世界中のアーティストが成功を求めて集まるニューヨーク。アーティストが大成を遂げる方法は、ギャラリーでの展覧会だけではない。ストリートから生まれた偉大なアーティストのパワーに触れてみよう。
01『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
正体不明のストリートアーティスト、バンクシーが2013年10月1日から1ヶ月の間、毎日1点1作品をニューヨークの路上に残したドキュメンタリー。
SNSを駆使して人々は「宝探し」に加熱する。
「アートは市民とともにあるべきだ」と持論するバンクシーの作品は、スプレーでのグラフィティーや廃材で作られたオブジェなど、日によって違う。それらはネットであっという間に拡散されるのだ。
バンクシーの作品を追っかけしているニューヨーカーたちのファッションも様々だ。ニット帽を被り、モノクロファッションに赤を効かせたカジュアルな格好の2人は、ストリートにマッチしたおしゃれで目を引いた。
02『バスキア』
ストリートアーティストから80年代に一気にスター画家となったジャン=ミシェル・バスキアの伝記映画。27歳で他界するまでの、天才画家の栄光と孤独を描く。ウォーホル役でデヴィッド・ボウイが出演。
野心的なバスキアの売り出しに協力する美術評論家のルネや、画廊のオーナーの金銭的な援助を受けて、溢れ出るイメージを次々とキャンバスにぶつけるバスキア。その自由な創作スタイルは、後にウォーホルにも嫉妬されるほど。
ニューペインティングのスターアーティストになったバスキアは、服装もこぎれいになりコム・デ・ギャルソンのファッションショーにゲスト出演もしたが、彼自身は恋人ともうまくいかず孤独だった。
『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』で描かれているニューヨークのアートシーンは、まさに今日的な示唆に富んだ状況を映している。ニューヨークのストリートをジャックしたバンクシーのアートが発端となり、ソーシャルメディアによる情報が人々を作品探しに突き動かす。その騒動そのものを含めてアートなのだというように、人々はバンクシーに熱狂するのだ。公共の場所にあったバンクシーの作品が盗まれて、高額な値段がつくところなどは、80年代のストリートから生まれたスター、バスキアを彷彿させる。
『バスキア』の時代はまだネット社会以前の話なので、バスキアの名声は主に紙媒体やテレビを通してだったが、アートバブル期ということもあり、彼の自由で圧倒的な作風により一気に時代の寵児となった。ドレッドヘアのナイスルッキングな黒人画家、というのも人気の要因だったと思う。バスキアとウォーホルは真の友情で結ばれていたが、2人がグラフィティーだらけのソーホーあたりを歩く様は、まさにニューヨークらしい光景だ。
バンクシーとバスキア。前者は時代を深読みして人々を先導し、後者は時代に呑み込まれて麻薬により若くしてこの世を去った。だが、アートにとりつかれた両者にとって、ニューヨークはやはり特別な場所だったに違いない。
INFORMATION
- 『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
- 監督:クリス・モーカーベル
提供:パルコ
配給:アップリンク、パルコ
渋谷シネクイント、渋谷アップリンクほか、大ヒット上映中
- 『バスキア』
- 監督・脚本:ジュリアン・シュナーベル
出演:ジェフリー・ライト、デヴィッド・ボウイ、ベニチオ・デル・トロ、デニス・ホッパー、ゲイリー・オールドマン、クリストファー・ウォーケン、ウィリアム・デフォー、クレア・フォーラニ、コートニー・ラヴ
ブルーレイ 4/20(水)より発売 ¥3,800+税 DVD発売中 ¥2,800+税
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