Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。
サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...
Reading the leading shoes
深夜のTVから淡々とした口調のナレーションで聞こえてきたのは「野生動物のしなやかなステップ…」というフレーズ。これはプーマが今春発表して話題となっているモビアムというランニングカテゴリーで採用されたテクノロジーのコマーシャルである。着地時と蹴り出し時でシューズの形状が変化するというコンセプトは動物の身体の動きをモチーフに、東京在住のアメリカ人デザイナーのレイモンド・ホラチェック氏がデザインした。彼とは旧知の仲であり、実際にこのテクノロジーを搭載したモビアムランナーエリートは、個人的には最近履いたランニングシューズでトップ3に入る高いパフォーマンス性能を有しているシューズだと思う。
実はこのシューズ以外にも動物をデザインのインスピレーションやモチーフにした例は少なくない。アシックスの前身であるオニツカを創業した鬼塚喜八郎氏が食卓のタコの酢の物を見て、吸盤状のアウトソールを装備したバスケットボールシューズを開発したのは、古くからのスポーツ業界関係者には知られているストーリーだが、もっと有名なのはトップサイダーのスペリーアウトソール開発秘話かもしれない。
細かいナイフカットが入れられたトップサイダーのアウトソールをスペリーソールと呼ぶが、これはトップサイダーの創業者ポール・スペリー氏が愛犬であるコッカースパニエルのプリンスが氷上でも滑ることなく元気に走り回るのを不思議に思い、足の裏を観察したことから思いついたアイディアである。彼は熱心な船乗りで、かねてから船のデッキを歩く際にスリップの危険を感じていた。愛犬プリンスの足の肉球には溝と割れ目があり、この溝と割れ目の構造をデッキシューズのアウトソールに再現したことから、今では誰もが知っているスペリーソールが誕生したという。
トップサイダーといえばバルモラル(内羽根)デザインのキャンバスシューズも有名だが、2アイレットのレザーデッキシューズも根強い人気を誇る。といっても本格的なデッキシューズのデザインは、現代のスポーツシューズと同様にハイテクな雰囲気となっており、レザーデッキシューズの主戦場は街中やリゾート地。上品なカジュアルコーディネートにここ数シーズン引っ張りだこ状態となっており、BAND OF OUTSIDERSのようなデザイナーブランドからコラボレーションモデルがリリースされたことも記憶に新しい。
筆者が高校生や大学生だった’80年代は、トップサイダーのデッキシューズにはコールハーン(当時はコールハンと表記するのが一般的だった)というライバルがおり、どちらかいうとアッパーの皮革が硬めで水に強いトップサイダーに対し、コールハーンのほうは水染めの柔軟な皮革を使用していたので、雨の日などに履くと白いソックスに色が移染したのは懐かしい思い出である。
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南井正弘
47歳/愛知県出身/靴に詳しいフリージャーナリスト
「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日のランニングを欠かさないファンランナー。
ケースイス クラシック
スペルガ 2750