美人白書

Vol.10 清原亜希


Jun 26th, 2013

photo_ motohiko hasui (FEMME)
stylist_mika nagasawa
hair&make_miwako mizuno(3rd)
text_keiko kamijo
edit_rhino_inc

「シミもソバカスもシワも、クセ毛も、ぜーんぶチャームポイントです!」と大きな声で笑いながらお話してくれたモデルの清原亜希さん。カッコいい女性として、母として、妻として、すべてのシーンで生き生きとしている清原さんの笑顔の秘訣とは? また、カジュアルスタイルの中にチャーミングな女性らしさを漂わせるファッションのポイントにも迫ります。

30代を過ぎたらどんどんヴェールを脱いで行きましょう!

その時に一番大切なことにどっぷりとハマる。

ー 清原さんは裏表がなくオープン、そして自分を飾ったりしない「自然体」なイメージがありますが、ご自身がそうなったキッカケみたいなものはあったのですか?

もともと物事一つ一つにこだわりがあるタイプではなくて、基本的に大ざっぱな性格なんです。子どもを産んでから、さらに加速してしまったという感じはありますね(笑)。正直、結婚してすぐの頃はいろいろなプレッシャーもありましたしきちんとしていなきゃいけないと思ったこともありましたが、子どもを産んだらそんなキレイごとは言っていられなくなりました。自分が着飾ることを優先するような親にはなりたくないと思っていましたし。一日一日を丁寧に積み重ねていくなかで、抜くところは抜くようにしてきたら、自然と自分が一番大事なものが見えてきたんです。家族が最優先で、自分は二の次。もちろん最低限のケアはしますが、手抜きも覚えたし、クヨクヨしないことも学びました。あとは、食べて、寝て、笑って、遊んで、怒って……、思いっきり喜怒哀楽を表現して吐き出す。そうしていたら、自然といいサイクルになっていったように思います。

ー ご家族優先っていう思いはあったと思いますが、それと並行して「美しくしていないと」とは思っていらっしゃいましたか?

うーん、あんまりないですね。もう出産後は両立っていうよりも「子どもたちの”おっかちゃん”になりたい! 」ってね(笑)。だって、子どもたちは必ず手が離れる時がくるじゃないですか。その時がきたら、もう一回自分で趣味を見つけて新しい世界に行ったらいいんだと思います。だから、本当に自分のことは考えていなかったですね。子育てにどっぷりハマっちゃったんです。あとは、主人(元野球選手/現野球評論家の清原和博さん)が当時現役だったのも大きいです。私が家族を支えなきゃというのがありましたからね。だから、いま40歳を過ぎてこうしてまた社会と繋がってお仕事をさせて頂けることが、すごく幸せというか。一度リセットしたからこそ、感謝の気持ちやありがたみが湧いてくるのかもしれません。もちろん仕事と母親を両立してうまくいっている方もたくさんいらっしゃるとは思いますが、私は両方完璧にはできなかったので、スパッと辞めて30代は母親業に専念しました。自分の中で「両立できるのかな?」と少しでも気持ちが揺れたら辞めるって、そういうジャッジは自分の中では大事にしてきましたね。

ー ご著書の中で、清原さんがモデルとして復帰する時に旦那さんに相談をしたら、「子どもたちにとっても母親がキレイでいることは励みになる」と背中を押してくださったとありましたが、息子さんたちは今のお仕事のことをどう見ていらっしゃいますか?

どうなんでしょうね(笑)。男の子なのであんまり何も言ってくれないんですよ。次男なんかは腹が立つんですが、書店で私の本をわざわざ持ってきて「ブスー! 」とか言ってきたり。その時は悔しいって思うけど、やっぱり可愛いなって思いますよね。だって、「この本のお母さん、キレイだね」とか言われたら、なんか怖いじゃないですか! 逆のことを言ってると解釈して聞いてます。

ー 清原さんのファッションについて質問です。20代の頃はすごく迷っていたけれども、30代の時に買った服を今でもよく着ていると伺いました。20代と30代でファッション感はどう変わったのでしょうか?

