Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。
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HOW TO
イギリス海軍の艦上用コートとして、水兵や船員が着用したピーコート。海上での厳しい寒さや、強い風を凌ぐことができる実用的なアイテムとして作られた。風向きに合わせて左右どちらの襟も上前にできるダブルブレストを筆頭に、幅広のノッチドラペル、ハンドウォーマー・ポケット、碇をあしらったボタン、バックシルエットのセンターベントなどが特徴。基本色はネイビーブルー。船員が船のブリッジで見張り用に着用していたことから、別名「ウォッチ・コート」「ブリッジ・コート」とも呼ばれる。1850年代までにアメリカとイギリスで一般的になった。
ITEM TIPS
1.Material
フェルトのような肌触りのメルトン生地
メルトンとは、織り上げた毛織物を仕上げる際に縮絨(織り目を密にすること)し、表面を毛羽で完全に覆った生地を指す。布合いが厚く、手触りはやや硬めだが、撥水性が高く、丈夫で保温性に優れる。海軍用のミリタリーアウターやスタジャンに使用されることも多い。
2.Buttons
小さい装飾具に刻まれたアイテムの起源
ピーコートのボタンは、ファウルアンカーとも呼ばれるからみ碇がモチーフとなっており、英国の司令官ハワード・エフィンガム卿の紋章として知られる。海軍や水兵の着用アイテムとして広く認知されてきたこともあり、オーセンティックな作りのピーコートには碇マークのボタンが採用されることが多い。
3. Collar
TPOに合わせて使い分ける大きな襟
リーファーカラーとは、ダブルブレストのコートやジャケットに見られる幅広のダブル襟のこと。ダブルの打ち合わせで、風向きによって左右どちらを上にしても着ることが可能。ボタンでラペルを閉じて、襟の開きを小さくすることで、首元までしっかり覆うことができ、風が入る隙間を狭めることができる。
4. Top Stitch
機能性と意匠を兼ね備えたステッチ
構造上厚いメルトン生地を縫い重ねる必要があるピーコート。襟の大きさや時代ごとにステッチ幅は微妙に変化するが、襟の大きいリーファーカラーであれば、約1cm幅が基本。あえてステッチを入れないクリーンでミニマムなデザインもあるが、スタンダードはステッチ仕上げ。ユニオンメイドのような堅牢性とデザイン性を兼ね備え、カジュアルな印象を醸し出してくれる。
5. Pockets
海軍で着られていた頃の名残が残る、縦ポケット
縦に切り込みを入れて、手を入れやすい向きに作られたポケットは、暖を取りやすくする効果もあることから、ハンドウォーマー・ポケットと呼ばれる。ハンドウォーマーとは「手や手首を暖めるもの」の意。ポケットの周囲をレザーで補強し、耐久性を高めたタイプもある。
6. Double Breasted
よりフォーマルな着こなしにまとまるダブルブレスト
ダブルブレストとは、ジャケットやコートの前身頃が広く、前合わせのボタンが2列並ぶもの。大きく分けて8つボタン4つ掛けのものと、6つボタン3つ掛けのものがあるが、現在よく見かけるものの大半は後者。ボタンが1列に並ぶシングルブレストに比べると、よりフォーマルな印象になる。
ダッフルコート Vol.01
チェスターコート Vol.02