不朽の傑作プレーントウは、カントリーのスペックも取り込んだ
ドレスシューズなのです!
名門チャーチの歴史は、手縫い靴の名匠ストーン・チャーチ氏の曾孫トーマス・チャーチ氏が1873年、妻や息子たちと靴の聖地ノーサンプトンに工房を開いたときに始まります。
当時、じつは既製靴には右足用と左足用の区別がなかったのですが、1880年、チャーチは史上初めて左右の形状が異なる靴「アダプタブル(適合性の意味)」を開発。さらにサイズピッチにハーフサイズを取り入れ、ウィズを6段階に設定するなど、現在では“常識”となっている規格を創案。これらをもって、翌年のロンドンでの靴の展覧会で金賞も受賞しました。チャーチが「英国既製の父」と呼ばれるのは、グッドイヤー製法が誕生し、英国で既製靴が普及し始めたこの時期に、その仕様や規格を定着させた功績によるものなのかもしれません。
そんな名門の靴が、某国内靴大手によって正規輸入されたのは1960年代とのこと(日本初上陸は、これ以前であったかもしれませんが)。その後、日本では他の英国靴を目の当たりにする機会がほとんどない時代が、ながらく続きました。そして、このような経緯もあり、日本の靴好きにはチャーチ・ファンが少なくないのですが、この「シャノン」もまた、そうした人々から親しまれてきたモデルであるといえましょう。
アイルランド西部の町の名を冠した、これはプレーントウダービーのなかでも個性の強いモデルです。まず、注目すべきは外羽根両脇に施されたステッチと、その補強縫製にしてアイコンのハーフムーンステッチが、ともに手縫いであることです。しかも革に強く食い込むほどに強いテンションで、堅牢に縫われているのです。さらに、この手縫いがシンプルなデザインの、この靴に味わい深い表情をもたらしてもいます。
加えて重要なことは、ドレスシューズでありながら、英国カントリーブーツの伝統的なエッセンスを色濃く見せている点です。定番木型「103」の丸みに富む、ボリューム感あるフォルムはまさにカントリー風で、しかし、わずかに捨て寸を長くすることで優美さを醸し出しているのがさすがです。
また、レザーソールはソールで、ヒールリフトはどっしり安定感ある大ぶりタイプです。製法はアウトステッチが全周するオールラウンドグッドイヤー製法であり、このステッチが施されたウェルトはL字状に縫い付けられたストームウェルト。と、耐久性と防水性のためのこれらディテールも全てカントリー由来です。さらにいえば、「シャノン」の象徴ともいえるアッパーの「ポリッシュドバイダーカーフ」。このガラスレザーはカントリー由来ではないものの、樹脂がコーティングされているため、雨や汚れに強いという特性があります。
以上を鑑みれば、「シャノン」が雨の日にも適しているモデルであることは明白です。しかも、プレーントウダービーというスーツにもジャケパンにも、はてはデニムにも合う汎用性の高いデザインであり、ボリューム感あるフォルムゆえにパンツの裾幅も選ばない……。したがって、少々の雨であれば、この1足で事足りるだろうと、そのような開発意図が感じられます。
さて、最後にガラスレザーについて少々……。強い光沢が印象的な、この種の革は前述したように雨や汚れに強いばかりか、ケアの手間がさほどかからないという利点があります。が、そのいっぽう、一般に皮質のよろしくない原皮から製革されるため、靴通から敬遠されがちなのです。ところが「ポリッシュドバイダーカーフ」は繊維が整った良質な原皮から作られているようで、そのため、キレイな履きジワが出せるのです! と、こんな点もまた、「シャノン」が愛され続けている理由のひとつなのかもしれません。
価格:104,000円+税
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チャーチ 表参道店
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