There so many different pockets and worlds. It is not one society. This thing is tiny but huge and there are so many possibilities.
まったく違うくぼみや世界が詰まっていて、ひとつの社会があるだけじゃない。小さいけれど、巨大で、可能性がたくさんある。
「いつもきてくれるお客さんにクリスマス・プレゼントがあるの」と、<カミング・スーン>のオーナーのひとりであるヘレナ・バーケットから連絡があったので、店に寄ると、地下の倉庫につれていかれた。そこでは、店でも取り扱いのあるブルックリンの作家が作った照明のインスタレーションがきらきらと光っていた。
「モノをプレゼントするより、体験をプレゼントしたい、そう思ったの」
<カミング・スーン>はそういう店だ。
レストラン<ダイムス>や<ミッション・チャイニーズ>のおかげで、すっかり出向く頻度が増えたローワーイーストサイドの南側に用事があるとき、ヘレナのガールフレンドでもあるファビアナ・ファリアが必ずいる店に立ち寄るようになった。
ファビアナと会ったのは、彼女が以前務めていたミッド・センチュリーの家具を専門に扱うギャラリーを辞めてバーテンをしながら、ショップの開店準備をしていたときだった。しばらくして、二人がカップルだと知った。二人が出会ったとき、ヘレナは、ファビアナが務めていたギャラリーのオーナーの妻で、二人で仕事をするうちに、恋に落ちたのだということも。
「離婚して、ギャラリーを離れ、店をやろうと思った。どんな店かも決まっていなかった。でもファビと仕事をするうちに、彼女の仕事の処理能力を見ていたから、絶対にうまくいくと思った(ヘレナ)」。
ヘレナには、若くして産んだ女の子が2人いる。離婚のあとしばらくは、ファビアナがヘレナの家を訪れることを遠慮していたから、この店舗がふたりの「家」のよう場所になった。
超高級な家具を取り扱うギャラリーで働いた経験から、もっと楽しく、ユーモアあふれるモノを取り扱いたいと思ったふたりがオープンした<カミング・スーン>は、ハウスウェアの店だ。でも「ハウスウェア」だけでは表現しきれないびっくり箱のような存在でもある。ブルックリンのインダストリアル・デザイナー<チェン・チェン&カイ>の作品もあれば、オハイオ州の少量生産のメーカーが作る食器もある。日本のブランドのキャンドルもあれば、友人の写真家が撮った大判の作品もある。訪れると、必ず何か新しいものがあって、2人が目を輝かせて、商品の説明をしてくれる。ソファがあるからサロンのように、友達がやってきては長居していく。
ベラルーシから幼少期に両親とともに移住してきたヘレナにとって、ニューヨークは「故郷」だ。「他の場所に住むことは考えたこともない。私にとって『ホーム』はニューヨークだけ」。ベネズエラで大学を卒業したあとに、姉を訪ねてニューヨークにやってきて、すぐに引っ越しを決めたファビアナにとっては、ニューヨークは可能性の街だ。「まったく違うくぼみや世界が詰まっていて、ひとつの社会があるだけじゃない。小さいけれど、巨大で、可能性がたくさんある」