毎日を軽やかに楽しむ! 倉本康子さんの美の秘訣
――学生時代からファッションモデルとして活躍されていますが、昔からずっと変わらないことはありますか?
ファッションが好きだということ。今も洋服屋さんにいくと、水を得た魚のようにワクワクします!
――小さいころから洋服好きだったのですか?
私には姉がいるのですが、ほら、姉妹って、お姉ちゃんは新しい服をたくさん買ってもらえるけど、妹はお下がりばっかりじゃないですか。幼い私にはそれがどうにも納得がいかなかったようで、試着室から新しい服を着たままダァーっと店を走り抜け逃亡したことも(笑)。着て帰っちゃえば買ってくれるだろうって作戦だったんでしょうかね。あわてた母が「買ってあげるから戻ってきなさいー!」と追いかけてきて。
――チビッ子ヤッコさんがお店を飛び出すシーンを思うと(笑)
記憶にないくらい小さいころの話なのですけどね…。モデルの仕事を始めたときに母が「天職だね」とこのエピソードを教えてくれました。
――20代のころはどんなファッションを?
20代のころはキャリアウーマンに対する憧れがすごく強くて、靴は絶対ピンヒールがマストで、メンズライクなパンツスーツを着たり。時代の空気もあると思いますが、”ザ・かっこいい女”スタイルを目指していました。最近は、カジュアルなものが増えましたね。カジュアルさのなかに”大人っぽい”とか”女っぽい”要素があるアイテムが好き。ビーチサンダルだけどキラキラしていたり、アクセントに革を使っていたり。20代のころのように全身で”キメっ”ってことはもうしないですね。
自分の大好きなものが集まった場所がクローゼット
――服を買うときの決め手となるのは?
妄想(笑)。服を見て、それを着る場所やシチュエーション、ときには年代を超えた自分が着ているシーンが妄想できる一着に惹かれるんです。”これを着てニューヨークの街を闊歩して~” とか “こんなモードな服を着るおばあちゃんになりたい!” “この個性的な服を堂々と着こなせる私になって…” とかね。妄想をかきたてられる服に出合えたときのワクワク感はたまりません。
――選ぶのも着るのも楽しそうです。
楽しいのはずっと変わらないですが、最近特に洋服を大事にするようになりました。短大生のころからモデルの仕事を始めて今に至りますが、改めて洋服に生かしてもらっていると思いますし。自分を生かしてくれる洋服を大切にするということは、イコール洋服たちの部屋でもあるクローゼットの状態も心地よくすることに繋がっています。
――インテリアモデルでもある倉本さんのクローゼット、気になります。
私に限らず、クローゼットって開けたときにテンションがあがるべき場所だと思うんですよね。こんなにも洋服屋さんがたくさんあって、数ある服のなかでも”私はこれが好き”っていう一着にお金を払って、入れる場所がクローゼットなのですから。開けたときに “わ~何着よう!” って楽しい気持ちになるのが本来の在り方だと思うのです。
――散らかったクローゼットを開けてテンションが下がってしまうこともあります…。
クローゼットは、お気に入りのものだけがある楽しいスペースだと分かるだけでも違うと思います。お店のように美しくデコレーションするのは難しくても、きれいにたたんで、好きなカゴを使って収納したり、ハンガーを一種類にそろえる、色別、柄別に分けてかけるなど、少しでもモチベーションのあがるクローゼットのためにできることはあります。
“部屋は心の鏡”
――服を処分するときのコツを教えてください。
私は、まとめて服を買うことが多いので、3着買ったら、3着クローゼットから放出する、いわゆる”ところてん方式”がマイルールです。
――放出する服はどうやって決断していますか?
基本的に3秒ルール。悩みません。だって服を着るか着ないかで迷う時間ってすごく”ムダ”じゃないですか。仮に1着につき5分悩んだとして、1か月でどれくらいになるか、1年でどれだけの時間を”着るかな、やっぱ着ないかな、でも…”なんて時間に使うんだろうって。たいてい迷ったものはその後も着ませんよね。迷う服からお気に入りへの昇格はないでしょう。迷う服は、欲しいと言ってくれる友人へのギフトにしたり、オークションで売って新しい服を買うなど、クローゼットから放出して有効に使ったほうがいいと思うのです。
――迷う時間を1年に換算したことはなかったです。
迷うのと同様、モノを探す時間ももったいないと思います。たとえば、バッグを変えたときにありがちな”あれ?あれがない!”と、バッグをゴソゴソ探しまくるあの時間。挙句、リップを何本も買ったり、カードケースを家に取りに帰ったり。そういう時間はなるべく減らしたいので、私はバッグを収納しているスペースにひとつカゴを置いています。毎日家に帰ってきたら、そのカゴにバッグの中身を全部出して、次の日使うバッグに中身を入れ替える。探す時間もチリツモで、1回の時間は3分だったとしたら、1年で何時間バッグのぞいてゴソゴソ探すんだろうって考えるとね。
――忙しいときに限ってモノが見つからなかったりしますよね…。
本当にそう。自分の生活でもつくづく実感しますが、”部屋は心の鏡”。忙しいときは部屋も散らかりがちです。私もありますよ。時間に追われて生活していると、外ではきれいな洋服を着て、お仕事で人様のお宅をきれいにして、いざ自分の家に帰ってきたら”あぁ私疲れてるな”って思うこと。帰ったときに家が散らかっていると、余計に疲れますから悪循環ですよね。掃除は出かける前にして、家のドアを開けたときにホッとできるように、特に最初に目に入ってくる”玄関”まわりには気を付けています。
――玄関のどんなところに気を配っていますか?
