活躍の場を砂漠から街へと変えて愛され続けるロングセラー!
以前、このコラムでも紹介したが、1992年10月のロンドン訪問の際に、エドワードグリーンやフォスター&サンズなどの高級紳士靴を何足か購入したことがあった。それはスニーカーだけでなく、ドレスシューズにも興味を持つ大きなキッカケであった。
実はこのとき、高価格帯ではないもののイギリスを代表する、あるシューズブランドの靴も購入しようとしていた。それがクラークスのデザートブーツである。
このプロダクトは、クラークス社四代目のネイサン・クラークが、カイロのバザールで造られたライニングも貼られていない素朴なつくりで、スエードアッパーのショート丈ブーツを参考に開発したと言われている。シンプルな構造ながら砂漠での使用にも耐えうる機能性の高さは、その名の由来にもなっていて、街での長時間の歩行にもピッタリだった。また、そのベーシックなデザインはトラッドスタイルやアメリカンカジュアルに合うだけでなく、ブラックのスムースレザーバージョンなどはモード系のファッションとも相性がよかった。
当時、日本ではこのデザートブーツを始め、ワラビーなどカジュアルテイストあふれるショートブーツが人気だった。今となっては、その内外価格差は狭まったが、そのときは、ロンドンの方が日本国内よりも断然安く買うことができた。
そして、当地のクラークスを取り扱う3店ほどのショーウィンドウを観察したときに、あることに気付いた。それはロンドンにおいて、クラークスの主力アイテムはデザートブーツやワラビーではなく、独自のクッションシステムを内蔵したウォーキングシューズというかコンフォートシューズだったのだ。
そんな中、デザートブーツを多色で取り揃えている店を見つけて、「ダークブラウンのデザートブーツのUK6.5はありますか?」と尋ねると、初老の店主は「うちにはそんな甘いブーツはないよ!」と笑いながら言った。どうやら自分の発音ではdesert(砂漠)ではなく、dessert(お菓子などのデザート)に聞こえたようだった。
結局そのショップに在庫はなく、ロンドン滞在中にデザートブーツを購入することは出来なかったのだが、その半年後に日本で手に入れたとき、ロンドンでの一件が頭に浮かび、そのショップで一人思い出し笑いをしたのだった。
(問い合わせ先)
クラークスジャパン
電話:03-5847-7273
価格:19,800円+税