はい。おっしゃる通り、30歳の時に買った服や小物は今でも現役ですね。20代の頃は、本当に着る服がコロコロ変わっていました。例えば、年上の方とお付き合いしていた時にはヒールにスカートを合わせた服ばかり着て背伸びしたり。

当時はモデルのオーディションに行っていたので、それも大きいです。事務所から「無で行きなさい」って言われるんです。今は違うかもしれませんが、例えば企業広告のお仕事の時とかは、何かイメージがついているモデルさんよりも、広告ヴィジュアルを想像しやすいように「無」のモデルが重宝されていたんです。なので、男前な格好で行くよりは、白いワンピースとか清楚な格好の方がいいですよね。

「これが本当の自分なのか?」って疑問に思いながらもそういう服を着ていましたね。自分に自信がない時にはみんなと同じ服を着る、「無」の方が安心だし楽なんですよね。でもだんだんと経験を積んでくると、無理をして生きるよりも自分らしいカラーがあるって分かるようになるんです。私の場合は、お嬢さんっぽい清楚な感じだと疲れるなと感じたんです。それをきっかけにちょっとメンズっぽい格好をするようになりました。

ー なるほど。20代のうちは自分のこともよく分かっていないし、どうしていいのかわからないから、いろいろな服を着る。そうして20代後半~30代くらいになってきて、自分らしさを見つけていくんですね。

そうですね。さらに主人と出会ったことで、スポーツ観戦が多くなったんですよ。球場に行くのに、ワンピースに麦わら帽子をかぶっていくイメージは、まったくなかった(笑)。そこから自分の中でのテーマとして、スポーツ観戦で浮かないことを絶対基準として、カジュアルなんだけれども少しよそ行きにするっていう今のスタイルが決まったんですよね。デニムもカーゴパンツも履きますが、その時にちょっと足首を出してヒールを履くとか、パンツがピタッとしている時には上半身をふんわりとしたシャツにするとか、ジャージだっていい、でもストールを巻くとかね。その工夫をするのがすごく面白くなったんです。

ワンピース 黒ワンピース グレーストールハット
ブレスレット、サンダル、スタイリスト私物

野球観戦も大丈夫! カジュアルだけど女らしいファッション。

ー 清原さんの女性らしいカジュアルスタイルのポイントを教えてください。

ちょっとしたところに女性らしさを入れることでしょうか。デニムにヒールを合わせるなんて女性にしかできないですしね。またTシャツでも少しデコルテを意識するとか。ストールとかでふんわりとしたシルエットにするのもいいと思います。

あとは、色遣いでしょうか。基本的に洋服はシンプルでベーシックな色味をベースにして、同じトーンのグラデーションで組み合わせるようにしています。ネイビーでも濃いのと薄いのを合わせるとか、ベージュとブラウンを合わせるとかね。色を合わせるのも好きですが、派手な色同士だとやっぱり難しい。トーンを揃えるとこなれた感じに、大人のおしゃれができると思います。私が色を使うなら、靴やバッグ、ストールなどの小物にしますね。

何故シンプルなものを選ぶかというと、やっぱり長く使いたいから。私は1万円の服を3枚買うんだったら、悩みに悩んで3万円の服を1枚買う。そして、その洋服を10年着るタイプなんです。セールももちろん行きますが、その時に買った服って結局タンスの肥やしになっていたり。なので、決心して買った服を大事に着る、その時のジャッジは間違えることは少ないですね。バッグや財布も同じです。流行は全く気にしないで、気に入ったものを長く使う。結果的に使っているお金は同じくらいだと思うんです。

ー 確かに。そういう自分のスタイルを持っている人ってカッコいい女性だなと思います。

でもそれは20代の失敗があったからですよ(笑)。友だちからは「一番服の趣味が変わった」って言われます。やっぱり20代は自意識も過剰だし、洋服は鎧だったし、お化粧はマスクだった。厚いヴェールを被っていましたよね。そして自分の中の肥やしが豊かになった分、どんどんそのヴェールを脱いでいくようなイメージでしょうか。そぎ落としている感じですね。歳を重ねるとどんどん上塗りしていくようなイメージがありますが、私は逆です。脱いでいった方が、心も楽になるし、ストレスも溜まりません。お化粧だって同じ。しっかりとお化粧していると、きちんとした自分でいなきゃいけないっていう気持ちになる。お友達のお母さんで「お化粧しなきゃ外に出られないわ」っていう方もいるんだけど、「一回起きたまま顔洗わないで出てきてみて。勇気いるけど気持ちいいよー」って言うんです。顔は洗おうよって言われましたけど(笑)。

でも、そういう風に手を抜いてダメな自分を人に見せることって結構大事だと思うし、周りの人もきっと楽だと思いますよ。歳を重ねるごとに自分のスキを見せていく、すると受け入れられる人が多くなると思います。

ー(笑)。顔も洗わないというのはすごいですが、確かに一回スッピンを見られてしまったらもう大丈夫っていうのはありますよね。人との距離感が変わる気がします。

私は人からいいように思われたいって思わないんですよ。それが例え初めて会った人だとしても。というのも、そのままの飾らない私を分かってくれる人が絶対にいると思うから。だって周りの人が言うことを気にしていたら何もできないじゃないですか。だから、自分はいつもしっかりとそこで立っていればいいんです。

