食べて「発見」。

今夜のデートは南米トリップ!?


Aug 20th, 2014

text_tomoko oishi
photo_kazuhiro fukumoto

なんだか年々、亜熱帯化しているのでは?! と感じてしまう暑さが続く今日この頃ですが、そろそろ初秋のお洒落をして、大人ムードも楽しみたいもの。今回の "食べて「発見」。" では、これまでに数々の"美味しい"取材をしてきた女性ライター大石さんに、大人が満足できる厳選されたお店を教えてもらいました。

SHOP INFO
Bépocah (ベポカ)
TEL:03-6804-1377
住所:東京都渋谷区神宮前2-17-6
営業時間:[月~木]17:00~翌2:00、[金・土]17:00~翌5:00
定休日:日曜日、月曜日(月一回)
席数:44席
HP:http://www.bepocah.com

男性誌の編集・ライターという仕事上、”モテる店””女性が喜ぶ店”というものを年中探しています。プライベートで気になる店を訪れては、男性の気分になって「お、ここは使える」とデート展開を妄想したり……。そんななかで今回”デートにいい店”という依頼をいただき、まず一番はじめに思い浮かんだのが、この外苑前のペルー料理店「ベポカ」でした。撮影後の試食時に、カメラマンの福本さん(35歳・独身♂)が、「いや〜、実用的。プライベートでもまた来たい」と噛みしめるように言っていたのが印象的。ここは、大人の恋愛にとってリアルな店かと思います。

ここのところ、デートの定番となっているのは、バルやビストロではないかと。ふたりで1万5000円以下で美味しい食事とワインが呑めてなんとなくお洒落。もちろんそれもいいけれど、同じ金額でぐっと個性とエンタメ性が出るのがこの「ベポカ」です。なんせペルー料理というわけで、国からして遥か遠く、異文化を感じまくれる一夜となります。ポイントは、この店がほどよくコンテンポラリーでスタイリッシュであること。そんな新たなペルー料理は3年くらい前から世界中でトレンドとなっており、それを東京で体験できるのはここだけです。

まず、鮮やかなイエローの外観がテンションを上げてくれるし、ここまで派手なら彼女が道に迷うこともない。ペルーから持ってきたという外灯が異国情緒をさらに高め、いざ大きなドアを開けると吹き抜けのウェイティングスペースがあり、この天井の高さやファンがかなり格好いいんです。さらに床のペルー産タイル、真っ赤な壁、紫のソファ、それらを締めるダークブラウンの床と、色彩のコーディネートが実に巧み。陽気な色合いだからリラックスできて、かつ適度なフォーマルさもある。スタイリッシュでいて敷居が高くないという、なんとも絶妙な塩梅です。

そんな自由な空気感だから、女性はSEXYめにドレスアップしてもはまるし、男性はそんな彼女や店の華やかさとバランスをとり、白シャツやネイビーシャツ×グレースラックス、なんてシンプルなスタイリングが丁度いいかも。ちなみにそんな広い店じゃないのに、トイレはしっかり男女別になっていて、センスの良さってこういうところにも出るんだろうな、と。

代表の西村さん以外のスタッフはみなペルー人で、サービスもシンプルながら快適(以前、東京が大雪の日にこの店で食事をしタクシー難民となった時、男性スタッフが逞しくさり気なく、雪のなか遠くまでタクシーを拾いに行ってくれたことがありました)。そんなわけで、たまにスタイリッシュな店にあるドヤ感はいっさいありません。

店は1階バーカウンター、1階ボックス席、2階テーブル席からなり、デートでおすすめなのは1階ボックス席の奥のテーブル。2階は天井が低いせいかガヤガヤしていて、その賑わいに負けて相手に冗談を聞き直されてしまう、なんて恐れもあるけれど、ここなら落ち着いて話をすることができます。さらに魅力的なのは、ガラス窓を隔ててキッチンがすぐ横にあるので、まるでシェフズテーブルのようになっていること。ペルー人のシェフや、バーテンダーに囲まれ、トリップ感もいっそう上がります。

