Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。
サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...
Reading the leading shoes
今とは違って好きな洋服や靴をなかなか購入できなかった30年ほど前。どうしても欲しい1足の靴があった。それがバスのWEEJUNSというローファー。美しいシルエットに一目惚れして以来、買物リストのトップにランクされ、地元のセレクトショップに行くたびに「いろいろな着こなしに使えるから1足あると本当に便利ですよ」の囁きも、このシューズに対する欲求を増大させていった。しかしながらコンバース オールスターを買うのにも清水の舞台から飛び降りる心境だった高校生には2万8000円は高額。結局地元愛知にいたころに手に入れることはできなかった。
大学進学のために上京すると、バイトをすることによって高校時代とは比較に出来ないくらい自由になるお金ができた。といっても今考えると大した金額ではないのだが、バスのWEEJUNSを購入するくらいのお金は一ヶ月もかけずに稼ぐことができ、アメ横へと向かった。当時「靴を買うならアメ横!」みたいなのがあって、渋谷や原宿のセレクトショップよりも安く購入できるのが広く知られていた。しかしながら、このときバスのWEEJUNSは手に入れることができなかった。どちらかいうと細身のラストが自分の足にはあわず、サイズ7.5では縦寸が長くかかとが浮き、サイズ7では親指部分があたって痛いのである。
こんなこともあって、あれほど憧れていたこの靴の購入は諦めることに。自分が汗水垂らして稼いだお金を足に合わない靴に支払う気にはならなかったのである。そしてバス WEEJUNSのことはしばらく忘れることとなった。
結局アメ横の一件から20年以上が経過した2007年、ハワイの地でバス WEEJUNSを手に入れることになる。購入したのはノードストロームラック。アメリカの有力百貨店ノードストロームのアウトレット形態で、ためしにトライした1足がジャストフィット。格安で手に入れることができたが、高校時代はあれほど憧れた靴なのに、感動はあまりない。一方でホテルへの帰り道、とある靴屋のショーウインドーにディスプレイされたローファーに心を奪われた。それがSEBAGOのビーフロールローファー。
ビーフロールという愛称で呼ばれる無骨なデザインは、高校の頃は学校指定で強制的に購入させられたローファーを思い出させたので嫌悪感さえ抱き、ハーフサドルデザインが美しいフォルムを描くバス WEEJUNSに魅了されたが、40も過ぎる年齢になると、ビーフロールという愛嬌のあるクラシックなデザインに親近感が涌いたのである。
日本に帰ってから購入しようとしたが、当時は日本に正規代理店がなく、SEBAGOのローファーを探すのは至難の業。そのために購入することができなかったが、最近になって日本にも代理店ができたことによって、買いやすい環境ができたようだ。デニムからショーツまで、あらゆるボトムにマッチするトラディショナルなデザインは1足あると便利だと思うので、手に入れようと思っている。
NAVIGATOR
南井正弘
47歳/愛知県出身/靴に詳しいフリージャーナリスト
「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日のランニングを欠かさないファンランナー。
ニューバランス M990
チャーチ シャノン