見た目にきれいであることはもちろんですが、香りも大事かと。玄関は、家の第一印象を決める場所。人の家にお邪魔するときでも、奥に素敵なインテリアが見えていても玄関の時点で、”昨日鍋した?”と生活が透けてしまうような香りがしたら、その匂いが結局その人の家の印象になってしまう。出かける前の香りづけは習慣にしています。今は、ディプティックの砂時計型のディフューザーがお気に入りで、砂時計をひっくり返してから家を出ています。
飲んで楽しんで帰る。このシンプルさがひとり飲みの魅力
――話は変わりますが、『おんな酒場放浪記』(BS-TBS)では、お酒を楽しそうに飲む姿が印象的です。
20歳のころからひとりで飲みに行っていましたからね。
――20歳でひとり飲みですか!?
父の影響ですねきっと。父が仕事帰りに行く”行きつけ”に何度か連れて行ってもらったことがあって、そこでの店主や常連さんとのくつろいだ会話や父が楽しげに飲む感じを見て”私も行きつけが欲しい”と思うように。
――ひとりで最初から躊躇なく入れたのですか?
いや、最初の1年くらいはドアを開ける勇気がない日もありました。でも私、そのとき画期的な方法を思いついたんですよ。それは、心のなかのスイッチを”女探偵モード”に切り替えるんです(笑)。「ひとりで飲みに来たと見せかけて、これ内偵調査ですから!」と。まぁ本気で思っているわけではもちろんないですけど、それくらいちょっとしたモードの切り替えで、えいって入ってしまえば、あとは楽しい世界が広がっているわけですからね。
――女探偵とは…予想外すぎて(笑)。やってみたら楽しそうです。ところでお気に入りのお店はどうやって見つけているのですか?
最初は、人に連れて行ってもらうことが多いです。そこで「このお店、好きだな」と思ったら、日にちを空けずにひとりで行くんです。お店の方がよく言う「また来てくださいね」にも、「必ず来ます!」と返して、数日後に「本当に来ちゃいました」とぴょんと行く。この瞬発力はけっこう大事です。
――常連さんが多いお店だと居づらいとかはないですか?
お店の常連さんというのは、そのお店を愛している人たちですから、基本的にそのお店に来る人には親切ですよ。メニューを見て迷っていると、「ここは○○がおすすめだよ」と気さくに声をかけてくれる方が多いですね。もちろん気が合う人もいれば、嫌だなと思う人もいて、嫌な人には近づかない。声をかけてきてもピシャッとシャットアウト。飲みたいときに飲んで、話したいときに話して、帰りたいときに帰る。ひとり飲みのよさはこのシンプルさ。
いかに自分に優しく生きるか。
――1日の終わりに気楽に飲めたらストレスも吹き飛びそうですね。ひとりで飲んでいるときに仕事のことを考えたりしますか?
全然しませんよ! だいたい夜に悩んだり考えたりしても、どんどん陰の方に入っていくだけで決していいお酒にはならないんです! お酒の席でグチグチしている人って本当に苦手です。私は飲むときは完全にスイッチはオフにします。ふ~今日も終わった! 明日からまたがんばろうっと。という活力のための晩酌なんです。
――飲むときは常にいいお酒なんですね。
はい、いい時間だと思います。これはまわりの人の影響もあると思います。学生時代を思い出すと分かりやすいですが、同じグループの女子たちってみんな話し方とかキャラが似てきますよね。自分の近くにいる人にはどうしても影響を受けると思うんです。楽しく、きれいな飲み方をする人が好きですし、まわりにはそういう人が多いのだと思います。たとえば、同じお酒を飲むにも「太る~」と悲観しながら飲んでも楽しくないですよね。飲んだら動けばいいんですよ。ビールは悪くないの!
――飲んだら、動く。これも”ところてん方式”ですね。
そうそう。といっても特にジムに通ったりはしていませんが…。朝のラジオ体操は日課ですが、あとは特に時間を割いてエクササイズをすることはありません。毎日の生活のなかの”動き”を運動に変えています。
こうして話している今もおへそに力を入れて腹筋を鍛えたり。歩くときもおへそを奥に入れて10cm上げるようなイメージで歩くと、すっと姿勢が伸びて、背筋も腹筋も使います。そして早足で腕を大きく振る。「道で見かけたけど、猛スピードで歩いてて声かけられなかった」と友人に言われることもありますが、別に急いでいるわけでもなく”移動は運動”だと思って歩いているんです。
――それもチリツモですね。
きっと何事もそうですよね。ムダな時間も積み重ねたら膨大だし、いい習慣も積み重ねたら目に見える効果につながると思うんです。私が目指している笑いシワいっぱいの”へへへっ”って顔が似合うおばあちゃんになるためにも、1日の終わりにご機嫌で晩酌をしてふっと軽くなってから寝たいと思うんです。”いかに自分に優しく生きるか”がテーマです。
最後に倉本康子さんから
“美しくなるためのメッセージ”
結局動いてみなければ、結論が出ないようなことをいつまでも考えたり、悩んだりするのは苦手。気持ちよく明日を始めるためにもリセットする心地いい時間をつくります。私にとって、オフモードに切り替えるスイッチは、行きつけのお店で飲む一杯目のビールであり、家だったら、ビールを開けるときの”プシュ”という音(笑)。