Reading the leading shoes

オールデン モディファイドラスト コードバンVチップ


Apr 2nd, 2013

Text_Masahiro Minai

1853年の浦賀へのペリー来航が、日本の開国するきっかけだとしたら、1989年10月に発売された雑誌ブルータスの「英国靴特集」が、日本に本格的なドレスシューズが根付くきっかけとなったと考える人は少なくない。それまでは英国製のドレスシューズといえばチャーチかグレンソンあたりしか知られていなかった時代に、この号のブルータスはエドワードグリーン、ジョンロブ、ポールセンスコーン、フォスター&サンズ、トリッカーズ、ヘンリーマックスウェルといった数々の英国ドレスシューズブランドを徹底的に紹介していたのである。この号の反響は凄まじく、ファッションフリークからセレクトショップのスタッフまで幅広い層の人々が、この特集に魅了されることとなった。

筆者もそんな一人。「いつかロンドンに行って自分の好きなシューズを何足か買う!」そんな願望が叶う日を夢見ていたが、雑誌発売から2年後、そのチャンスはやってくる。イングランド中部の小都市ボルトンに出張することになり、ロンドンにも2泊することとなったのである。そのときに買ったのはエドワードグリーンでUチップ、フォスター&サンズでフルブローグ、ニュー&リングウッドでスエードのハーフブローグであり、帰国して履くのが本当に楽しみだったが、実際に履いてみると足に馴染むのに時間がかかり、しばらくは快適な履き心地とは縁遠かった。スニーカーに履きなれた足には英国製の本格ドレスシューズはハードルが高かったのであるが、そんなときに出会ったのがオールデンのVチップであった。

オールデンはアメリカ東海岸のマサチューセッツ州に本拠を構えるシューズブランド。創業時のニューバランスと同じく矯正靴の製造にも定評があり、快適なシューズを作るブランドとして高い評価を得ており、あのブルックスブラザースにもシューズを納品していることでも知られていた。このVチップはアーチ部分が大きく抉れたモディファイドラストという木型を使用しており、土踏まず部分はピッタリとフィットし、指の部分はゆとりがあるのが特徴。英国靴が足慣らしに相応の期間を必要としたのに対し、このオールデンのVチップは最初に履いた日から快適な履き心地を提供してくれた。このシューズを購入した前の週にフォスター&サンズのフルブローグを履いていて、夕方になって左小指に激痛が走ったのとは対照的である。

オールデンにはバリーラスト、ヴァンラスト、ミリタリーシューズの木型を起源とする379Xラスト、映画「インディジョーンズ」でハリソン・フォードが着用したことから通称インディブーツと呼ばれるモデルに使用されたトゥルーバランスといった様々なラストがあり、様々な形状の足に対応することができるようになっている。そのうちのいくつかをトライしたが、自分の足にはモディファイドラストがジャストフィット。その履き心地の良さはスニーカーと比較しても遜色のないものであり、その快適さゆえに海外旅行にも持っていくほどであった。ちなみにロンドン出張時に購入した3足の英国靴であるが、20年という月日が経過し、いまでは自分の足の一部のようにフィットしてくれていることを付け加えておく。

NAVIGATOR
南井正弘

47歳/愛知県出身/靴に詳しいフリージャーナリスト
「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日のランニングを欠かさないファンランナー。

スペルガ 2750

ニューバランス M990


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