Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。
サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...
尾崎雄飛の珈琲天国
三寒四温どころか五寒二温ぐらいの桜も戸惑う春を超えて、衣替えもできぬまま、新緑まぶしい初夏になってしまった。初夏ともなれば、いよいよ暖かい日が続く。汗ばむ季節に珈琲のお話をするならば、やっぱり冷たい珈琲の話になるだろう。
よく、珈琲好きは夏でもホット珈琲を飲む、なんて事を言われるのだけど、これは事実。やはりいい豆が手に入った時などは、真夏でもホットのストレート(ブラック)で飲む。それが一番、その豆の味を感じられるからだ。
かといって、アイス珈琲は邪道だ、などとは思わない。 トラッドな装いでは、基本はウールのテーラード・ジャケットにトラウザーズ(スラックス)を履く。しかし、リネンのジャケットにマドラス・ショーツが邪道かというと、そんなわけは無いのだ。 然るべき時期に然るべき快適な物を、然るべき品質で、というのは服も食も同じ事なのだと思う。
では、然るべき時期の然るべき品質のアイス珈琲とは? ということで、今回は「意外と簡単!水出し珈琲」をご紹介しよう。
そもそも、水出し珈琲という物を飲んだ事が無いという人も多いのではないだろうか。その名の通り(通常、珈琲は湯で淹れるが)水に浸して抽出する珈琲である。水に長時間浸す事で、珈琲の香りを液中に閉じ込め、独特の甘みと柔らかい苦みの珈琲ができるという、独特且つ珈琲初心者にも飲み易い代物だ。
作り方はいたって簡単。まずは水出し用のサーバーを手に入れよう。いろいろなメーカーから発売されているようだけど、どれも1000円前後で手に入ると思う。ウチは〈ハリオ〉の「水出しコーヒーポット」を使っている。
まず、このサーバー内側のメッシュ部分に豆を入れる。基本的には深煎りの豆が望ましい。浅煎りの豆は酸味が雑味になり易いので。でも、煎りたての新鮮な豆ならば、酸味が嫌な感じにならず、むしろ爽やかに感じられるだろう。
挽き方は細挽きでなくてもいいらしい。お好みで。今回は、青山骨董通りに彗星の如く開店した、パリのロースター「COUTUME(クチューム)」の、コロンビア豆、中煎り中挽きを使用した。
余談だが、クチュームでは、大きな実験器具の様な器械を使う「ダッチ式」の水出し珈琲を出していて、これもすごく、美味い。
いっぱいまで豆を入れたら内側のラインまでドリップする要領で水を入れ、冷蔵庫で寝かせること5〜8時間。それ以上に寝かせすぎると、キリッとした味わいが鈍ってしまうので、この辺りで豆の入ったメッシュ部分を抜く様にしたい。豆を抜いてしまえば、低温抽出の強みで、2〜3日は冷蔵保存で美味しく飲むことができる。
一晩置いての実飲は、なんというか、感慨深いものだ。ちょっとしたドキドキ感。これも水出し珈琲の醍醐味かもしれない。 ひとくち飲んでみると、思わず「えっ!?」と漏らしてしまう程、珈琲のいい薫りが鼻を抜け、酸味の爽風が口中を駆け周り、甘くまろやかな、本当に丸い苦みが舌の奥を刺激する。
ホットで飲む珈琲とも、氷で冷やすアイスコーヒーとも違う、独特の愛す珈琲が、ただ待つだけでできてしまうのだ。
ただ豆と水を入れて置いておくだけで、これだけ美味い独特の珈琲ができるなら、夏の暑い間、毎日冷蔵庫に常備しておきたい物である。きっと、真夏の日のオアシスになるだろう。
今月の一杯 【トリバコーヒーのドリップバッグ】
4月26日、銀座7丁目にオープンした、「ブティック・コーヒー・ロースター」トリバコーヒー。あくまで焙煎所として、豆を買う店であるが、超絶プロフェッショナルのスタッフが豆選びから試飲まで対応してくれる。 なんと僕こと尾崎雄飛が、ここのユニフォームデザインをさせてもらっているのである(!)このドリップバッグは、超高級豆をふんだんに絡めた玄人のブレンドコーヒー。 薫りよく、コクとしっかりした苦みがあって、スッキリとした後味が美味だ。
PROFILE
尾崎 雄飛
2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。
愛す珈琲・その弐
胸騒ぎの珈琲北米三都物語