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\n\n\n\nUNSUNG NEW YORKERS
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\nIt is a node of vast series of networks and can function as a place to jump start a creative idea.
\nニューヨークは広大なネットワークの中心点。クリエイティブなアイディアにエンジンをかける場所として機能する。
MJカセルダンとは、このコラムにも以前登場したジョン・サントスが主宰するリトリートで知り合った。会場となった寺院で、「サウンドバス」をパフォーマンスするためにやってきたMJと仲良くなったのは、サラダを作るという共同作業をしたからだ。いまどき珍しく、まったく衣類に気を遣わないタイプらしく、企業のロゴが入ったパーカを着て、どちらかといえばくだらないダジャレを連発しながら、ものすごく凝ったサラダを作っていた。
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\n寺院で行われたサウンドバスの様子
\n過去数年の間に、アートギャラリーなどで行われる「サウンド・インスタレーション」やヨガや瞑想の世界のなかに存在する「サウンドバス」に触れる機会がぐんと増えた。どこかで収集された音響をデジタル化し、閉ざされた空間で楽しむ。いわゆる「音楽」を楽しむのとはまた違う体験が瞑想やサウンドセラピーの哲学と結びついて、様々な形に昇華している。
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\n予め取り込んだデジタル音を箱状の「楽器」を通して流す。
\nボストンの音楽学校に在籍中に、おもちゃなどの電子回路を改造して新しい音を作り出す「サーキット・ベンディング」と出会い、そのメカニズムに夢中になって、中退して電子工学に転向した。卒業後、電子回路をつなぐ知育玩具のブランド<リトルビッツ>に勤める一方で、サウンドアート、瞑想、仏教といった分野の知識を深めていき、最終的には<リトルビッツ>を使ってサウンド・インスタレーションを行うようになった。これが今のMJ流サウンドバスの前身だ。
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\nデジタル音に流木のすだれの音を組み合わせる。
\n「いろんな説明の仕方がある。自分のことをサウンドアーティストだというときもあるし、現代アートをやっているということもできる。音響彫刻という言葉を使うこともある。でも重要なのは、僕MJという存在ではなくて、普段の生活から離れた場所にいき、体を横たえて音響に浸る体験をする場所がある、ということなんだ。」
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\n<リトルビッツ>を使った電子回路のつまったボックス
\n<リトルビッツ>の仕事が一段落したときに、貯金でアジアに長期で旅行に出ようとしていた。旅に出る直前に、非営利のアート団体からサウンドアートで参加しないかと誘いを受けて、急遽ニューヨークに残ることを決めたという経緯があった。アジアでの放浪の夢は捨てていないけれど、今は、サウンドバスの行方を見守ろうと思っている。
\n「ニューヨークは広大なネットワークの中心点。クリエイティブなアイディアにエンジンをかける場所として機能することもできる。そしてそのアイディアを不特定多数の他人と共有することができる」
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Navigator
佐久間 裕美子
ニューヨーク在住ライター。1973年生まれ。東京育ち。慶應大学卒業後、イェール大学で修士号を取得。1998年からニューヨーク在住。出版社、通信社などを経て2003年に独立。政治家(アル・ゴア副大統領、ショーペン元スウェーデン首相)、作家(カズオ・イシグロ、ポール・オースター)、デザイナー(川久保玲、トム・フォード)、アーティスト(草間彌生、ジェフ・クーンズ、杉本博司)など、幅広いジャンルにわたり多数の著名人・クリエーターにインタビュー。著書に「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、翻訳書に「世界を動かすプレゼン力」(NHK出版)、「テロリストの息子」(朝日出版社)。
\nこういうことができるのは、ニューヨークだから。
\n\n\nこの街は自分という人間を永遠に変えた。
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