とりあえずの一杯をペルー流に頼むなら”ピスコサワー”(¥1,000)を。ピスコとはブドウを蒸留させてつくったペルーの代表的なお酒で、かつてペルー人がワインづくりを禁じられた時に代わりにつくったものだとか。”ピスコサワー”はこのピスコにたっぷりのレモン果汁と卵白、ガムシロップを混ぜたカクテルで、くいっといけるわりにはアルコール度数もあるので景気がつきます。このあと彼女がワインを呑めるなら、ペルー産の赤ワインをボトル(¥3,800〜)で入れてしまうのがいい流れ。

そしていよいよディナーですが、ここの料理は美味しいだけでなく面白い! 今まで見たことも食べたこともない美食のオンパレードで、ひと皿ごとに大きなリアクションをもらえるでしょう。はずせないのは、セビチェ、カウサ、それにキヌアを使った料理。どれもペルーの郷土料理だけれど、「ベポカ」ではモダンなアレンジを少し加え、見た目もユニークで洒落ています。今年は春に現地ペルーでトップシェフの料理を食べ歩いたけれど、正直、ひけをとらない満足感。

セビチェとは、レモンと唐辛子が効いた魚介のマリネで、”3種類のお楽しみセビチェ” (¥2,100)で食べ比べをするのが楽しい。右からロコト(赤唐辛子)クリームのセビチェ、アヒ・アマリヨ(黄色唐辛子)のセビチェ、セビチェトラディショナル。ロコトクリームが一番辛く、これはくせになる刺激! 魚は季節の白身魚を使用し、この日はヒラメ。セビチェにはペルーのとうもろこし”チョクロ”が添えられ、もっちりとした食感にとうもろこしの概念が覆されます。

カウサはライムと唐辛子で風味づけしたマッシュポテトのこと。一見デザートのような可愛らしい見た目で、女性ウケは間違いないです。こちらは”紫のカウサ 魚のエスカベーチェ添え”(¥1,500)で、エスカベーチェとは南蛮漬け。酸味が効いた魚がポテトの甘みを引き出してくれます。

そしてキヌアとは南米原産の穀物で、いま美と健康をつくると欧米で注目されているスーパーフード。カルシウムや鉄分、食物繊維が豊富で、必須アミノ酸のすべてをバランスよく含んでいます。また、人気となっている一番の理由は、女性ホルモンと似た働きをするフェトエストロゲンを含んでいるから。”食べてきれいになれる”うえに、プチプチと歯ごたえがよく食後感が軽いのも女性にとって嬉しいこと。写真は”キアヌの煮込みと旬の魚の鉄板焼き”(¥2,400)。クミンの風味のついたキヌアをソースのようにマグロの鉄板焼きにのせ食べれば、天国の味わい!

そうして食事が終わってみれば、次々に新しい体験をした満足感でハッピーなムードに。ただ美味しいだけでなく、こんな風に視覚・味覚で好奇心を刺激してくれる店なら、相手が退屈することはないはず。そんなお店をセレクトすることが、エスコート上手への近道かもしれません。

タコのシーフードソース鉄板焼き

オリーブとトマト入りのまろやかなマッシュポテトが添えられている。ピスコサワーはアペとして飲むのもいいけれど、案外こんなお料理と合わせるのもあり。(¥1,600)

ロコト(赤)唐辛子の豚肉のアドボ詰め

これはペルー南部の都市、アレキパの名物料理。辛みを抜いたピーマンのように大きな唐辛子のなかに、レーズンをアクセントにした豚肉の煮込みが入っている。(¥1,500)

ルクマアイスクリーム

ルクマはペルー特産のフルーツで、現状日本でフレッシュなものを食べることはできない。そんなルクマの冷凍をアイスクリームに使用。栗やカボチャにも似たこっくりとした甘さがある。(¥800)

PROFILE
大石 智子

編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。『GQ JAPAN』『東京カレンダー』『LEON』『メンズクラブ』など男性誌を中心に活動。趣味は海外のホテル&レストランリサーチ。

世界中のソーセージ、すべて自家製にて一網打尽。

自然派ワイン中華、夏の愉しみ方


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