Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。
サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...
Reading the leading shoes
今から21年前の1992年4月のこと。当時はインターネットが普及するずっと以前のことで、「海外のその時点での気温はどれくらいか?」というのは、ニューヨークやロンドンのような大都市なら朝刊、夕刊に掲載されたが、それ以外の都市はガイドブックでおおよその値を知るか、現地に電話して確認しなければならなかった。そのときに出張で訪れることとなったボストンはガイドブックに「日本よりかなり気温が低い」と書かれていたから、L.L.ビーンのシンサレート入りマウンテンパーカやマフラー、手袋などで寒さ対策は万全の状態で成田空港を後にした。乗り継ぎ地のニューヨークJFK空港は雪。しかしながらボストンのローガン空港に到着すると明らかに様子が違う。強い日差しが降り注ぎ、華氏で61度の表示が。これは摂氏に換算すると16.1℃だから、4月のボストンだとするとかなり暖かい。宿泊先のフォーシーズンズホテルに荷物を預け、ボストンコモンという当地の有名な公園のベンチでリスが木の実を頬張るのを見ながらしばしくつろぐことにした。
この当時すでにランニングはアメリカにおいてライフスタイルの一部となっており、暖かい陽気に誘われたのか、この日は数多くのランナーがボストンコモンを走っていたが、仕事柄足元に目をやると、当時のランニングカテゴリーにおけるベストセラーだったナイキのエアペガサス、リーボックのボストンロードといったモデルに加え、地元マサチューセッツ州に本拠を構えるブランドだけあって、ニューバランスのランニングシューズが高いシェアをキープしていることに気付く。なかでも日本では高価な価格設定がなされていたM997の着用率が高いことに驚いた。着用者の年齢は高めなのに加え、アングロサクソン系のランナーがほとんどで、自分の頭の中で描いていた「これぞニューバランス!」というイメージが目の前で現実になっている光景はなにか微笑ましいものがあった。ボストンのような歴史ある街には落ち着いたデザインのM997のようなプロダクトが本当に似合っていたのである。
あれから20年、現在では日本においてもランニングをライフスタイルの一部としている人も多いが、当時アメリカでベストセラーだったナイキのエアペガサスは全く異なった雰囲気のプロダクトに変化しており、リーボックのボストンロードはモデル自体が存在しない。一方でニューバランスの900番台シリーズは何度もモデルチェンジを経験しながら、当時のテイストを継承しつつ機能性向上に余念がない。この製品開発方針は同じく数字を品番としている点もあるが、BMWを連想させる。BMWもモデルチェンジを繰り返しつつ、根底に脈々と受け継がれる伝統のようなものを感じさせるからだ。
ニューバランスの900番台シリーズは、2012年に現行のM990が登場し、前モデルのMR993よりも大幅な機能性の向上を果たしているが、このプロダクトにも自分が21年前にボストンコモンのランナーが履いていたM997と同じテイストを感じ取ることができるのは、900番台シリーズの900番台シリーズたる所以なのかもしれない。
ニューバランス ジャパンお客様相談室
電話:0120-85-0997
価格:23,100円
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南井正弘
47歳/愛知県出身/靴に詳しいフリージャーナリスト
「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日のランニングを欠かさないファンランナー。
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