FASHION & CINEMA

ファッションと映画とニューヨーク Vol.3


Aug 12th, 2015

Illust & text_michika ishikawa
edit_rhino inc.

いつの時代も、ファッションのヒントがつまった映画の世界。ニューヨーカーマガジンでは「ファッションと映画とニューヨーク」をテーマに、イラストレーター・エッセイスト、石川三千花さんによるシネマコラムをお届け。Vol.03の今回は、ニューヨークを舞台に魅力的な“モテ男”が登場する2作品『恋人まで1%』('15)、『バニラ・スカイ』('01)の見どころを、主人公たちのスタイルから探ります。

眠らない街ニューヨークでは、恋も仕事も目一杯楽しむのが流儀だ。まして独身となれば、仕事に燃えつつ恋愛も自由に楽しみたいと思うもの。ヤングニューヨーカーの今のファッションにも注目だ。


01『恋人まで1%』

ニューヨークで働く今どきのアラサー男女の、リアルな恋愛事情に迫ったラブコメディー。乗ってる若手俳優が着こなすカジュアルなリアルクローズは、現在進行形の若者のニューヨークファッションそのものだ。

独身を謳歌するジェイソンは、魅力的なエリーに本気モードになってしまうが、男友だちと「シングル同盟」を結んだ手前、彼女との関係がこじれていく。ザック・エフロンの、カジュアルなコーディネイトがうまい!

ミュウミュウのモデルも務めるエリー役のイモージェン・プーツの、スモーキーなアイメイクにボーイッシュな小物使いや、フェイクファーにレーススカートなど、相反するものをミックスするテクはさすがだ。


02『バニラ・スカイ』

富豪でプレイボーイのデヴィッドは、ある日、ソフィアに一目惚れしてしまう。だが、彼のセックスフレンドのジュリーの嫉妬で思わぬ悲惨な展開に。ちょっと怖いキャメロン・ディアスのハイファッションに注目。

デヴィッドは自分の誕生日のパーティでソフィアに会うなり惹かれていく。一方、ジュリーはパーティに招待もされていず、真っ赤なドレスでおしゃれするも、彼にストーカー扱いされてしまうのだ。

作中のキャメロンはモデルで、スタイルもセンスも抜群なのに、デヴィッドはちょっとダサめのソフィアに夢中だ。素材の良い高級服をシンプルにさらりと着こなすキャメロンだが、彼女の嫉妬心は病的で怖い。

今回取り上げた作品は、ニューヨークの独身男性が、結婚するまでは自由な恋愛を楽しみたいと願い、その結果、つき合った女性も自分も傷ついてしまう、という共通のシチュエーションがある。セックスをしたら、恋人として特別な関係をきちんと築きたい女性にとっては、身勝手過ぎる働き盛りのイケメンたち。でも、彼らは、やっぱりモテるだけあってカッコいい。『恋人まで1%』では、ザック・エフロンや本年のオスカー3部門受賞で話題の『セッション』に主演したマイルズ・テラーや、均整のとれたガタイが魅力のマイケル・B・ジョーダンの「シングル同盟」が見せるカジュアルなメンズファッションは見所のひとつだ。

『バニラ・スカイ』のトム・クルーズはフェラーリを乗り回す若きエリートで、アッパーなニューヨーカーを体現してみせるが、後半、物語はどんどんミステリアスになる。トムが恋するペネロペ・クルスと、恋の駆け引きをするシーンの甘さとは裏腹に、ファッショナブルなキャメロン・ディアスが不幸のどん底にあって狂気を見せるシーンの怖さに注目。

いずれにしても、ニューヨークでは恋愛をするにもタフな精神力が必要だということが、映画からもびんびんに伝わってくるのだった。


INFORMATION

『恋人まで1%』
監督・脚本:トム・ゴーミカン
出演:ザック・エフロン、イモージェン・プーツ、マイケル・テラー、マイケル・B・ジョーダン
配給:アット エンタテインメント
配給協力:武蔵野エンタテインメント
製作:アメリカ/2014年/94分/ヴィスタ/ドルビーSRD/カラー/英語
9月19日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
© 2013 AWOD Productions, LLC. All Rights Reserved
『バニラ・スカイ』
製作・監督・脚本:キャメロン・クロウ
出演:トム・クルーズ、ペネロペ・クルス、カート・ラッセル、ジェイソン・リー、キャメロン・ディアス
スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD] 発売中 1,429円+税
パラマウント ジャパン
TM & Copyright© by 2002 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

PROFILE
石川三千花

イラストレーター、エッセイスト。映画やファッションについて独自の視点からのイラスト&文章が好評。著書に『石川三千花の勝手にオスカー』(集英社)他。

Vol.4『マイ・インターン』(’15)、『ある愛の詩』(’70)

ファッションと映画とニューヨーク Vol.2


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