いので力を入れるのが難しく、軸の真ん中あたりを持つようになります。結果、軽い筆圧で書くことになります。デザインが書き方を誘導してくるんですね」(① 東急ハンズ渋谷店)
マーカー
「サインペン」¥67〜
〈ぺんてる〉
NASAが認めた機能性
「定番の黒や赤のほか、実はピンクやオレンジなどきれいな色のペンもあるんです。合計12色存在します。ボディもビビッドでいいですよね。ティッシュが水を吸うような、いわゆる“毛細管現象”を採用していたため、無重力空間でも使えるとNASAが目をつけたことで、アメリカで人気が出て、日本に逆輸入したという経歴を持っています」(古川さん私物)
万年筆
「キャップレス マットブラック」¥18,000
〈パイロット〉
片手で使えるノック式
「多くの万年筆に付いているキャップの着脱がわずらわしいという人にうってつけのノック式万年筆。ボールペンのようにすばやく出して書くことができるし、いい意味で万年筆らしさがない文具といえるでしょう。ちなみにここ最近、安価な万年筆が若者の間で人気があります」(古川さん私物)
ノート
「MDノート A5」¥800
〈ミドリ〉
シンプルイズベストを体現
「大人のノート界では、A5サイズ(148×210mm)の規格が主流になりつつあります。この製品は、書き心地や書き味にこだわった紙質と、ブランド表記なども控えめでシンプルなのが好印象。まさにスタンダードデザインといえるでしょう。紙面は、無地、横罫、方眼の3タイプがあり、A5サイズ以外も取り揃えてあって便利です」(②デザインフィル ミドリ)
定規
「グラスルーラー」¥2,800
〈デザインフィル〉
頑丈な一生の相棒
「最高にかっこいい定規だと思います。強化ガラスでできているので、カッターをあてても定規が傷まないという利点も備えています。黒色と白色それぞれで目盛りが表示されているので、下地の色に左右されずに使えます。重さがあるのでちょっとしたウェイトにもなります」(古川さん私物)
ペーパーナイフ
「ペーパーナイフ UP-600」¥600〜
〈ニッケン刃物〉
ひとつで二役こなす実力派
「郵便物の開封の際、カッターだと切れ味がよすぎるため、斜めに切ってしまったという経験は誰しもあるでしょう。そんなときに便利なのがこちらで、元々シールはがしとして使われていたものですが、刃のしなりと薄さがまさにペーパーナイフとしてうってつけなのです」(古川さん私物)

