尾崎雄飛の珈琲天国

珈琲たいむ


Mar 30th, 2016

text_yuhi ozaki
photo_ari takagi

春よこい、早くこい。
寒い冬の長いトンネルを走りながら、遠くに見える春の明かりを追いかける。
「三寒四温」を楽しみながら、少しずつ身の回りの春を見つけるこの季節は、いつもわくわくする。

春のやわらかい日差しのなか、お気に入りのお菓子を用意して、珈琲たいむ。
珈琲にはもちろんこだわるのだけれど、今回はちょっと違うところにこだわろう。

「おいしい珈琲」を求めて、豆の種類や煎りかた、挽きかた、何通りもの淹れ方。
温度を保つことや、敢えて温度を下げてみること、実験的な抽出方法……などなど。
僕らは色々な珈琲のおいしさを見つけてきた。

けれどもそれらは、ビーカーから試験官に移した液体をクイッと飲んで観測結果を語るような、理屈っぽいお話が多い気もする。
本当においしい珈琲たいむとは、飲むタイミングや、そのときの状況も含めるのではないだろうか。

そこで、今回は家庭で珈琲を抽出するひとときをほっこりさせる「陶磁器のドリッパー」を紹介したい。

まずは三洋産業の「有田焼 深濾過層 磁器ドリッパー」。

老舗カリタの定番型で、1〜2人用の101型を磁器で作ったドリッパー。
陶磁器のドリッパーは、その保温性によって、抽出中にドリッパー内の温度を一定に保つことができるので、味が安定するのだ。

続いては磁器作家の濱岡健太郎さんの作。

こちらはコーノ型をモチーフにしている様子。
木工作家の三谷龍二さんのシルエット(らしい)が、お湯を注ぎ始めると……

こんなふうに透けてかわいいのだ。

最後に大物。

長崎・波佐見焼「ハサミ・ポーセラン」の磁器の大型ドリッパーとサーバー。
これに珈琲10杯とか入るぐらい大きい。
フィルターはコーノやハリオなどに使う円すいの大きいサイズか、ケメックスのを利用してもいい。
ザラッとマットな触り心地、それでいて繊細な磁器は、使う時に気持ちを優しくしてくれる気がする。

ゆっくり焼き上げる陶磁器のドリッパーの触り心地や音、暖かさを確かめながら、いつもよりゆっくりした珈琲たいむを過ごして欲しい。

今月の一杯 【ギャラリー10cmのオリジナルブレンド】

濱岡さんのドリッパーを買った長野県松本市のギャラリー「10cm」のオリジナルブレンドは名古屋のカジタコーヒーによるもの。バランスのとれた中庸な味わいの芯に通貫する強い苦味が特徴。

PROFILE
尾崎 雄飛

2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。

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