時代が変わっても、ニューヨークは世界中の夢を持つ人々にとって、希望の地であることに変わりはない。生まれ育った国とニューヨーク。2つの故郷を持つ人々の心の内を、名作から感じてみよう。
01『ブルックリン』
1950年代。アイルランドの家族と離れて、ニューヨークに新天地を求めた少女エイリッシュ。新生活の孤独ととまどいで涙する日もあったが、ニューヨークでの暮らしは彼女を美しく自立した女性へと変えていく。
ブルックリンの高級デパートで働き始めたエイリッシュは、夜は大学に通いイタリア人の恋人もできて充実した生活を送っていた。だが、故郷の姉の急死により、一時ニューヨークを離れる事態になる。
エイリッシュを演じるシアーシャ・ローナンが、目に見えて美しくなる様に目を見張る。最初はアイルランドの国民色のグリーンや地味な色の洋服だが、自信に満ちて成長すると、鮮やかな色のドレスを着用。どのコーディネートもキュートさ全開だ。
02『グリーン・カード』
園芸家のブロンティはニューヨークの温室付きのアパートに入居したかったが、単身者でそれがかなわず、フランス人で永住権(グリーンカード)が欲しいジョージと偽装結婚をする。だが、共同生活は当然うまくいかず──。
希望通りにアパートに入居したブロンティだが、入国管理局の調査委員が偽装結婚ではないのかを調べにくることになったから大変。お互いの生い立ちや趣味を暗記して面接に備えるも、2人はことごとくぶつかりあう。植物が映えるインテリアは必見のすばらしさ。
モデル出身のアンディ・マクダウェルがブロンティに扮して、着心地のよさそうな部屋着スタイルを見せてくれる。一変して、ニューヨークのアッパーな夕食会に出掛けるときには、ウェイヴィーなロングヘアを下ろして光沢のあるトップスでおしゃれに変身するのだ。
夢を実現するためには困難がつきまとう。新天地のニューヨークで居を構える孤独な戦士たちの頑張りを目にすると、映画のハッピーエンドに心から共感してしまうものだ。『ブルックリン』の背景は50年代のニューヨークで、エイリッシュは故郷のアイルランドから船でこの希望の大都会にやってくる。最初は望郷にくれていた彼女の心の変化は、ファッションにもしっかり表れている。洋服の色目がどんどん明るくなるのだ。彼女がレモンイエローのワンピースで故郷の街を歩けば、地元の住民は振り返るほどで、エイリッシュはかつての内気な少女ではないのである。
『グリーン・カード』のブロンティといえば、植物を愛するほどには男性に夢中になれないマイペースな独身女性だったが、偽装結婚した相手のフランス人ジョージの出現で、ほんものの愛を知ることになる。ジョージもまた、フランスからニューヨークにやって来て、永住権を取りこの地で希望を叶えようとしていた。
それぞれの苦労がありながらも誰かと巡りあって、彼らは恋におち、このとてつもないエネルギーに満ちたニューヨークで共に生きていこうと決心する。ニューヨークを舞台にしたラブストーリーが後を絶たないのは、星の数ほどの人間ドラマにあふれているからに他ならない。
INFORMATION
- 『ブルックリン』
- 監督:ジョン・クローリー
脚色:ニック・ホーンビィ
原作:コルム・トビーン
出演:シアーシャ・ローナン、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン、ジム・ブロードベント、ジュリー・ウォルターズ
2015年/アイルランド=イギリス=カナダ/112分
TOHOシネマズ シャンテ他、全国上映中
©2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
- 『グリーンカード』
- 監督:ピーター・ウィアー
出演:アンディ・マクダウェル、ジェラール・ドパルデュー、ビビ・ニューワース、グレッグ・イーデルマン、ロバート・プロスキー
1991年/アメリカ合衆国