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Reading the leading shoes
1980年代末期から1990年代初期にかけて、アメリカンカジュアルをベースに日本独自のファッションスタイルが登場した。それが「渋カジ」。「渋谷カジュアル」の略から命名されたといわれるこのスタイルは、それまで隆盛を誇っていたDC(デザイナーズ&キャラクターズブランド)ファッションから、ストリートシーンにおけるファッションスタイルの本流の座を奪い去った。
ラルフローレンやブルックスブラザーズのB.D.シャツ、リーバイス501、紺色のブレザーといったトラディショナルなアイテムをメインとしたスタイリングは、渋谷近辺のみならず、日本全国へと急速に広まっていったのである。
そんな「渋カジ」ファッション愛好家の足元を飾ったのは、コールハーンやバスのローファー、LLビーンのキャンプモカシンなどであり、シューズに関してもアメリカンブランドがポピュラーだったが、もうひとつ忘れられないフットウェアデザインが存在していた。それがティンバーランドのスリーアイ クラシック ラグ。
その名の通り、3つのアイレットのアッパーに悪路でも高いグリップ性を発揮するラグパターンのアウトソールを組み合わせたモカシンシューズで、元来はアウトドアシーンで着用するためのモデルとして開発されたが、「渋カジ」ファッションのブーム時には活躍の場をストリートへ移し、ベストセラーの一角をキープすることに成功。いかにもアメリカンなデザインとマテリアル使いがヒットの大きな理由だが、ヒールが高くなっているディテールを採用することで、着用者のスタイルをカッコよく見せる効果があったことも、良好なセールスを記録することに少なからず貢献していた。
ティンバーランドのスリーアイ クラシック ラグは現在もラインナップされているが、あの当時、特に人気のあったバーガンディカラーだけでなく、落ち着いた印象のブラウンカラーも継続展開されている。両方のカラーはともに汎用性が高く、様々なファッションスタイルやあらゆるコーディネートにマッチするが、往年の「渋カジ」スタイルへのオマージュを強調する場合はバーガンディカラーを、適度にアウトドアテイストを漂わせるカジュアルスタイルでまとめたいならブラウンカラーをセレクトするのがいいと思う。
ちなみに筆者は両色とも持っているが、バーガンディカラーのこのモデルを履いて出掛け、同世代の「渋カジ」ブームの体験者に会ったりすると、すぐにスリーアイ クラシック ラグであることが認識され、当時の話で非常に盛り上がる。ティンバーランドのスリーアイ クラシック ラグというこのモデルは、単なるシューズを超越した1980年代末期から1990年代初期におけるファッションアイコンだったのである。一方でブラウンカラーを履いて出掛けると、若年層の仕事関係者に「その靴いいですね。どこのブランドですか?」と聞かれることが多い。このように、ティンバーランドのスリーアイ クラシック ラグは、デザインが同じでもカラーリングが違うだけで、その印象は大きく異なるのが面白いと思う今日この頃である。
(問い合わせ先)
ティンバーランド ジャパン 株式会社
電話:03-6863-5711
価格:21,000円(税込み)
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南井正弘
47歳/愛知県出身/靴に詳しいフリージャーナリスト
「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日のランニングを欠かさないファンランナー。
アレンエドモンズのマカリスター
パラブーツのシャンボード