最先端の高機能文具

進化の歩みを止めない文房具の世界では、年々さまざまな機能を持った製品が生まれています。ここでは、どこか気の利いた機能を持つ便利な文房具を集めました。

シャープペンシル
「オレンズ」¥500
〈ぺんてる〉
最新技術がぎゅっと詰まった1本
「昨年の文具ブームのトレンドは『折れないシャープペン』でした。細かく書きたい人向けのこのシャープペンは、『0.2mm』という芯の細さも特徴で、芯の素材の改良や、パイプの先端がなめらかで芯を出さずに書けるというのがその秘訣です。ちなみに最近では、若者の細字化の影響で、従来の0.5mm芯に加えて、0.3mm芯のシャープペンもラインナップに加わるようになっています」(古川さん私物)
蛍光マーカー
「鉛筆の蛍光マーカー」¥220
〈クツワ〉
鉛筆型という革新性
「鉛筆であるがゆえに、特長は2つ。一つ目はインクの滲みがないため紙を選ばないこと。二つ目は、従来のペンタイプの蛍光マーカーは、キャップを閉め忘れるとすぐ乾燥して使えなくなってしまいますが、鉛筆ならそういう心配もありません。これから人気が出るのではという期待を込めてセレクトしました」(①)
針なしホッチキス
「ハリナックス ハンディ10枚」¥950
〈コクヨ〉
安全安心な針なしステープラー
「芯切れの心配もなく、片手で一度に10枚までまとめられるという、大ヒット商品です。人気の背景には個人情報保護法案があり、ホチキス針を抜く手間を省いて個人情報が書かれた紙をそのままシュレッダーにかけられるという利点があります。芯が食べものに混じってはいけない、レストランなどでも活躍中だそうです」(古川さん私物)
テープカッター
「カルカット ハンディタイプ」¥390
〈コクヨ〉
老若男女だれでも使える
「一見地味なんですが、機能だけで見れば世界最高級といえるでしょう。どんなテープカッターでも大人は誰でも使えますが、幼い子がテープを切ろうとすると、意外とうまくできない。正しい角度と力が必要なんですね。一方、このシリーズはそういったコツが必要なく、誰でも使えて、摩耗した刃を交換することが可能。切り口がギザギザにならず、ラッピング向けでもあります」(①)
はさみ
「スウィングカット スタンダード」¥700
〈レイメイ藤井〉
視点と支点をずらした発明商品
「ハサミは、ここ3年くらいの間、刃のカーブを工夫するという進化の流れがありました。このハサミはそれに加え、支点の位置を変えることで、『引き切り』という新しい切り方を提示しました。そういったうんちくは置いておくとしても、ルックスがいいでしょう? 今の日本の家庭では薄紙より段ボールや牛乳パックのような厚い紙を切ることが多いという市場調査があり、これらの“ニューウェーブ”ハサミは最適なのです」(①)
修正テープ
「MONO note」¥200
〈トンボ〉
頼りになる小さな巨人
「消しゴムくらいのコンパクトなサイズがとてもかわいい。修正テープの幅も細くなっているので、こまかな修正もできますし、消したいポイントをしっかり視認できるのも素晴らしいです。コンパクトなので、筆箱の中にも入ります。なによりMONO消しゴムを踏襲したルックスが抜群ですよね」(①)

ちょっと面白い文房具

日常生活で使う文房具だからこそ、その機能やデザインは大切なわけですが、そればっかりでは息が詰まります。ここでは、くすっと笑ってしまう、もしくは何かに特化したような特殊な文房具を紹介します。

シャープペンシル
「スーパーマルチ8セット」¥3,800
〈ぺんてる〉
1本で8度おいしい
「ボールペンやシャープペン、蛍光芯、赤鉛筆を含めて、合計8タイプの芯が入った製品です。このギミック感だけで小学生はテンションが上がると思いますが、大人の場合はたとえば様々なペンを何本も持ち歩かなくても済みます。イラストを描いたりする人も重宝するでしょう」(①)
メモ
「ku・ru・ru」¥800(30枚入り)
〈カミテリア〉
“かわいい”は最強
「素っ気ない伝言メモでは、ほかの人が描いたメモや書類に埋没してしまうかもという名目で作られていますが、なによりこの見た目のかわいさがすべてでしょう! 種類も豊富な上に、立体化する仕組みも、裏から見てもちゃんとデザインが成立しているなど、アイデア含めてセンスがいい。日本の文具は海外からの観光客にも人気があるんですが、こちらは特に人気があるそうです」(③カミテリア)
ノート
「レイヤードノート」¥1,200
〈TAKI PRODUCTS〉
ワンアイデアという美学
「基本コンセプトは言葉が悪いですけど『おバカなノート』かなと。ノートを閉じたときに写真のように表紙から中面がはみだしているんですが、さまざまな色と形の紙が無造作に並べたというコンセプト以外は説明しようがありません。でもとにかくカラフルでおしゃれ。ちなみにほかにもノートはいろいろなワンアイデアのものが市場に出回っています」(古川さん私物)

※以上のコメントはすべて古川さんによるものです。

SUMMARY

さて、今回は大人のためのオススメ文房具を紹介しましたが、いかがでしたか? 仕事や勉強の効率を左右し、またビジネスの場で話のネタなどにもしやすいのが文房具。製品のバリエーションは幅広いので、ここで紹介した文房具はもちろん、ほかにもさまざまなタイプを試して、自分にぴったりな「マイ・ベスト・文房具」を見つけてください。


<問い合わせ先>
①東急ハンズ渋谷店 TEL:03-5489-5111
デザインフィル ミドリ
③カミテリア TEL:03-5272-3006(平日9時〜17時)

※商品は全て税抜き価格です。

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