CORNERS

CANAL STREET / LUDLOW STREET


Aug 17th, 2016

Text/Photo_Momoko Ikeda

ニューヨークで今一番面白いエリアはどこかと聞かれたら、「チャイナタウン!」と答えるだろう。今まで中国人で溢れかえっていたエリアに、ここ数年で若いニューヨーカーによる洒落たお店がどんどんでき始めている。

ニューヨークで、今どこが面白い?と聞かれる時、これまではたとえば「ロワーイーストサイド」、「ウィリアムズバーグ」というように、エリアで答えることが多かった。でも最近は、その返答にちょっと違和感を感じるようになった。というのも、最近は、とある一角におもしろいお店が突如あらわれ、そこからじわじわと似たバイブスのお店がその周りに増えていくうちに自然派生的なコミュニティが生まれる、といような現象が起きているから。もう“エリア”ではなく、“コーナー”でおもしろい場所を答えるほうがしっくりくるのだ。

古いアパートや中国人経営のお店が建ち並ぶ

そんな今おもしろいコーナーのひとつがオーチャード・ストリートとキャナル・ストリートまわりだ。このあたりが変わりだしたきっかけは2010年にできた「Dimes」だった。ローカルに住む若手アーティストたちが集える場としてスタートしたこのお店は、野菜たっぷりのヘルシーなメニューとスタイリッシュな内装で、チャイナタウンの異色の存在だ。オーナーは女性2人組で、働いているスタッフもアーティスト志望の女の子たちや近くのスケートパークに通うスケーター男子というラフさもいい。

このコーナーが人気となった火付け役的存在

そんなDimesの出店を皮切りに、サンフランシスコ生まれの新世代中華レストラン「Mission Chinese」のニューヨーク店がイーストブロードウェイに移転オープンしたり、人気スケートショップの「Labors」ができたりと、どんどん盛り上がりを見せている。加えて、ウィリアムズバーグ生まれのフライドチキンとパイの店「Pies ‘n’ Thighs」(訳すと「パイと腿」)が2号店を開いたり、最近では、デザイナーのアレキサンダー・オルチがオーナーを務めるインディペンデント映画館「metrograph」もオープンするなど、話題に事欠かない。

老舗フライドチキン屋もこのコーナーに出店

チャイナタウン中心部の喧騒からはちょっと離れつつも、中国人のエリアという印象が強かったこのあたりが急速に変わり始めているその背景には、このチャイナタウン・ロワーイーストサイド付近に広がるアーティストやクリエーターたちの再流入がある。

かつてブルックリンに住んでいたアーティストたちにも、近年の「ブルックリンブーム」のおかげでスタジオを維持することが難しくなったり、またはそんなブームに嫌気がさしたりして、数年前からまた拠点をチャイナタウンに移している人が少なくない。また、一般的にブルックリンの一等地の家賃が高くなりすぎて、チャイナタウン・ロワーイーストサイドが相対的に安くなるという逆転現象も相まって、とにかく今、このエリアには新しいフレッシュなお店が集まりやすくもなっている。

今最もホットな映画館も今年オープン

エースホテルもこの付近に新しくオープンするという噂もあって、このエリアはしばらく目が話せそうにない。高所得者でないと住みづらいと言われることの多いニューヨークだけれど、コミュニティでサポートしあって何か新しいことをやってみようとする若いエネルギーはなくならない。さらに東へ行くと、ほとんど何もないチャイナタウンの片隅にできたバー「Mr Fong’s 」が、週末、ヒップなキッズたちで賑わっていたりする。まだまだ新しい何かが始まりそうな可能性を感じさせてくれる場所だ。

CANAL STREET / LUDLOW STREET


Navigator
Momoko Ikeda

日本での雑誌編集者を経て、2007年に渡米。FIT(NY州立ファッション工科大学)に留学し、現在は「POPEYE」や「ブルータス」といったファッションを中心とした雑誌への取材執筆と撮影を担当している。

VARET STREET

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