美人白書

Vol.09 LiLiCo(リリコ)


May 22nd, 2013

photo_ motohiko hasui (FEMME)
text_keiko kamijo
edit_rhino_inc

テレビでは「肉食系」と呼ばれながらも、あっけらかんと大きな声で笑い飛ばし、私たちを元気にしてくれるタレントのLiLiCo(以下、リリコ)さん。一方、映画のインタビューでは世界で活躍するハリウッドセレブにずばりと切り込み、俳優さんたちの素敵な表情を捉えるインタビューの名手でもあります。常に笑顔で、周りをパッと明るい雰囲気にしてくれるリリコさんの美の秘訣に迫りました。

いつも華やかな笑顔をふりまくLiLiCoさんの美の秘訣。

スタイリングもメイクもセルフ。おしゃれは相手への気遣い。

ー リリコさんはいつもカッコいいファッションで決めているというイメージがありますが、スタイリストをつけずにご自身でお洋服を選ばれると聞きました。自分に似合う洋服を見つけるコツを教えてください。

自分に似合う洋服を見つけるのって、全然難しいことじゃないですよ。でも、結構悩んでいる人、多いですよね。一番大事なのは、自分のコンプレックスを知ること。そして、それを隠すこと。私はコンプレックスだらけなので、もちろんその部分はちゃんと隠しています(笑)。あと気をつけているのは、友だちから「いいじゃん」って言われたら、何がよかったのかを考えること。最近、すごく派手なピンクのマフラーをしていたら「こんなにピンクが似合う女は他にいない!」って言われたんです。確かに日焼けした肌には原色が似合うんだなと思って、その後意識的にピンクを着るようになりました。友だちや仕事先の人から言われた言葉をサラッと流さないで、すぐに活かすようにしています。

周りの人に聞かなくても、写真を見て自分を知ることもできますよね。そういう風に、常に意識をして研究していくことが大事。あと、コミュニケーションも大切にしていますね。飲み屋に行っても必ずお気に入りのバーテンをつくるし、お店に行ったら店員さんと仲良くなるし、そういう人たちが新しい世界を広げてくれるんです。

ー 自分で着たい服と、周りから似合うよって言われる服のギャップはありませんか? 雑誌を見てその人と同じ服が着たいって思ったら似合わなかったとか。

似合ってなきゃわかるでしょ(笑)。でも、その気持ち、ちょっとわかるかも。好みもコロコロ変わるしね。私は元々ワンピースとかフリフリしたものが好きなんだけど、今日みたいな格好で飲みに行ったら、男友だちや先輩方からすごく似合うって言われて。「テレビで着ているようなフリルのついた服、全然似合ってないよ。俺たちに会っている時が一番カッコいい」って。でも、やっぱり乙女心でフリフリしたのを着たい時には着ちゃいます。

あと、TPOはいつも気をつけていますね。お歳を召した方と会食に出かける時には、もちろん肩を出さないようにするとか。だってそれは失礼にあたるでしょう。お店の雰囲気や、相手、媒体のイメージに合わせて洋服を選びます。今日も、すごくカッコいいイメージで写真を撮ってもらえそうだったので、この洋服にしたんですよ。

アクセサリーも好きですね。アクセサリーをつけることで、この人は外見に気を遣って生きているんだなっていうことがわかるんですよ。おしゃれって相手への気遣いですからね。だってイヤでしょ?よれよれのTシャツとダボダボのジャージで「美」についての話をされても(笑)。清潔に見えるようにとか、TPOを考えた洋服を選ぶとかって最低限の気遣いなんです。

周りからどう見られたいかっていうことではなく、相手に合わせる。特定のイメージなんてなくて、いろんなリリコがいる。子どもがいっぱい見る媒体だったらふわふわした衣装のほうが喜んでもらえると思うし、今日みたいな撮影だったらカッコいい感じがいいし。いつもそんな風にいろんなことを考えて洋服を選ぶんですけど、選ぶのはめちゃくちゃ早い。だってモタモタしてもしょうがないでしょ(笑)!

