Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。
サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...
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(出典 donaldjtrump.com)
ドナルド・トランプ大統領が選挙に勝ち、ホワイトハウスのファーストレデイ用のオフィスを使うのは、妻のメラニアでなく、娘のイヴァンカだと発表された直後に、「フェムバタイジング」という言葉を知った。セイディ・ドイルというライターが12月15日に米国版エルに寄稿した記事にこんな文章があった。
「イヴァンカが女性の問題に関与したのは、主にマーケティグ・チームを通じてだ。彼女の仕事はフェミニズムじゃない。フェムバタイジングだ。2014年秋にIvankaTrump.comから発信された後に散々喧伝され、これから発売される彼女の本の基盤になっている#WomenWhoWork のキャンペーンだって、政策の提案ではなく、巧妙なファッション広告のようなものだ」
フェムバタイジングは、フェミニズム+アドバタイジングの造語である。フェミニズムを売る、という意味である。調べてみると、フェムバタイジングには賛否両論あるらしい。女性のエンパワリング(女性の権力拡大)を商売にするとはけしからん、だまされるな、という論調もあれば、社会における女性の地位の向上の象徴として取り扱われることもあり、女性向けの広告エージェンシー<シー・ノウズ>が開催する「フェムバタイジング・アワード」なるものすら存在する。今年、アメリカで一番広告料が高いとされる年一度の行事、スーパーボウル時に放映されて、話題になった「ドーター」と題されたアウディのコマーシャルも、男女の賃金格差をテーマにしたもので、フェムバタイジングのひとつと言えるかもしれない。
自らの名前を冠したブランドのトップと、父親の会社の副社長を兼務しながら、3人の子供の母親であるイヴァンカを、フェミニストと勘違いする向きは少なくない。けれど今回の選挙の最中に、イヴァンカ・トランプの会社の元幹部が、同社の働く女性が産休などの福利厚生を使うために戦わなければいけなかったことを暴露するなどのエピソードがあったり、トランプ氏の過去の女性に対する扱いが反女性的だと目されるなど、イヴァンカが、フェミニズムの味方ではないことについては大体の見方は一致しているようだ。
ティーン・ヴォーグ米国版のローレン・デュカも、「イヴァンカ・トランプは世界で一番パワフルな女性になろうとしている。いい匂いがしそうだからといって、甘くみるべきではない」とツイートした。公私ともに成功し、美しく見えるからといって、女性のパワーを代表することにはならない、という認識は、大方、アメリカの女性たちの間では共有されているようである。
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佐久間 裕美子
ニューヨーク在住ライター。1973年生まれ。東京育ち。慶應大学卒業後、イェール大学で修士号を取得。1998年からニューヨーク在住。出版社、通信社などを経て2003年に独立。政治家(アル・ゴア副大統領、ショーペン元スウェーデン首相)、作家(カズオ・イシグロ、ポール・オースター)、デザイナー(川久保玲、トム・フォード)、アーティスト(草間彌生、ジェフ・クーンズ、杉本博司)など、幅広いジャンルにわたり多数の著名人・クリエーターにインタビュー。著書に「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、翻訳書に「世界を動かすプレゼン力」(NHK出版)、「テロリストの息子」(朝日出版社)。
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