Reading the leading shoes

ワールド フットウェア ギャラリーのスエードプレーントウ


May 13th, 2015

text_junki yamada
photo_kazumasa takeuchi

細身&九分丈パンツにVフロントを組み合わせれば、
簡単にお洒落通の小粋な足元が演出できます!

今回は、「Vフロントシューズ(略してVフロント)」を紹介します。靴を真正面から、あるいは真上から見た際、外羽根(アッパーの上から縫合されたアイレット付きの革パーツのこと)の前部分のカッティングがVの字形(真正面からは逆V字形)であることからこう呼ばれるVフロントシューズは、その外羽根が小ぶりで、他のレース付き短靴が4~6アイレットなのに対し、2~3アイレットしかありません(稀に1アイレットも!)。

しかも、トウや甲がキャップトウやUチップなどにデザインされたタイプも散見しますが、多くはプレーントウ。チャッカブーツ(2アイレット)やジョージブーツ(3アイレット)を短靴にしたものともいえますが、チャッカよりもドレッシーな印象で、また、普通のプレーントウ以上に通好みなデザインでもあります。

このタイプがいつ頃に出現し、いつ日本に紹介されたのかはわかりませんが、英国靴では伝統的なデザインであるようです。もっとも、ここ日本では’90年代まで見かける機会があまりなかったと記憶しています。それが今のような定番スタイルになるのは、ロングノーズがドレスシューズの世界を席巻していた’90年代の終わり頃。羽根革が小ぶりであるのに反比例し、前足部がより強調されて長く見えるとの理由から、Vフロントは注目されるようになりました。また、現在でも細身&ロングノーズの製品が多いのも、この特性によるものと考えられます。

定番スタイルになりえた理由は、これだけではありません。実はコーディネートの守備範囲が広く、使いまわしがきくことが大いに支持されているのだと思います。クラシックにもモダンにも見え、ジャケパンからデニムまでさまざまなスタイルに合い、なかにはスーツに合わせても違和感がないものさえある。飾りが少ないせいでしょうか、合わせる服の雰囲気に無理なく溶け込み、それでいて控えめながら個性的なので、履くだけで「お洒落にこだわっている」ことがさりげなく主張できる、このあんばいが絶妙です。

ということで、ここではその代表として、ワールド フットウェア ギャラリーの新作を取り上げました。現在、神宮前本店など都内3カ所で直営店を営む同社が1986年に大阪・堂島に第1号店(現在はない)を開設して以来、数々の名だたるブランドを日本に紹介してきました。自らの名を冠した最初のオリジナルモデルは南アフリカ製のグッドイヤー靴で、これを1万9800円で売り出し、ヒットに。以後、折々のトレンドに則した実用重視の製品を多数展開し、好評を博してきました。

写真のVフロントもそうしたモデルのひとつ。2アイレットの外羽根は大変小ぶりで、これに捨て寸長めのセミスクエアトウや甲薄のスマートな木型が相まって、実際以上にロングノーズに見えます。ユニークなのは、その外羽根のカッティングにアールラインが加えられ(ということはVフロントというより、Uフロントというべき?)、さらに羽根革両端に手縫いによる補強が施されている点で、結果、優美、かつ味わいある靴に仕上がっています。

ちなみに繊細な起毛が美しいアッパーはフランスの名門アノネイ社のカーフ裏面を用いて作ったカーフスエードで、そのアッパーにマッケイ製法で取り付けられた本底はレザーソール。製造国はイタリアかと思いきや、意外にもフランスというのがユニークです。

Vフロントはコーディネートの守備範囲が広いと先述しましたが、このモデルもそれは同様で、スエードながら濃紺なので週末スタイルにはもちろん、ビジカジにも全く違和感なく合うでしょう。ただし、大変シャープな佇まいですので、それに合わせてパンツは裾幅細めで、丈は九分からハーフクッション程度とし、軽やかでスポーティな足元に見せたいところです。

(問い合わせ先)
ワールド フットウェア ギャラリー 神宮前本店
電話:03-3423-2021
価格:74,000円+税

Navigator
山田純貴

55歳/東京出身/雑誌・書籍のフリー編集者・ライター。 中学時代に靴の魅力に開眼。1993年以降、靴道の伝道者として雑誌等に執筆中。著書に『靴を読む (本格靴をめぐる36のトリビア)』(世界文化社)がある。

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