ー すごいですね(笑)。リリコさんのテレビや雑誌での衣装はすべて自前なんですか? 何枚持っていても足りなくなりませんか?

たまにブランドのプレスルームで借りてくることもありますが、その時も自分で電話しますよ。ただ最近は、返却に行く暇がないのでほとんど自前です。今日着ている服だって、スウェーデンで買ってきたものです。私が着ている洋服って、1万2千円くらいなんですよ。貧乏時代から、「いかに安い服を高く見せるか」っていうことと「いかに少ない服を何度も着回すか」を常に考えていましたからね。いまはたくさんの服を買えるようになりましたけど、安い服を高く見せたいっていうのは、もう趣味みたいなものなんです(笑)。

あと、何故1万2千円かっていうと、リリコが着てる服を真似したいって思ってくれる人がいたら買える値段にしたかったんです。だって、いくら素敵な服着ていても「これ、54万円です」って言われたら、買えないじゃない。テレビや雑誌を見てくれるOLさんが普通に買える値段っていくらくらいかなって考えて、自分の中で1万2千円って目安にしてるんです。

憧れるのは、フットワークの軽い女

ー リリコさんが素敵だなって思う女性はどんな方ですか?

フットワークの軽い女性に憧れます。私が見たカッコいい人ってみんなフットワークが軽いんです。「いま飲んでるけど来ない?」って言われたら、30分後に行ける! みたいな感じ。今からお風呂入って、お化粧して……なんてやらない。化粧は10分だし、髪の毛に15分、洋服選びに数分、着替えるのは30秒です(笑)。

芸能人で言うと渡辺めぐみさんですね。彼女には本当にいろいろなことを教えてもらいました。めぐみさんがテレビで「俺たちひょうきん族」とかに出ていた時代は、私は日本にいなかったので知らないんですが、実は、私がホステスをやっていたお店のお客さんだったんです。スタイルも顔も、私より年上とは思えない、あれはオバケですよ(笑)。12歳年下の旦那さんをもらったりね。何もかも尊敬しています。

あとは、昔売り込みに行った番組制作会社のプロデューサーの女性なんですが、お会いする約束に遅刻されてきたんですよ。でもね、その時にマニキュアをものすごくキレイに塗っていて。多分すごく忙しいのに指先までキレイにしているっていいなあって思いました。もうお会いしたのは18年くらい前で、その後は会っていないんですが、すごくカッコよかったっていう印象がいまでも残ってるんです。

あとは、貧乏時代に大人の先輩たちによく言われていたことがあって。「35歳になったらひとつはダイヤをつけないと本物の女じゃない」とか「35歳くらいになったらパーティドレスの1枚は持っていないと」とか。当時は「貧乏だからしょうがないでしょ!」って言い返していましたが、35歳になった時にすごくその言葉が身にしみましたね。それで、つい最近ダイヤの指輪を買ったんですよ。2週間くらい前。確かに、気分はアガりますよね。でも、重ね付けしている4千円のネックレスの方が輝きが強く見えません? 実際はそんなもんなんですよ、周りの目も、テレビ映りも(笑)。

「私、ブス」と思うのが元気の源。

ー いつも元気で、テレビを観ている人も元気にしてくれるリリコさんですが、落ち込むことはありますか?落ち込んだ時の復活方法を教えてください。

何に落ち込んでいるのかによりますよね。仕事の場合だったら、落ち込んだ原因とトコトン向き合います。私、映画紹介の仕事を何年もやっていますが、ストーリーの説明をするのが本当に苦手で。でも、自分の言葉で説明するしかないと思って頑張る。解決法が見つけられたら、自分の器がひとつ大きくなるわけだから。

