尾崎雄飛の珈琲天国

スタイリッシュ化するニューヨークの珈琲屋


Sep 24th, 2015

text_yuhi ozaki

実に2年ぶりにニューヨークへ来た。街を歩けば、クールなドレッド・ヘアの黒人男が最新のウエアを着て車道を駆け抜ける。背中の大きく開いたドレスを揺らして、推定70歳以上の女がパーティーに向かう。いつ来てもスタイリッシュな街である。

僕はといえば、いつのまにか4店舗に増えたラ・コロンベの行列にいた。物事のクオリティに敏感なこの街の人々は、並んで待つことを嫌がらない。ニューヨークにおける珈琲屋の人気を確認・点検していると、珈琲屋の内装や雰囲気が以前と少し変わっていることに気がついた。

5〜6年前、この手の珈琲屋ができ始めた頃は、いかにも「焙煎所」然と焙煎機が店頭に鎮座し、生豆の袋が雑然と置いてあるような骨太な店が多く、お洒落で居心地よく、落ち着けるという感じではなかった。

有名なスタンプタウン・コーヒーも、焙煎機こそ別にあったが、内装は珈琲の道具だけ。「目的は珈琲」というストイックな感じを受けた。そのスタンプタウンもマンハッタンに2店舗目ができたというので、寄ってみた。なるほど、ここでも同じ違和感が。広く設定された座席スペース、木目と真鍮を基調に少しアール・デコをミックスしたモダンな内装。個人的にすごく好きな感じではある。

たしかに顧客のために居心地のいい店にするのはとてもいいことだろうが、顧客に寄り添うあまりにただの「カフェ」化してしまい、珈琲の質は落として物販に執心するなどという、先人がつまずいた惰性の轍を踏まないで欲しいと願う。

熱狂的な珈琲好きとしては、見てくれより味を追求してよと思うが、ひとまずはスタイリッシュなこの街の珈琲屋の、時代への答を眺めていようか。

今月の一杯
【チャンピオン・コーヒーのドリップブレンド】

ミートパッキングエリアに最近出来た珈琲スタンドの、ドリップ向けブレンド。すっきりベリー系の酸味と、最後に鼻を抜けるバニラの風味に対して、ボディはミディアムのしっかりしたコクのブレンドである。酸味一辺倒の傾向から少し変わってきているのかもしれない。

PROFILE
尾崎 雄飛

2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。

ア・フィルム・アバウト・コーヒー

珈琲について聞いてみた「ベアポンド・エスプレッソ田中勝幸さん」編


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