You’d go out and things would happen to you. That is what New York makes a special place.
出かければ何かが起きる。だからニューヨークはスペシャルな場所なんだ。
スコット・レンハートは、私が暮らすグリーンポイントで近所付き合いをしているアーティストだ。近所のワインショップの壁画を手がけたり、レストランのメニューに作品を提供していたり、住民が住民のためにやっているようなインディペンデントな店で彼の作品を目にすることが多い。
「ギャラをもらうかわりにトレード(交換)という形で『クレジット』をもらって、そこで食事をしたり、ワインを購入したりする。1日まったくお金を使わない日があったりするのが心地いい」。
本来は、古典的なアートの教育を受けたペインターだ。もちろん今も絵画を制作している一方で、ここ数年は、年末に販売する日めくりカレンダーを作っている。
「もともとグラフィティとして描いていたメスの動物のようなキャラクターがいる。自分でも理由はわからないけれど、彼女の髪型を変えたり、彼女が何かするところを描くのが好きだった。このキャラクターならいくらでも描くことができた。それで当時の彼女のアイディアを借りて、カレンダーを作ることにしたんだ」
日めくりのカレンダーだから、週末は土日で1枚としても、300以上のドローイングをすることになる。1日24時間、常に何かしているアクティブな女性という意味をこめて「24 Hour Woman」と名付けたキャラクターが、なんらかのアクティビティに従事しているカレンダーは、今年で4つめ。つまり1200以上のドローイングを描いてきたことになる。
「自虐的だと思わない?」と聞くと、
「僕の身体に唯一あるタトゥーは、お尻に入っているブーツのイラストだけなんだ(笑)。いつも自分を傷めつけるような行為をしている気がする。自分は古典的なトレーニングを受け、アーティストとしての技術を上げるために努力をしてきたから、アートには苦労が伴わないといけないという思い込みがある。だけど普通の人たちが一番喜んでくれるのは、簡単に描けてしまうこのキャラクターなんだ。だから300枚描かないと成立しない商品を考えたのかもしれないね」
ニューヨークに学生としてやってきたのは15年近く前のことだ。途中、スノーボードやガールフレンドの都合で、数年ずつ、バーモント州やニューヨーク州の北部に移住したこともあるけれど、結局、最終的にニューヨークに戻ってきた。少なくとも、今までのところは。
「彼女と別れてニューヨークにほとんどお金がないまま戻ってきたときも、友達のつながりに助けられてすぐに住む場所を見つけることができた。初めてのカレンダーを作ったときは、バーでエッツィの人と知り合って、すぐに記事にしれくれた。外に出かければ、魔法のように人と知り合ったり、何かが起きたりする。ニューヨークの暮らしはストレスも大きいけれど、こんな場所は他にはないと思うんだ」