Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。
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CORNERS
フォース・ストリート(4丁目)は、西側はウェストビレッジの中心だし、駅もあるから賑やかだけど、東に向かって歩いていくとどんどん静かになる。東側のイースト・フォース・ストリートを歩いたことが、これまでほとんどなかったことを、最近気がついたのは、レストラン<マーロウ&サンズ>から派生したレザーとアパレルの店<マーロウ・グッズ>が、店を移転オープンしたからだ。
<マーロウ・グッズ>のことは、これまでもいろいろな場所で書いているけれど、<マーロウ&サンズ>とその系列の店で調理する肉の皮を、革になめして作るブランドである。デザインは、レストランのオーナー、アンドリュー・ターロウの妻ケイト・フーリングがやっていて、最近は、オーガニック・コットンの衣類も作っている。マーロウの2階、ワイス・ホテルのロビーとたびたび移動しながら成長してきたブランドが、ついに店をオープンした先が、イースト・フォースだったのだ。
それで気がついたのだけれど、リチャード・プリンスがお忍びでやっていた隠れ家書店<フルトン・ライダー>を運営していたアート界の人気者、ファビオラ・アロンドラとジェーン・ハーモンが2人でオープンした<フォートナイト・インスティテュート>も、このブロックにあった。「ギャラリーではないサロンのような場所。近くにきたら遊びにきてね」とファビオラが言っていたスペースは、とても小さいかわりに親密で温かい感じがして、これまでのギャラリー・ビジネスとは違うことをやろうとしているのだろうなと感じる。
提供写真:Fortnight Institute
小さいけれど、親密な空間、というのは、このブロックにあるビジネスの共通点だ。イースト・ビレッジならではの、低層のアパートビルの地上階のコマーシャル・スペースは、すべてニューヨークにしてはとても小さくてそれがいい。
ファビアナに、イースト・フォース・ストリートについての記事を書くつもりと伝えたら、
「フード・コープも忘れないでね!」
という返事が返ってきた。
そう、この通りには、<フォース・ストリート・フード・コープ>がある。メンバーたちが、会費を労働で払うことで、食材などを市価よりも卸価格に近い価格で手に入れることができる、そういう店は少なくなってしまったけれど、新鮮でクリーンな食べ物にアクセスすることの価値が上がっている今だから、より美しく見える。
イースト・フォースはそういうストリートだ。
East 4th Street
Navigator
佐久間 裕美子
ニューヨーク在住ライター。1973年生まれ。東京育ち。慶應大学卒業後、イェール大学で修士号を取得。1998年からニューヨーク在住。出版社、通信社などを経て2003年に独立。政治家(アル・ゴア副大統領、ショーペン元スウェーデン首相)、作家(カズオ・イシグロ、ポール・オースター)、デザイナー(川久保玲、トム・フォード)、アーティスト(草間彌生、ジェフ・クーンズ、杉本博司)など、幅広いジャンルにわたり多数の著名人・クリエーターにインタビュー。著書に「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、翻訳書に「世界を動かすプレゼン力」(NHK出版)、「テロリストの息子」(朝日出版社)。
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