食べて「発見」。

自然派ワイン中華、夏の愉しみ方

神田 味坊


Jul 23rd, 2014

Text_Junichi Kobayashi
Photo_newyorker magazine

東京もいよいよ梅雨明け。登山をする人ならご存じかもしれませんが「梅雨明け十日」とはよく言ったもので、梅雨が明けた後の10日間ぐらいは安定した晴天が続くため、夏山のベストシーズンともいわれています。空はよく晴れ、気温も湿度もよく上がり…となれば、「梅雨明け十日」はスパークリングワインやビールにとってもベストシーズンに違いない!? というわけで、このお店。若干フライング気味で向かいましょうか!!

SHOP DATE
味坊

TEL:03-5296-3386
住所:東京都千代田区鍛冶町2-11-20
営業時間:11:00~14:30、17:00~23:00
定休日:日曜・祝日
予約方法:お電話にて
アクセス:JR、東京メトロ銀座線「神田駅」から徒歩3分
席数:70

夏限定! 即席のビアガーデン!?

その名は「味坊」。場所は神田のガード下。外観も内観も、いわゆる”町の中華屋”的な佇まい。供されるのは北京以北の中国東北地方の料理です。
そんな店ながら、ワイン好きなファンが足繁く通うのは、自然派ワインの揃いがすこぶる良いから。しかも、白だろうが赤だろうがロゼだろうが一切合切1本2500円という、明朗で潔い価格設定。…ゆえに多いのです、この店の中毒患者が。2フロアある店内も相当な客席数ではあるものの、週末が近づけばいつだって予約でいっぱい。そうとは知らずに訪れるお客が店の外にまで溢れ出す、という具合。夜風が心地よい時間にもなれば、ビアガーデン的なシチュエーションが即座に誕生するという次第。この賑わい感、呑ん兵衛のココロをがっしり掴んで、ぐらぐらと揺すぶります。

羊とパクチーが好きならば…

店内はどうか? というと案の定、満員御礼。みなさんが召し上がっている、この店の名物をご紹介しましょう。まず外せないのが「羊肉串」。クミンや唐辛子などのスパイスで味付けしたラム肉の串焼きです。運ばれて来た瞬間から周囲に漂うスパイスの香り、噛むたびに溢れ出す肉汁、品の良いラム特有のうま味…。これがワインと実に合う。いや、これこそが、この店がワインを揃えるきっかけにもなった一品です。

ワイン向けに生まれた冷菜の盛り合わせ「ワインプレート」も必須です。
羊のタンや豚のレバーを始めとして、干し豆腐を燻製にしたオリジナルのおツマミなどが6種盛り合わせられて登場。豆腐に重石を乗せて水分を抜いて伸した後に、さらに干すという工程を経て誕生する干し豆腐は、中国東北地方の名物。炒めたり、煮込んだり、細切りにしてごま油や葱と和えてサラダにしたり…という具合に、さまざまなシーンでテーブルに顔を出す基礎食材ですが、この店ではスモークにしてしまった。これがまた白赤問わずワインに激しく寄り添って離れません。

ちなみに「羊肉串」を注文したら、写真中央のグリーンのサラダもお忘れなく。これは「老虎菜」という青唐辛子ときゅうりとパクチーのサラダ。詳しくは、このコラムの末尾をご覧いただきたいのですが、個人的には「羊肉串」と「老虎菜」があればそれで十分、というくらいに最高の組み合わせじゃないかと思うのです。

ワインはジャケ買い

そろそろ2本めのワインをば…というタイミングでみなさんが向かうのは、ワイン専用の冷蔵庫。ワインセラーではなくギンギンに冷えた冷蔵庫がフロアに鎮座していますので、そこからお好きなボトルを適当に、といういたって自由な仕組みも素敵。ワインのインポーターさんやワイン評論家の常連さんも少なくないというぐらい品揃えも確実なので、適当にジャケ買いしてもきっと大当たりのはずです。

