尾崎雄飛の珈琲天国

Vol.09 愛す珈琲・その弐


May 21st, 2014

text_yuhi ozaki
photo_masahiro arimoto

大型連休も明け、いよいよ恵みの雨の季節。食べ物がおいしくなるのはいいけれど、じめじめして、体感的には嫌〜な季節の到来だ。そんな梅雨時をサラッと爽やかに乗り切るべく、またしても愛す珈琲の話を続けたい。

今回は、スタンダードなアイス珈琲の淹れ方。ケメックスを使ってオシャレに淹れよう。

①まず、ケメックスの適量の印のところ(出っぱっている)まで、氷を入れる。躊躇なく沢山入れて大丈夫。

②深煎りの珈琲豆をいつもの倍(写真のサーバーは5~6人用880mlなので70~80gの細挽き豆)ぐらい用意する。氷で半分程度に薄める事になるわけなので。

③いつものようにドリップ。豆が多くて細挽きなので、少し抽出時間が長くなるけど気にしない。むしろ、気楽にゆっくり淹れよう。

④適量の印あたりまで入ったら、ドリップやめ。
 冷たくなるまでかき混ぜて、出来上がり。
 深い苦みと爽やかな酸味が出ているはず。
 夏にはこの味!って思える味だ。
 
さて、基本が身に付いたところで、少し正道から外れて、今回は「甘い甘い愛す珈琲」のオススメをしよう。

前回も少し触れたが、珈琲豆の本質的な味を知るためには、ホットのブラック珈琲を飲む。邪魔な味の無い状態にするわけだ。しかし、冷たい珈琲は、あえて苦みを強く出すので、甘味がとてもよく合う。エスプレッソと同じ理屈で。

まず、アイス珈琲に甘味と言ったら誰もが思い浮かべる、ガムシロップ。

この『中日本氷糖株式会社N』の「アイスコーヒー用ガムシロップ」は、ただのガムシロップではない。 珈琲に合わせるため、香ばしい薫りのカラメルを加えた良品。ただのガムシロップとはひと味もふた味も違う、アイス珈琲のためのシロップなのだ。 せっかく美味しい珈琲を淹れたのだから、やっぱり混ぜる物にもこだわりたい。 珈琲の苦みに、程よく薫るカラメルと優しい甘みが、さながら真夏の恋人たちの様に絡まり互いを慈しみ合う……というのは言い過ぎだ。単純に、うまい。

続いては、「はじめから甘くまろやかな愛す珈琲」のご紹介。

東京渋谷千駄ケ谷『パーチ・メイド』の「コーヒーシロップ」は、子供時代に学校給食、近所のスーパー、はたまた湯上がりの銭湯なんかで飲んだ、懐かしの「珈琲牛乳」をシンプルで本格的な原料で再現しようという物。
オシャレなボトルがすでに美味しそう!

作り方はとっても簡単。

氷を入れたグラスにシロップを4分の1ほど注ぎ…

更に、ゆっくりと牛乳を加えれば出来上がり。
シロップが底に溜まってできる、コーヒー・ブラウンのグラデーションがステキだ。
こちらは甘味に黒糖を使っていて、これまた香ばしくキリッとした甘さと牛乳のまろやかさが相俟って、さながら真夏の独り身の男が銭湯で出会った快活そうな女性のような……というのは妄想だ……。甘くて、うまい。

普段、なんとなく「暑いから」で頼んでしまうアイス珈琲にも、様々な味わい方がある。
たかが飲み物、されど珈琲。これから続く、長い暑い日々を、深く飽くなき「愛す珈琲」の追求で楽しく涼しく過ごしてほしい。


今月の一杯【ライフ北参道のブレンド珈琲】

こちらも東京渋谷千駄ケ谷のカフェ「ライフ北参道」の「ホットでもアイスでも、牛乳を足しても美味しい」という味を追求したブレンド珈琲。グアテマラ産の豆とエチオピアモカ豆を丁寧にブレンドした、上品だけど味わい深くバランスのいい珈琲を、もちろん「愛す」でシロップを混ぜて。


PROFILE
尾崎 雄飛

2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。

伝説の喫茶店・本とのコト

愛す珈琲・その壱


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