ベーシックな編み上げデザインはドレッシーな着こなしにもマッチ!
ドイツ人は足の健康に強い関心をもつ民族です。国内のいたる所にフットケアサロンがあったり、足のケアやマサージ、靴選びのガイドなどを行うフスフレーガー(フットケア技術者)の公的資格制度が設けられていたり…。靴についてもコンフォートは大前提で、古くからオーソペディックシューズ(整形外科に基づいて作られた靴)も盛んに製作されてきた歴史があり、こうした姿勢は、同じくコンフォートシューズ先進国のアメリカ以上に徹底されている印象さえあります。
ご紹介のハインリッヒ・ディンケルアッカー(ブランド名は創業者の名に由来)は、そんなドイツ靴の伝統を継承するブランドです。1879年の創業以来、オーソペディックシューズなどを生産。1960年代に経営は創業家から離れたものの、ブランド名は、それまでに培われた技術などとともにハンガリーの首都ブダペストの郊外にある工場に委譲され、現在、30名ほどの職人たちによって、年8000足という少量生産のハンドメイドシューズが作り続けられています。と聞けば「それなら、もうハンガリーのブランドでは?」と思われましょうが、ドイツ南西部の古都ビーティッヒハイム=ビッシンゲン市に本社が置かれ、ドイツ人によって営まれているので、依然、ドイツブランドなのです。
では、代表的定番はといえば、誕生から60年以上にわたりベストセラーを続けるハンドソーンウェルテッド製法の「リオ」ではないでしょうか? とりわけフルブローグのダービータイプ(「リオ」にはプレーントウタイプなども存在)は、そのラギッド、かつ威風堂々たる姿がとても魅力的で、それゆえに日本でも大変人気があります。
写真は、その「リオ」のコードバン×トリプルソールバージョン。独ワインハイマーレーダー社のカーフなど他の素材が使われたバージョンもありますが、コチラはあの米ホーウィン社のコードバン製。しかも色はディンケルアッカー特注の、深みあるネイビーです。また、本底にドイツの名門ジョーレンデンバッハ社の堅牢なオークバークレザーが使われたトリプルソールは、なんと厚さ1.5cm! そもそもダブルソールはカントリーブーツなどにしばしば採用されますが、トリプルは大変珍しいのです。
木型「リオ」も大変無骨で、これがまた、靴全体の佇まいをいっそう堂々たるものに。この木型もそうなのですが、トウや甲が高く、トウ&サイドのウォールが垂直に屹立したフォルムは、俗にブダペストスタイル(ディンケルアッカーの工房がある街!)と呼ばれ、ドイツのビルケンシュトックやハンガリーのヴォーシュなどドイツ、および東欧の靴にしばしば見ることができます。しかも、いずれもがトウが内側に屈曲した、いわゆるインサイドストレート&アウトサイドカーブの形状で、これは人の足形などから編み出されたコンフォートラストのひとつの証し。当然、木型「リオ」も同様であり、このことからもディンケルアッカーは正しくドイツのブランドであるといえるのです。
それにしてもこの分厚いソールですから、さぞ硬い履き心地であろうと想像するのは無理もないこと。そこで愛用者に聞いてみたところ、階段の昇り降りでは重さを感じるものの、歩き心地は一般的な革底靴と変わることはないとのこと。しかも反(かえ)りもよく、足裏が硬くて痛くなるようなことはなく、「聞いた話だけど、インソールにスポンジが入っているとかで、それでフワッとした感じがある」とも。ただ、履き口が高めゆえにくるぶしに当たることがあるので、その場合は中敷きを足したほうがいいとのアドバイスもありました。
まるで重戦車のようなゴツイ姿の「リオ」ですが、意外にもコーディネートの守備範囲が広いのも人気の理由のようです。パンツの裾幅や丈を選ばず、スーツからジャケパンまでビジネススタイル全般をカバー。さらにチノやデニムなどとも相性がいいので、週末靴としても活躍してくれるのです。
価格:145,000円+税
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株式会社アイダス
電話:06-6245-5076