Reading the leading shoes

トッズのゴンミーニ


Jul 8th, 2015

text_junki yamada
photo_kazumasa takeuchi

ドライブを快適にし、スタイルを格上げ!
ゴンミーニは一石二鳥の傑作休日靴です。

靴の比較的新しいカテゴリーに「ドライビングモカシン」があります。その名のとおり、アクセルワークを快適で安全なものにするためのドライビング用のモカシンシューズで、足当たりは優しく、反(かえ)りも軽快で、ルームシューズのようにソールが薄いなどの特徴に加え、踵(かかと)の接地が安定する工夫もなされた機能シューズです。

ドライビングシューズの事始めは、モーターレース・ブームの真っ只中にあった1963年のイタリア。厚い革底の靴では足裏にアクセル感が伝わりにくいなどの不満を抱いていた、フェラーリやアルファロメオなどの高級車を乗り回す富裕層に向け、ジャンニ・モスティル氏率いるカー・シューが専用の靴を販売したのです。もっとも、それらは一般の人々にとっては贅沢品であるうえ、さほど必要なものとも認識されなかったためか、広く普及することはありませんでした。

ところが1970年代終わり頃、同国でドライビングモカシンが街履きもできるエレガントなモードアイテムとして注目され始め、前述のカー・シューのほか、トッズやロブスといったメーカーがこの種の靴を盛んに生産・販売。日本では’80年代に入ってほどなく、ロブスのドライビングモカシンが初輸入されたのですが、イタリアとは違いさすがに時期尚早のためか、販売はふるわなかったようです。

ところでこの“ドライビング専用”から“モードアイテム”への拡張を仕掛け、牽引したのは、ほかならぬトッズでした。いまや靴のみならずウェア、バッグ、革小物、ベルト、アクセサリー、アイウェアなど多彩なアイテムを展開するラグジュアリーブランドへと成長を遂げたトッズは、1920年代から製靴業を営んできたデッラ・ヴァッレ家の三代目で現会長兼CEOのディエゴ氏が’79年に立ち上げたブランドです。

この年、同社は職人の手技で縫い上げられたモカシンのソールに、133個のラバー・ペブル(ゴム突起)をはめ込んだドライビングシューズを発売。これが今日、ドライビングモカシンを象徴する存在として知られている「ゴンミーニ」だったのです。

今回ご紹介するのは、靴史のエポックたる名靴「ゴンミーニ」から選んだカーフスエード製のラチェット(シューレース)タイプです。色はブランドカラーの「キャロット」。この色を含め、トッズの色使いは本当に素晴らしく、これもドライビングモカシンをファッションへと引き上げた原動力のひとつになったのだと思います。

しかも、素足にも優しいアンラインド(内張りのない仕立てのこと)で靴にされたカーフスエードはしなやかなうえ、起毛による階調が繊細で美しく、これが上質な革であることを証明しています。また、この靴を最も個性的なものにしているラバー・ペブルがヒールカップにせり上がり、これがアクセルワークを安定させるとともに、見た目のアクセントにも! ハンドステッチモカは味わいがあり、低く押さえ込まれたスマートなフォルムは、柔らかい革やモカシン製法、ラバー・ペブルなどと相まって「手袋のよう」と評されるとおり、しなやかに足を包み込んで、病みつきになるほどの履き心地の良さをもたらしてくれます。

さて、本格的な夏の到来間近の今日この頃、クルマで遠出をお考えの人が少なくないことでしょう。実は幅広いコーディネートが可能なゴンミーニですが、とりわけこの季節なら「リネンシャツ×七分丈のコットンパンツ」といった軽快なスタイルに合わせ、素足履きしたいものです。ちなみにレディスも多彩で、エナメル使いなどメンズ同様にバリエーション豊富なので、パートナーにもぜひお薦めしてみてください。

(問い合わせ先)
トッズ・ジャパン
電話:0120-102-578
価格:53,000円+税

Navigator
山田 純貴

55歳/東京出身/雑誌・書籍のフリー編集者・ライター。 中学時代に靴の魅力に開眼。1993年以降、靴道の伝道者として雑誌等に執筆中。著書に『靴を読む (本格靴をめぐる36のトリビア)』(世界文化社)がある。

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