恋愛のことはね。もうね、悩まないですね。昔は「この人がいないと生きていけない!」って言っていたのに、今はその人の名前すら忘れてますからねえ(笑)。普通に生きてるし、みたいな。最近は、縁がなかったと思うようにしていますね。縁もなかったし、この人がダメなんだろうなって思うようにしているんですよ。この人がダメだから私が泥沼にハマって傷つかないように、神様がピンッて飛ばしてくれたんだと思うようにしています。そうじゃないと、やっていられませんからね。恋愛で落ち込んで、それを仕事に持っていったら仕事なんてできないですもんね。でも、最近はもちろん心は痛くなりますけれど1日2日で治りますね。考えないようにしてる、次はもっといい男がいるって。あとは一生懸命仕事するのも忘れるにはいいですね。でもさ、そこで仕事を一生懸命すると、次は仕事で壁にぶつかるんですよ。人生いいことなんてそう溢れていない。ずーっと嫌なことが続いてるって感じ。人生嫌なことの方が多いですよ。

ー そうなんですね。リリコさんはもっとオプティミストなのかと思っていました。

いやいや。自分の顔とかスタイルとか、声も大っ嫌いだし、全然自分のこと好きじゃない。だって、毎朝鏡を見ると「私、ブス」って思うんですよ。でもそれが元気の源になっている。普通はみんな鏡にむかって自分を褒めるでしょ? だからうまくいかないんだと思う。私は自分がブスだって知っているから、人よりも努力するんです。だから、いくら心の中がズタズタになっていても、人前では笑ってますよ。だって、その方がみんな気分がいいでしょう。

美の心を育む、素晴らしい映画たち

ーテーマ別にいくつかおすすめの映画を何本か教えいただきたいと思います。まずは、ニューヨーカーにちなんでニューヨークを舞台にした映画を。

そりゃあ『セックス・アンド・ザ・シティ』でしょう。あれはもうどこをとってもいいです。あとは『ディナー・ラッシュ』かな。あの映画の舞台になったジジーノっていうイタリアンレストランには、好きでよく行きますよ。マフィアと食べ物って普通は結びつかないところを合体させたところと、ファッショナブルなところ。そして、主演がカッコいいのもいいですね。あとは映画の舞台になったお店に行けちゃうっていうのもポイント高いです。

『セックス・アンド・ザ・シティ』は言うまでもありません。知ったのがすごく遅いんですが、友だちがハマっていて、リリコは日本のサマンサだってよく言われてたんですが、その意味が全然わからなかった。でも、一回見たら見事にハマってしまって。あれはね4人の個性が全然違うんですけど、特にサマンサは弱みがいっぱいあって可愛いし、ファッションも最高だよね。もう、たまらない!

ーでは、ファッションの話が出ましたので、オシャレの参考になる映画は?

『セックス・アンド・ザ・シティ』はもちろんなんだけど、他だったら『マイ・ブルーベリー・ナイツ』ですね。レイチェル・ワイズもいいんですが、ナタリーポートマンの服が可愛くてしょうがないんですよ。モルディブでしか買えない色味ね。あの映画を観てから、パステルとか原色のピンクとか青とかのブラウスに凝りだして、今に至るんですよ。

あと新作では、『私が靴を愛するワケ』っていう映画。私靴フェチなんですよ。とは言っても1万2千円以上は買わないけどね(笑)。でも、何足でも持っていたい。ヒールの高さ、太さ、フォルム、素材、すべてにおいてこだわりがあるんです。この映画は靴のドキュメンタリーなんですけど、あのね、エロです。エロチック(笑)。観た後、ムラムラしちゃってしょうがないんですよ。カッコいい靴を履いてデートしたい! っていう気分になる映画です。

© Caid Productions, Inc. All rights reserved./©Mattel, Inc.

ーなるほど。では、落ち込んだ時に元気になれる映画は何ですか?

