HOW TO

プロに聞く、スーツの魅力とその買い方


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カジュアルクロージングに比べて、多くのTPOにマッチするスーツですが、“とりあえず着ています”という人が多いのも事実。だからこそしっかりと着こなしている人は、魅力的に見えます。しかし、どうやってスーツを選んだらいいのか? 頭を抱えてしまうという人も多いはず。今回は、この道26年のベテラン販売員である「阪急MEN'S TOKYO NEWYORKER」の森田さんに、自分に合ったスーツの選び方をレクチャーしてもらいました。これを機に自分に合う一着を見つけ、ワンランク上のスーツスタイルを楽しんでみませんか?

古川 耕

NAVIGATOR
森田学さん

阪急MEN’S TOKYO NEWYORKERの店長。これまでに所属してきたお店も含め、販売員歴26年のベテラン。スーツの奥深さに魅了され、ショップにてその魅力を伝えている。


スーツの着こなし次第で内面が変わる!?

――自分に合ったスーツを着ると、どんな効果があらわれるのでしょうか?

森田:装いがキリッと引き締まる、というのはもちろんですが、自分に合ったスーツというのは体になじむので、背筋がピンと伸びるような感覚を覚えるはず。体の感覚が変われば、気持ちにも気合いが入りますし、自信も出てくるので、そういった内面の変化は外に伝わって、周りからの印象もだいぶ変わると思います。

――裏を返せば、しっかりとスーツを見立てるだけで普段とは違った景色を見ることができるということですね。ちなみに肝心の自分に合うスーツとは、どんなものでしょうか?

森田:見栄えだけで選ぶよりも、まずは「サイズが自分に合うかどうか?」がスーツ選びに関しては重要なんです。中でも肩幅に合わせたサイズを選ぶだけで、お洒落度はグンと上がります。というのも、スーツというのは肩甲骨で着るものだから。日本人の平均的な肩は欧米諸国に比べるとなで肩気味で、すこし前屈みになっているんですが、NEWYORKERのスーツはそういった日本人の骨格に合わせてつくっているんです。

――なるほど。

森田:「阪急MEN’S TOKYO NEWYORKER」では、「NEWYORKER The PREMIUM」というインポートの風合い豊かな生地を使用した、上質なスーツもご用意しています。インポートブランドのような佇まいでありながらも日本人に合った仕立てなので、インポート好きの方におすすめです。あと、お店で展開しているスーツは殆どが既製服なので、「サイズはしっかりとこだわりたい」という方には「パターンメイド」を提案しています。セミオーダーシステムなのですが、ジャケット、スラックスともに、サイズやディテールを細かく選択できるようになっているので、より自分に合ったスーツをつくることができます。

――サイズ以外に気を付けたほうがいいことはありますか?

森田:あとは「目的」ですね。冠婚葬祭、ビジネス、フォーマルなど、オケージョンによって“着ていいスーツ”と“着ちゃいけないスーツ”がありますから。スーツの購入を検討されているならば、目的意識をはっきりさせることが大切です。特に目的がなく、漠然と「スーツを買っておこう」と考えている方は、一度クローゼットの中を整理することをおすすめします。自分の持っていない“色”や“柄”を把握して、足りないものを補うような形でお買い物をされるのがベストです。

百貨店でスーツを買う理由

――百貨店などでスーツを買うのは少し敷居が高いイメージがあるんですが、お客さまにはどんな方が多くいらっしゃいますか?

