ある2つの世代で評価やイメージが全く異なるモノや人物が存在している。

最近の例でいうと元WBAJr.フライ級チャンピオンの具志堅用高氏。同タイトルを13度防衛し、国民栄誉賞に輝くなど、我々世代にとっては紛れもないヒーローであり、他の元世界チャンピオンとは別格の扱いをすべきであると考える人は少なくない。彼が多くの外国人ボクサーをノックアウトしたシーンは、今でもしっかりと脳裏に残っている。

一方で現代の若い世代にとって具志堅用高という存在は、バラエティー番組に頻繁に登場する面白いおじさんという評価で、元ボクサーということは知っていても、世界チャンピオンであったことや、その偉業を知らないものも多い。

最近ティンバーランドのイエローヌバックブーツのデビュー40周年のレセプション会場で20代のファッション業界の若者と話していると、このモデルのことを当初ヒップホップマーケットをターゲットに開発されたと信じこんでいたのには驚いた。

このモデルは当然ながらアウトドアシーンで最高のパフォーマンスを発揮するために開発された編み上げブーツ。頑強さを追求したスペックを結集したモデルは数多くのアウトドアマンやワーカーから愛されたが、撥水性に優れ、耐久性の高いヌバックアッパーは履くほどにいい感じで汚れ、それもまたいい味となった。

逆にいうと、残念ながら昨年休刊したクールトランスでライターをしていた当時、突如イエローヌバックブーツや同社のフィールドブーツがヒップホップシーンにおけるフットウェアのメインストリームに躍り出たときの方が、我々世代は驚いたものである。

このレセプションにはイエローヌバックブーツと様々なブランドとのコラボレーションがディスプレイされていたが、それを見たときにこのモデルの多面性というか多様性のようなものを感じた。

オリジナルスペックこそしっかりと継承するが、時代に合わせてカラーリングやマテリアルは柔軟に対応する。だからこそ一つの時代しか知らない世代には、イエローヌバックブーツの起源がヒップホップシーンにあると誤解してしまうのかもしれない。

今後もこのモデルは時代に合わせて変化し、息の長いモデルとして継続展開されるだろう。そしていつの時代も新鮮さを失わないはずだ。

ちなみにかくいう筆者も90年代初頭に購入し、フィルソンのアウトドアウェアなどとコーディネートしていたイエローヌバックブーツを押し入れから引っ張りだし、オーバーサイズのザ・ノースフェイスのアウターと組み合わせて着ていたこともあった。恥ずかしくも懐かしい思い出である。