冷たい透明な空気に、白い息がふわりと舞って消える。
遠くからの強い日差しが水蒸気に反射してキラキラ光る。
冬の風景は本当に美しいから、すぐに外に出て、そのまばゆい日差しを浴びに駆け出したくなる。
でも、冬はとても寒い。
僕は寒いのは苦手なので、美しい風景は窓の外に、自分はこたつで丸くなる派だ。
それでも、冬は家の中も寒い。
暖房をつけても、当たっていない箇所が寒い。
それでは、身体の中から温めるとよい。何かないかな……
というわけで、冷えた身体を中から温める、酒入り珈琲をつくろう。
酒入り珈琲とは、名前の通り珈琲に酒を混ぜ入れた物。
入れる酒の種類で、名前も味も変わるから、意外にたくさんの種類が存在する。
アイリッシュ・コーヒーという名前は耳にすることが多いと思うけれど、これは「アイルランドの」ウイスキーを入れたものだけを指す。
今回はちょうど手元にあったスコットランドはアイラ島のウイスキー「ラフロイグ10y」を入れるので、名前は「ゲーリック・コーヒー」に変わる。厳密にいうと。
まず、珈琲を淹れる。豆は入れる酒の味によって変えるのがいいけど、基本的には中深煎りぐらいの物がいいだろう。
東京渋谷千駄ケ谷「パウルコーヒー」のブレンドを使用。
それから、角砂糖をひとつ投入。
酒に甘味が有る場合は砂糖が無くてもいいような気もするが、珈琲とスコッチウイスキーだけの物は、けっこうキツい。
砂糖が溶けたらウイスキー約30ccを加えて軽く混ぜたら完成。
生クリームを乗せるのが本流だけど、個人的に好みでないのと、家庭でつくるのはなかなか面倒なので、今回は省く。
実飲。ラフロイグ独特のピートの薫りと、中深煎り珈琲の薫りが相まって、なかなか濃厚で刺激的なお味。
生クリームが無い分、砂糖をもう少し入れてもよかったかもしれない。
しかし、本当にすぐに身体の中から温まる。さすがは寒い地域の飲み物である。
外に出るのが億劫な冬の午後に、こたつで丸まってゲーリック・コーヒーでほろ酔い。
なんとも贅沢で美しい冬の過ごし方ではないか。
今月の一杯【パウルコーヒーのモカ・イルガチェフェ】
本文のゲーリック・コーヒーにも使用した千駄ヶ谷「パウル」の、こちらは浅めにローストされたエチオピア・モカ。
薫りと酸味を殺さないよう丁寧に芯までしっかりローストされた、まろやかで優しい味わい。
長年、静かに焙煎を続けている店主の人となりまで伝わるような、安定感ある一杯である。