オーソドックスなものが好きですね。女の子がどんどんキレイになっていく映画がいいです。例えば『プラダを着た悪魔』とか、『プリティ・プリンセス』とか。でも、『プラダを着た悪魔』のストーリーの中ではアン・ハサウェイよりもメリル・ストリープに共感してしまいます。編集長のミランダは、すごくカッコいい女性、ああいう上司が欲しかったなあって思いました。あとは『ホリデー』もいいですね。

©2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved

ーありがとうございます。では最後に、一番好きな映画を教えてください。

『歓びを歌にのせて』ですね。これは、スウェーデンの映画なんですが、とにかく自分といっぱい共通点があって、初めて観たときは号泣して吐くかと思ったくらい。昔いじめられた主人公が名前を変えて別の地で、指揮者として成功するんですが、病気になってしまいふるさとに帰ります。そんな優秀な指揮者の彼が、下手なコーラス隊に出会うんです。彼らは下手なんだけれども、とにかく音楽への愛情がある。そんな中で彼が本当の自分を見つけていくという話です。

本当にすばらしい映画で、最後に歌う歌の歌詞は、私がこれまで聞いた中で一番いい歌詞だと思います。それをまた戸田奈津子さんが素晴らしい訳をしているんです。スウェーデンの風景もいいんですね。真冬から始まって、春、夏になる。一年の季節の移り変わりと、主人公の心のありようが対比されています。隅から隅までいい映画なんですが、35歳の時にこの映画に出会ったのがよかったんだと思います。もし、自分が25歳の時に見たらちんぷんかんぷんだったかもしれません。ある程度、人生の機微がわかる人にグッとくる映画だと思います。

©SONET FILM AB 2004 All rights reserved.

ー どんどん活動の幅を広げていくリリコさんですが、これからチャレンジしたいことがあったら教えてください。

貧乏時代はいろんなことやらなきゃ生きていけなかったんだけど、それをやってきたお陰で、今たくさんのことをやらせてもらっています。翻訳もやるし、歌も歌うし、司会もやるしゲストにも出るし、トークもやるし。でもね、ひとつだけ頑なに断ってきたものがあるんです。それは「演技」。

なのですが、夏に初めてドラマの中で結構重要な役をいただいて、女優として出演することになったんです。いま一番楽しみなことでもあり、不安でもあることなんです(笑)。さっきカツラを合わせてきたところで、っていうと変な役を想像するでしょう? その通りです。普通の役じゃないんですよ。8月に放送になると思いますので、楽しみにしていてください。本当に、人生挑戦ばっかりですよ。きっと人生最後の日まで挑戦してるだろうな(笑)。


最後にLiLiCoさんから
“美しくなるためのメッセージ”

自分の人生は自分で演出してください。あなたの人生は、お母さんのものでも、テレビに出ている有名人のものでもありません。あなた自身のものなのですから。

今月の美人
LiLiCo

1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、1989年に芸能界デビュー。2001年から TBS「王様のブランチ」に映画コメンテーターとして出演するほか、CX 「ノンストップ!」「SHELiCoの夜活」などレギュラー多数。映画俳優へのインタビューをはじめ、アニメや映画の声優、トークイベント、ナレーション、雑誌エッセイなど幅広く活躍している。

Vol.10 清原亜希

Vol.08 山崎 直子


FEATURED ARTICLES

Mar 2nd, 2017

ICON OF TRAD

Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。

サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...

Mar 9th, 2017

HOW TO

ジップアップ パーカ Vol.01

氷雪地帯で生活をしていたアラスカ先住民のイヌイット民族が、アザラシやトナカイなど、動物の皮革でフード付きの上着(アノラッ...

Oct 20th, 2016

HOW TO

ストライプ スーツ Vol.02

Vol.01のディテール解説に続き、Vol.02ではストライプスーツを着こなすスタイリングを提案。Vゾーンのアレンジで印象はぐっと変え...

Mar 2nd, 2016

ICON OF TRAD

Vol.39 女性がほんらい男物だったトレンチコートを着るとき

そもそも男性服であったトレンチコートは、どのようにして女性たちの間に浸透していったのだろうか?

Aug 25th, 2016

HOW TO

ネイビーブレザー Vol.01

アメリカントラディショナルファッションの代名詞ともいうべきネイビーブレザーは、日本では《紺ブレ》の愛称で親しまれている。...

Jan 12th, 2017

HOW TO

トレンチコート Vol.01

トレンチコートが生まれたのは第一次世界大戦下でのこと。イギリス軍が西部戦線での長い塹壕(=トレンチ)に耐えるために、悪天...


YOU MAY ALSO LIKE