あ、そうそう。前述した「老虎菜」はちょっと残しておくことをおすすめします。なぜならば、〆に「酸菜白肉」というスープを注文して、そこにドンっと乗せて食べると最高だから。
「酸菜」とは葉菜を塩漬にして酸味が出るまで乳酸発酵させたもの。中国の南部では高菜などを使いますが、北京以北の東北地方では白菜が主体です。本来は、冬場に畑の作物がまったく採れなくなるための保存食。なので「酸菜白肉」も冬場の料理なのですが「老虎菜」をトッピングした瞬間に”夏のスープ”へと様変わり。酸菜による酸味、豚バラ肉のコク、パクチーの香味、そこへ青唐辛子の辛味がみごとに絡み合い、みごとに出世しますので、ぜひ!

酸菜白肉(豚バラ肉と白菜漬け煮)
980円

塩で漬けて酸味が出るまで発酵させた白菜(酸菜)を、豚のバラ肉と春雨とで煮込み、仕上げにパクチーを山と盛って供されるこの料理は「サンツァイ、パイロウ」と読みます。本来は冬場の料理ですが、輪郭のくっきりとした酸菜の酸味が、夏バテ気味のからだに実は利く! 食欲が低迷している時にこそおすすめです。

羊肉串(ラム肉串焼き)
1000円(5本)/1600円(10本)

もはや味坊の名物と言っても過言ではないのがこの一品。北京などでもポピュラーな料理ですが、この店は焼き方が秀逸。クミンや唐辛子で漬け込んだラム肉は、ひと口かじるとスパイスの香りがブワーッと立ち上がり、噛むごとに肉汁じゅーじゅー。次第に乳香が漂ってくるまで噛み続けましょう。

老虎菜(青唐辛子と胡瓜と香菜のサラダ)
800円

個人的には気温が30℃を超えるとどうしても食べたくなるサラダです。唐辛子の鮮烈な辛さを、きゅうりの水分が中和して、塩味と辛味とをパクチーの香りが奇麗にまとめてくれる感覚は、攻撃的であると同時に、涼やか。あまりの辛さにシビれた舌を、白ワインでちびちび洗い流していると、頭がクリアになる感覚すら味わえます。

沾醤菜(干し豆腐野菜たっぷり手巻)
630円

干し豆腐をはじめとして、にんじん、だいこん、きゅうり、青ねぎ、そしてパクチーが山のように盛られて登場。卵を味噌と一緒に炒めた醤(ジャン)を付けていただきます。実はこの卵の味噌、どんな生野菜にも合うようで、櫛切りにした生のたまねぎとの相性は特に最高! 赤ワインと合います…が、女子にはおすすめできないか…(汗)。


ここに行くならこんな服

シンプルになっていく夏服は、柄や小物のディテールがポイント。

これから益々暑くなる季節、シンプルになっていくのが夏の装いです。暑い夏のファッションでついやってしまいがなのが、カジュアルになりすぎてだらしなく見えてしまうこと、です。
いつでも気が利いていると思われるポイントは、シャツやポロシャツの衿がしっかりしているものを選んだり、カットソーも色柄がキレイなものや、シンプルなものほど素材にこだわるひと手間。これだけで、夏のおしゃれに差がつきますよ。
お仕事帰りに気軽に立ち寄れるのが魅力の味坊。目の前に美味しい中華とワイン、そして元気で陽気なお店の方々。そこに仲間が揃えば完璧なシチュエーション。笑顔が絶えないひとときになること間違いなしです。


Navigator
小林 淳一

編集者。東京メトロ駅構内で配布するフリーマガジン『metro min.』、食材のカルチャー誌『旬がまるごと』などの編集長を経て、主に食の分野で編集者として活躍。お酒を呑んで東北を応援するイベント「DRINK 4 TOHOKU」(http://www.drink4tohoku.com/)を開催している。

今夜のデートは南米トリップ!?

夏のおでんで、コミュニティについて考える。


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