よく髪型についても聞かれるんですが、申し訳ないんですが、これは天然パーマのクセっ毛で単なる寝グセなんです。使ってるシャンプーも子どもと一緒だし、手入れはしてないし……。でも自分ではすごく気に入っています。シミもソバカスも同じ。チャームポイントだと思って受け入れているんです。子どもの野球の試合で応援している母親の勲章ですからね(笑)。シワだって、たくさん笑ってきたから顔に刻まれたものです。そんな風に考えていたら、今から50歳、60歳になるのが楽しみです。

シャツタンクトップデニム、バングル 本人私物、シューズ スタイリスト私物

飾らない美しさの秘訣、それは毎日の生活にありました。

ー上塗りをしないとなると、やはり大切になってくるのは食べ物なのでしょうか? 清原さんの美の秘訣をやっぱり探りたいんです。

確かに食べ物はこだわっていますね。でも、全部有機野菜にしなきゃとかかしこまったものではなくて、今日食べたいものを食べる。たまに外食もするけれど、家で食べる時は基本的に手作りする。それくらいなんですが(笑)。子どもたちはコンビニの唐揚げが食べたいとか、カップラーメンが食べたいとか言いますが、極力、家のものを食べてもらいたいと思ってますね。息子の友だちが遊びに来たら、食べていきなさいって言うしね。割烹着が似合う京塚昌子さんみたいなイメージ(笑)。夕方になるとご飯の匂いがぷ~んとするお家でありたいと思っています。

ーさすがに割烹着は清原さんのイメージではありませんが、似合いそうですね。では、清原さんのストレス解消法を教えてください。

それはね、お仕事なんです。本当に楽しくてしょうがないんです。あとは寝ることですかね。寝るのが趣味みたいなものなんです(笑)。眠れるっていうのも健康のバロメーターだと思うので、すごくありがたいことですよね。おかげさまでストレスは溜まっていないようです。

友だちの相談を受けることも多いんですが、みんな悩みがちっちゃいんですよ(笑)!  旦那が浮気したとか、子どもが喧嘩したとか、そんなのみんな同じだから大丈夫だって言っちゃいます。ただ、病気や健康、命にかかわる悩みは別です。それは本当にしんどいと思いますので、すごく言葉も選びますし、私がアドバイスできない時には話を聞いてあげるしかできないこともあります。命が一番大事。それ以外は悩みじゃないですね(笑)。

ー清原さんのそういうポジティブオーラに触れると元気になれる人は多いと思います。では、最後に今後チャレンジしたいことを教えてください。

ありがとうございます。チャレンジしたいことですか。うーん、あんまりないですね。テレビに出たいとか、女優になりたいとかってことはまったく思いません。でも50歳でも55歳でもちゃんとモデルさんとして1ページ飾れる人でいたいですね。もちろんそのための努力は自分でするでしょうし。いまは50歳を見据えていますね。

この人みたいになりたいと思う人も特にいないんです。だけど、街を歩いていてシャキッと背筋を伸ばして歩いている70歳くらいの女性や、すごく日焼けしてるんだけどスッピンで堂々と歩いている目上の方を見ると、そういう生き方の人っていいなって思います。やっぱりカッコいい女性には憧れますね。


最後に清原 亜希さんから
“美しくなるためのメッセージ”

「素でいること」ですね。シミもソバカスもクセ毛も受け入れて、自分の欠点を好きなものに変える。洋服も同じです。自分らしさを知って、自分の好きなものを着ること。そうしていれば、自然とそのままの自分を受け入れてくれる男性や友だちが出てくると思います。


INTRINSIC

『清原亜希MY STYLE』

清原亜希さんの初のファッション&ライフスタイルブック『清原亜希MY STYLE』が発売中!
セルフコーディネートを披露したファッション写真から、ライフスタイルのこだわりまで、今の清原さんの”リアル”が詰まった一冊です。

今月の美人
清原 亜希

1969年福井県福井市生まれ。旧姓は木村亜希。1984年ミス・セブンティーンを決めるコンテストの全国大会で特別賞を受賞した工藤静香、柴田くに子とともにセブンティーンクラブを結成してレコードデビュー。1985年に解散。以降モデルとして活躍。2000年に元プロ野球選手 の清原和博と結婚。二児の母となった後、2008年に雑誌『STORY』の表紙モデルとして復帰。2011年5月には、第4回ベストマザー賞文化部門を受賞。現在も雑誌やCMなどで活躍中。 オフィシャルブログ: http://aki-kiyohara.com/

Vol.11 小林ひろ美

Vol.09 LiLiCo(リリコ)


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