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クロケット&ジョーンズ チャートシー


Jan 14th, 2015

text_junki yamada
photo_kazumasa takeuchi

万能靴のスエードチャッカなら、
履くだけで足元が確実お洒落UP!

これをお読みの方なら、誰しもスエードの靴を履いた経験があるのではないでしょうか。今回は、そうした起毛革について触れてみたいと思います。

獣毛が残された革は毛皮と呼ばれますが、起毛革は、その毛を取り除いてなめされた革(皮革)の表面をサンドペーパーなどで毛羽立てる、いわゆる起毛加工が施された革の総称です。これらは押しなべて「スエード」と呼ばれがちですが、実はそれは必ずしも正しくはありません。

革は、なめらかで繊維が稠密な銀面と、その裏(肉面)を構成する床面からなります。スエードは牛革や豚革などの床面をヴェルヴェット状に起毛させた革で、裏面に銀面を残したものは「銀付きスエード」、銀面を剥ぎ取ったものは「床スエード」と呼ばれます。

スエードよりも毛足長めのラフな表情の「ベロア」もあるのですが、特に規定がないためか、スエードと明確に区別されていないようです。また、銀面を起毛させた「ヌバック」もあって、こちらは概してスエードよりも毛足が短く、その風合いは大変繊細で上品な印象。とはいえ、起毛革の主流は、やはりスエードであるのは確かです。

さて、ここでご紹介するのは、英国の名門クロケット&ジョーンズ(1879年、ノーサンプトンで創業)の定番チャッカブーツ「チャートシー」です。なぜチャッカを取り上げたのかといいますと、今でこそスムースレザー製やエンボスレザー製なども数多く出回っていますが、実は元来、スエード製が正統であるからです。

ちなみにチャッカは19世紀末頃、英国でポロ競技のアフターシューズとして誕生し、後年、洒落者としても知られたウィンザー公(エドワード8世)が好んで履いたことで広く普及したそうです。

このようなわけで、チャッカ誕生の地である英国のブランドの中から、とりわけ名がよく知られている人気モデルのひとつ「チャートシー」を選んだ次第。ご覧のとおり、何のてらいもない、まさに「これぞ英国チャッカ」と呼びたいベーシックモデルで、製法は英国靴伝統のグッドイヤー製法。

繊細で品ある風合いの上級スエードは同国の某タンナー製ですし、ほんのり膨らみを帯びた、いわゆるエッグトウも英国的ディテールといえるでしょう。また、ややボリューム感あるフォルムの木型「224」は、1960年代後半にこのモデルが登場したときから一貫して採用されてきた定番。人の足形に合うべくトウがインサイドに屈曲した、いわゆるオブリークラストで、しかも偶然ではあるのですが、甲の傾斜がやや高く、ヒールカップが小ぶりであることから、概して甲高で、かかとが小さい日本人の足にもよくフィットするのです。

ドレスカジュアルからデニムまでコーディネートの守備範囲が大変広いスエードチャッカですが、ポッテリしすぎず、シャープすぎない「チャートシー」なら、パンツの裾幅もさほど気にせずに合わせることが可能。

また、最近ではナローシルエットのモードスタイルに、あえてこの靴を合わせることで足元にほどよい“抜け感”を出すという、そんな提案をしているショップもあると聞き、「なるほど、それもイケるよなぁ」と納得したものです。

(問い合わせ先)
グリフィンインターナショナル
電話:03-5754-3561
価格:67,000円+税

Navigator
山田 純貴

55歳/東京出身/雑誌・書籍のフリー編集者・ライター。 中学時代に靴の魅力に開眼。1993年以降、靴道の伝道者として雑誌等に執筆中。著書に『靴を読む (本格靴をめぐる36のトリビア)』(世界文化社)がある。

パントフォラ・ドーロ PG72

トリッカーズ モルトン


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