Reading the leading shoes

カルザノールのエスパドリーユ


Jul 22nd, 2015

text_masahiro minai
photo_kazumasa takeuchi


センスの良さを感じさせる
伝統的なスリップオンシューズ

2014年9月13日、フランスのメドックマラソンに参加してきた。この大会は給水所ならぬ給ワイン所が20か所以上あり、ランナーはマラソンと同時にボルドーワインを堪能することができるという人気の大会だ。日本人にはかなり奇抜に思われるこの大会、実は開催第30回を迎えた、歴史のあるロードレースなのである。昨年は気温が30度を超えるという悪条件だったが、高級ワイン、ステーキ、牡蠣etc…を楽しみ無事にゴール。本当にいい経験が出来たと思う。

レースは土曜日に開催されたので、翌日曜日に「買い物でもしようかな!?」と思っていたが、久しぶりのフランスで重要なことを忘れていた。日曜日はほとんどの商店が休みなのである。オープンしているのはH&Mや日本でいえばヨドバシカメラにあたるフナックくらい。ある程度ショッピングもしないと街歩きも楽しくない。「失敗したなぁ」と思い月曜日に日本へ帰国しようとするが、空港の様子がおかしい。エールフランスの便がことごとく欠航になっているのだ。

カウンターの女性に詰め寄ると「ストライキのためにボルドーからパリに行く便はありません」とのこと。必然的にこの日の帰国は不可能。翌日以降に別の航空会社に特別に振り替えてもらい成田を目指すことになった。というわけで計らずしてボルドーの街でショッピングを楽しむことができることに。

ワインが有名なおかげでボルドーという地名は日本人の間でも有名だが、実際に観光に訪れる人はあまり多くないようで、「地球の歩き方」フランス版でこの街に割かれているのは数ページ。かつてイギリスに統治されていたこともあって、街並みのところどころにUKっぽさを感じさせる。郊外の巨大ショッピングモールを訪問したり、市街地のブティックを覗いたりと、ボルドーの街を楽しんだが、やはり百貨店チェックは欠かせない。パリに本店のあるフランス屈指の有名デパートであるギャラリー・ラファイエットのメンズ館で当地のファッションをチェックした。グローバル化が進み、ここボルドーでも他国と類似したブランドやアイテムが目立ったが、いくつかの独自性を発見することができた。

そのひとつが、豊富なカラーバリエーションのエスパドリーユが大量にストックされていたこと。キャンバスなどの布帛アッパーに、ジュートでソールのサイド部分を巻いた、この伝統的な履物が現在もフランスで根強い人気をキープしていたのである。日本でもエスパドリーユはここ数シーズン人気で着用している人をチラホラ見かけるが、あくまで流行アイテムの域を出ない。一方でフランスにおけるエスパドリーユは永遠の定番といった趣で、日常生活に欠かせない存在となっている気がした。

ちなみにエスパドリーユというのはフランスにおける名称で、昔、スペイン人の知り合いに「エスパドリーユってスペインでも人気あるよね!?」と聞いたところ、彼は「スペインではアルパルガータっていって、発祥はフランスじゃなくてスペインだと思うよ。世界的に有名にしたのはフランスの功績だけど…」と複雑な表情だった。

いずれにしろスペインのバスク地方からフランス西部にまたがる地域を発祥とする伝統的な靴が、世界的に流行しているのは面白い現象である。リゾートを感じさせる上質なトップス&ボトムスに組み合わせることで、一般的なキャンバスシューズにはない洗練された雰囲気を演出することができるだろう。

CALZANOR/スエードエスパドリーユ
価格:12,900円+税

お問合せ/NYオンライン カスタマーサービス
電話:0120-10-3299

Navigator
南井 正弘

1966年 愛知県西尾市生まれ/フリージャーナリスト、ランニングギア・マスター編集長 スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。

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