尾崎雄飛の珈琲天国

パーティーを抜けだそう(で、珈琲を淹れよう)


Dec 24th, 2014

text_yuhi ozaki
photo_masahiro arimoto

師走はあっという間に駆け抜け、すでに年末。早いものだ。
年末ともなると、家族や友人たちと集まって忘年会、クリスマス会と銘打ってホームパーティーなんかをする機会も増えるのではないだろうか。
お酒をたくさん飲んで、七面鳥とかをたらふく食べて、宴もたけなわ持ち寄ったケーキを食べようよという流れになれば、サッと美味しいコーヒーを淹れて、ケーキが切られるのに合わせて出すのがスマートだ。

もちろん、読者諸兄はこんなタイミングでもコーヒーの質について妥協はしたくないだろう。
では美味しい珈琲をサッと大量に淹れるには?

今回は「ケメックス」のドリッパーを使用した方法をおすすめしたい。

この科学の実験器具のような珈琲ドリッパーは1940年代生まれ。
アメリカの科学者ピーター・シュラムボーム博士によって考案されたらしい。
博士がふだん実験用の漏斗と三角フラスコを使って珈琲を淹れていたことから着想を得て、漏斗と三角フラスコを一体にしたデザインなのだという。

無機質なガラスのフォルムと、ウエスト部分の木のパーツ(写真は70年代の物でプラスチック製)を革紐で結んだ有機的な意匠とが絡み合った美しいその見た目は、
MoMA(ニューヨーク近代美術館)やスミソニアン博物館の永久展示品に指定されているほど、インテリアとしても優秀な一品である。

ケメックス・ドリッパーは、その形状から抽出速度が早く、大量の湯量に対応したサイズがあるので、大人数の時に便利だ。
アメリカ出身らしくやや大味になりやすい短所もあるが、いい豆を挽きたてで使えば不味いということにはならない。

まずはコーヒー豆を大量に挽こう。
今回は6〜8人用のケメックス・ドリッパーを使用するので、豆も人数×10gぐらいを目安にして。
けっこうな量になるので、手挽きミルの場合はゲストに手伝ってもらってもいいかもしれない…(なかなか手が疲れる)。

ケメックス・ドリッパーには専用フィルターが売っているが、手に入りにくく高いのでコーノやハリオの円すいフィルターで代用してもいい。
まずはフィルターに入った大量の豆が浸るぐらいお湯を注いで25〜30秒ほど蒸らす。
ここで漂ういい香りに、ゲストが「あ!珈琲淹れてくれているの??」なんて喜んでくれるだろう。

蒸らし終えたら、ゲストの注目を浴びつつ湯をドリップしていこう。
大量の豆に大量の湯の場合はケメックス・ドリッパーといえど抽出がやや遅くなる。
抽出時間が長くなり過ぎると雑味が出やすいので、いつもより早めに注ぐことを心がけ、3分ぐらいですべてのお湯を落とすのが大量の珈琲を作るコツだ。

珈琲が出来上がったら、揃いのカップ・アンド・ソーサーでも不揃いなマグカップでもいいので、賑やかな雰囲気のカップに注いでみんなで飲もう。
パーティーの主役はあくまでゲストと美味しいお酒と料理。
でも、脇役にも手を抜かないパーティーは、きっとゲストに喜んでもらえるはずである。
ケメックス・ドリッパーで楽に美味しくコーヒーを淹れ、ホストも楽しめる素敵なパーティーで年末を締めくくってほしい。

今月の一杯【加藤珈琲店のキリマンジャロ・キボー】

僕の地元名古屋が誇る自家焙煎の名店によるタンザニア豆。ここんちの焙煎は深煎りでもスッキリしていて、浅煎りでもコクがある絶妙の焼き加減。
このキリマンジャロは、酸味も程よくまろやかな味わいで、パーティーで飲み過ぎた翌朝の一杯にもピッタリ。
通販でも手に入るが、名古屋に行った際にはぜひここのモーニング・セットを味わってほしい。

PROFILE
尾崎 雄飛

2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。

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