Reading the leading shoes

パントフォラ・ドーロ PG72


Jan 28th, 2015

text_masahiro minai
photo_kazumasa takeuchi

他のテニスシューズと一線を画す
イタリアメイドの実力派!

筆者がスポーツシューズブランドのプロダクト担当から、フリーライターへと転身して16年ほどが経過した。最近では執筆だけでなく、今後のトレンド予測のようなコメントを求められるようになった。

「2015年のスニーカーマーケットはどうなりそうですか?」と聞かれることは多いが、その度に「レトロランニングが主役であることは今年も変わりない」と答えている。そしてこう付け加えている。「クラシックなテニスシューズがカジュアルシーンで人気となるでしょう」と。

クラシックデザインのテニスシューズで有名なのは、なんといってもアディダスのスタンスミス。あとは、かつてウィンブルドンやフォレストヒルズのネーミングで展開されていたモデルをベースにしたナイキのテニスクラシックも根強い人気をキープしている。

それに加えてボリス・ベッカーの着用モデルをプーマが復刻し、マッチというシンプルなテニスシューズをラインアップとして揃えるなど、2015年春のこのマーケットは面白くなりそうだ。そんなクラシックなテニスシューズマーケットに参戦したのは、日本では新顔だがイタリアでは著名な老舗ブランド。それがパントフォラ・ドーロだ。

パントフォラ・ドーロは、イタリア語で「黄金のスリッパ」を意味するブランド。1886年にイタリア中部のマルケ州アスコリで創業。創始者の靴職人エミディオ・ラザリーニは仕事の後にレスリングを楽しむ日々を送っていたが、当時のシューズは足にフィットせず不快だったことから、「ならば自分で作ったらいい!」とレスリングシューズを自らの手で製作。

こうして完成したシューズはピッタリ足にフィットし、レスリング仲間から続々と注文が舞い込むこととなった。この後サッカーシューズにも参入した同ブランドは、従来の硬い皮革で作られるという概念を覆し、サッカープレイヤーに比類なきボールコントロール性を提供することとなった。

パントフォラ・ドーロに魅了されたプレイヤーには、ガリンシャ(ブラジル)、ヤシン(ソ連)、クライフ(オランダ)、ファルカン(ブラジル)といった歴史的名選手の名前も含まれている。

パントフォラ・ドーロの存在を筆者が知ったのは1990年代のこと。
渋谷にあったマニアックなサッカーグッズショップで、このブランドのトレーニングシューズを見つけた。突き上げの少ない構造のアウトソールは、成長途上の少年プレイヤーの足に優しく、イタリアでは数多くのユースクラブの指定シューズになっていたという。

その後、2000年にイタリアを訪れるとフィレンツェのスポーツ店で件のトレーニングモデルと再会した。現在では、スポーツシューズ以外にも上質な素材を使用したカジュアルシューズも数多く展開している。

このテニススタイルのモデルもそのひとつで、他ブランドのどんなモデルよりも高級感にあふれている。デニムやチノパンツのようなカジュアルなボトムとのコーディネートはもちろんのこと、人気上昇中のホワイトデニム、ウールパンツのようなちょっぴりドレッシーなボトムとの相性もいいだろう。「スニーカーの安っぽい雰囲気がちょっと…」と敬遠してきたファッションフリークも納得の出来栄えだと思う。

(問い合わせ先)
カメイ・プロアクト株式会社
電話:03-6450-1515
価格:30,000円+税

Navigator
南井 正弘

1966年 愛知県西尾市生まれ/フリージャーナリスト、ランニングギア・マスター編集長 スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。

オーツカ M-5のエナメルプレーントウオックスフォード

クロケット&ジョーンズ チャートシー


FEATURED ARTICLES

Mar 2nd, 2017

ICON OF TRAD

Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。

サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...

Mar 9th, 2017

HOW TO

ジップアップ パーカ Vol.01

氷雪地帯で生活をしていたアラスカ先住民のイヌイット民族が、アザラシやトナカイなど、動物の皮革でフード付きの上着(アノラッ...

Oct 20th, 2016

HOW TO

ストライプ スーツ Vol.02

Vol.01のディテール解説に続き、Vol.02ではストライプスーツを着こなすスタイリングを提案。Vゾーンのアレンジで印象はぐっと変え...

Mar 2nd, 2016

ICON OF TRAD

Vol.39 女性がほんらい男物だったトレンチコートを着るとき

そもそも男性服であったトレンチコートは、どのようにして女性たちの間に浸透していったのだろうか?

Aug 25th, 2016

HOW TO

ネイビーブレザー Vol.01

アメリカントラディショナルファッションの代名詞ともいうべきネイビーブレザーは、日本では《紺ブレ》の愛称で親しまれている。...

Jan 12th, 2017

HOW TO

トレンチコート Vol.01

トレンチコートが生まれたのは第一次世界大戦下でのこと。イギリス軍が西部戦線での長い塹壕(=トレンチ)に耐えるために、悪天...


YOU MAY ALSO LIKE