Reading the leading shoes

マスター ロイドのバークレー


Apr 8th, 2015

text_junki yamada
photo_kazumasa takeuchi

英国靴の伝道師ロイドの靴は良心価格と、
通たちも讚(さん)を寄せる高い品質が魅力

メンズドレスシューズの基本的スタイルは、その多くが英国に由来していて、そのこともあってでしょうか、日本の靴好きには英国靴ファンが少なくありません。

もっとも明治維新以降、「高級舶来品」として輸入された英国靴は、ながらく庶民には高根の花であったはずで、戦後の高度経済成長期まで、ビジネスマンたちは英国調デザインの国産靴を履いていました。

ロイド フットウェアは“英国製の英国靴”を身近なものにしてくれた“恩人”で、靴好きの中には「自分はロイドで育った」と語る人も少なからずいます。

同店のオーナーで、ブルースシンガー&ギタリストのチャールズ豊田(名優の故チャールズ・ブロンソン似であることに由来)こと豊田茂雄さんは1951年、東京・浅草の生まれ。19歳で渡英し、旧き佳き時代の英国文化に魅了され、翌年、同国で購入した中古の家具やロレックス、靴、古着などをもとに東京・代官山にアンティークショップを開いたところ、これが大当たりし、若くして実業家として成功をおさめました。

1976年、「日本人の足形に合った英国靴を」とのコンセプトから、靴の聖地ノーサンプトンのファクトリーにオリジナルを別注。これがロイド フットウェアの始まりです。それにしても雑誌『ポパイ』が創刊され、東京・原宿にビームスが誕生し、日本のメンズファッションがようやく本格的に幕開けしたこの年に、早くも別注に取り組んでいたわけで、要は、今日多くのファッションショップが当たり前のように展開する海外別注の先駆けだったのです。

ちなみに、1982年には鞄ブランド「ロイズ ラゲッジ」もスタート。意外なことに当時、英国では伝統的な鞄づくりが消滅寸前の状態だったそうで、豊田さんは19世紀~20世紀初頭の旅行鞄のカタログなどをヒントに、現在、私たちが英国スタイルと認識するクラシカルな鞄をデザインし、それを同国の鞄工房につくらせたのです。

さらに付け加えれば、ブライドルレザーの鞄を復活させたのもロイド。と知れば、靴においても、鞄においても、素材においても同店が果たした役割が、いかに大きなものであったかが実感できることでしょう。

ところで、ロイドの靴はノーサンプトンシャーのいくつかの工場で製作されていますが、その価格に比して品質の高いことはよく知られています。これは噂ですが、各工場に対する豊田さんのクオリティコントロールがとてもシビアであるとか。それでも40年にわたって取引が続いているのは、相当の信頼関係があることの証左といえます。

さて、ここではトップグレードライン「マスター ロイド」の代表作「バークレー」を取り上げました。黒を選んだのは、このモデルに限らず、英国のドレスシューズは黒が本懐であろうとの思いからです。

パターンはメダリオンやパーフォレーションなどで飾られた内羽根式のストレートチップ、すなわちセミブローグオックスフォードで、これに捨て寸ほどほどのラウンドトウの木型も加え、なんのてらいもなく全てが純然たる英国調。これが靴好きにはたまらなかったりするのです。

ちなみに、茶でしたらジャケパンスタイルにもよく合いますが、この黒でしたら、やはり濃紺やモノトーン系の、ドレープのきいたスタイリッシュな英国調スーツに合わせたいものです。ちなみにパンツの裾は、靴の穴飾りと相性のいいダブルとし、丈はハーフクッションかワンクッションでスマートにキメてください。

(問い合わせ先)
ロイド フットウェア 青山
電話:03-3409-9335
価格:63,000円+税

Navigator
山田純貴

55歳/東京出身/雑誌・書籍のフリー編集者・ライター。 中学時代に靴の魅力に開眼。1993年以降、靴道の伝道者として雑誌等に執筆中。著書に『靴を読む (本格靴をめぐる36のトリビア)』(世界文化社)がある。

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