尾崎雄飛の珈琲天国

Vol.11 野外でのキャッキャウフフと珈琲と


Jul 23rd, 2014

text_yuhi ozaki
photo_masahiro arimoto

夏だ、サマーだ!
すっかり夏空の今日この頃。
海へ、山へ、レジャーがはかどる季節がやってきた。

シンプルな僕の夏のレジャーといえば、野外バーベキューをするぐらいのもので、毎年何回か海か山へ出かけて、気軽な外での食事を楽しむ。

僕の場合、「バーベキュー」といっても特に本格的な用意をして臨むでもなく、ごく一般的な感じで、肉を焼いてワーワー言って、締めに焼きそばをつくってキャッキャウフフできればよい、という程度なので、コンロさえも持っていかずに現地で借りて済ますことも多々ある。
僕は何ごとによらず合理的な人間なのだ。

ごく一般的なバーベキューでも、焼きそばの後には珈琲が飲みたくなるものだ。
読者諸兄のような珈琲好きならばもちろん、野外でだって美味しい珈琲を飲みたいところだ。

とはいえ、野外バーベキューというのは、シンプルにしても火の番や準備、片付け、キャッキャウフフな遊びなど、思いのほか忙しく時間が過ぎるもの。
ゆっくり珈琲を挽いて、ドリップして……という余裕があればいいけれど、そうもいかない場合もあるだろう。

そこで今回は、野外で時間と手間をかけずに合理的に美味しい珈琲を飲む方法を紹介したい。

まずは、少し変わったドリッパー「クレバーコーヒードリッパー」を使ったつくり方。

ドリッパーにセットしたペーパーフィルターが湿る程度にお湯を注ぎ、紙の匂いを落としてからお湯を捨てる。
中挽き程度に挽いた適量の珈琲豆を入れ、まずは豆が浸るぐらいにお湯を注ぐ。
一旦フタを閉め、1分程蒸らしたら、今度は全量(珈琲豆に対しての適量)のお湯を一気に注ぐ。

さらに3分程待ったら、フタを開け、スプーンや棒などで上に浮いた粉を沈めるようにかき混ぜる。

ドリッパーをサーバー(今回は水筒)の上に乗せると、下フタが開いて、珈琲が落ちてくる仕組みになっている。

これで、出来上がり。
基本的にお湯を注いで待つだけの簡単な方法なので、他の作業をしながらでも珈琲をつくり易い。

お味の方は、フレンチプレス同様の浸水方式による深いコクや強い香りに加え、ペーパードリップのスッキリ感も伴って、ややワイルドだがなかなかの美味である。


もうひとつ、さらに楽々な方法が「パーコレーター」を使った方法だ。

一見するとただのヤカンのような器具だが、内側には何やらメッシュの皿と、その芯にアルミ管が通っている。

フタを開け、メッシュ皿とアルミ管を一旦はずして、ヤカン部分に水、メッシュ皿に中〜粗挽きの珈琲豆をセットする。
熱して沸き上がったお湯の圧力で珈琲を抽出するという仕組みなので、水の量が少ないとしっかり沸き上がらない場合があるので注意だ。

フタを閉めて直接コンロにかけて、ぐつぐつ沸騰させ続けて待つこと10〜12分。
これだけ。

次第に珈琲のいい香りが立ち上ってくるので、抽出されているのが分かる。
中を覗いても珈琲が出ているかどうかは分からないので、カップに少し注いで、色や味を確かめよう。

しっかり珈琲の味がしたら、完成。 本当に簡単である。

この器具はフランスで開発され、主にアメリカで愛用されてきているとのこと。
さすがはアメリカ人、道具もファッションの着こなしも合理的につくり出す人々である。

ただし、この抽出方法は沸き上がったお湯がアルミ管を昇ってメッシュ皿の珈琲を抽出したあと、再びヤカン部分に戻って沸き上がり、を繰り返すという構造上、抽出された珈琲が過剰に熱され続けてしまい、できた珈琲は酸味が強く香りの薄いものになる。

味もアメリカン、というわけだ。

今回紹介した抽出方法は、あくまで「時間と手間をかけない」方法であるので、当然の事ながら自宅でゆっくり入れる珈琲の美味には敵いようもないものである。

しかし、煎りたてのおいしい珈琲豆を使用すれば、充分なクオリティの本格珈琲ができる方法である。少なくとも、インスタント珈琲をお湯に溶かすよりは。

それに、なんといっても野外での主役はバーベキューであり、キャッキャウフフだ。

珈琲にかける時間はほどほどに、レジャーを、この短い夏を、存分に楽しみたいものである。


今月の一杯【MMC GIO オーガニックカフェ】

珈琲が好き!でもそれ以上にレジャーが大好き過ぎて、お湯を沸かす時間も勿体ない!と言う貴方にはこちらをオススメしたい。

オーガニック珈琲豆を100%使用し、香料も人工甘味料も使用していないという、缶コーヒー界の良心。独自の香黒炭(コークス)焙煎法で芯まで煎った豆のコクと、北海道産生乳のハーモニーが他との一線を画す、マジメな缶コーヒーである。


PROFILE
尾崎 雄飛

2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。

ポートランドとシアトルと珈琲と珈琲

伝説の喫茶店・本とのコト


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