森田:「敷居が高い」というのはあくまでイメージで、実際はそんなことありません。私たちの店舗はサラリーマンのお客さまがすごく多いですし、はじめてスーツを買いにきた、という若いお客さまもいらっしゃいます。それに、百貨店にはいろんなお店が入っているので、多くのブランドの商品を一度に比較しながら、選ぶことができますし、販売スタッフもスーツに関する豊富な知識をもっているので、なにか分からないことがあればすぐにお答えできます。専門のスタッフによる丁寧なサービスを受けられるところも、百貨店でお買い物をする利点ですね。

――しっかりと仕立てられたスーツは、それ相応に安くない買い物ですからね。それに見合った丁寧な接客サービスを受けられるのは、購入する側としては安心できます。

森田:私たちも、せっかくお客さまにご来店いただいているので、気持ちよくお買い物して欲しい、という想いで接客にあたっています。

――お客さまのお悩みで実際に多いのは、どんなことですか?

森田:やはりサイズを気にされる方は多いように感じます。たとえば最近だと「細くスリムにスーツを着たい」という方がいらっしゃいました。当日はご自身でも、細く仕立てたスーツを着用されていたんですが、過度にスリムなシルエットであったためお客さまの体格に合っておらず、生地に傷みが見られました。それをお客さまにお伝えし、適正なサイズのスーツをおすすめしてご購入いただいたことがあったんです。

――お客さまの反応はいかがでしたか?

森田:後日ご来店いただいた際に、「従来のスーツよりも着用感がいいし、周りからの評判もよくなった」とお褒めの言葉を頂戴しました。プロとしてお客様にアドバイスさせて頂き、結果が伴う。こんなときは販売員冥利に尽きます。

森田さん直伝! お店でためになる豆知識。

――お店へスーツを買いに行く前に、準備しておくといいことなどはありますか?

森田:実際にスーツを試着することになると思いますので、シャツと革靴をご持参されるとスムーズです。店舗でも試着用のシャツやシューズは用意しているのですが、サイズが合わない場合もあるので…。ご自分のものを着用されて、より明確なイメージを描かれたほうがお買い物もしやすいかと思います。なので、お仕事の帰りにお店へ寄っていただくのがおすすめです。

――あとはサイズや目的にそってスーツを選ぶ、と。ちなみに、現在のスーツスタイルのトレンドはどのような傾向にあるのでしょうか?

森田:カラーはネイビー、シルエットは細すぎず太すぎないジャストフィットしたものが主流です。そこに、前立てはシングルの2ボタン、スラックスはノータック、といったモダンなディテールが加わっているものが人気です。都会的かつ、極端にならないシルエットのものをイメージしていただくとわかりやすいと思いますね。パンツの裾をダブルに仕上げると、洒落感がより一層アップするのですが、オケージョンによってはふさわしくない場合もあるので、そこは目的にそって選んでいただければいいと思います。

――シャツやネクタイなどもスーツと一緒に購入したほうがいいんですか?

森田:そうですね。スーツの色や柄によって、合わせるシャツやネクタイも変わってきますから、必ずしもお手持ちのアイテムと組み合わせられるとは限りません。コーディネートに関しては、お客さまの要望に合わせながら私たちがしっかりとサポートします。また、買った後のことも考えると、ハンガーやブラシなども専用のものがあるといいですね。針金の細いハンガーでスーツを吊るすと型くずれが起きやすいですし、汚れがついたままだと生地が痛みやすくなって豊かな風合いもすぐに失われてしまうので…。

――靴と同じようにしっかりとメンテナンスすることが大切なんですね。

森田:そうですね。それにスーツが長持ちするということは、買った当時の背筋が伸びる感覚も長く味わえるということ。冒頭の話に戻りますが、シャキッとしたスーツに袖を通せば気持ちも引き締まり、きっとご自身の生活にもポジティブな作用が働くと、私たちは考えています。「消耗品だから…」と安価なものを購入して乱雑に扱うよりは、仕立てのいいスーツを大切に長く愛用いただけたら、私たちとしても本望ですね。

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SHOP INFORMATION

阪急MEN’S TOKYO NEWYORKER / NEWYORKER BY KEITA MARUYAMA
東京都千代田区有楽町2丁目5番1号 5F
営業時間:月~土 12時~21時、
日・祝 11時~20時
電話:03-6252-5391

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