尾崎雄飛の珈琲天国

Vol.03 ニューヨークの朝は早い。


Nov 20th, 2013

text_yuhi ozaki

海外ではたいてい、時差の関係で不本意に早起きをして、途方にくれてしまうけれど、ここでは心配ない。珈琲屋が開いているのだ。ニューヨークの人々は、いったい何時から働くのか? というぐらいに、朝が早い。だから、スターバックスなんかは5時半頃から開いているぐらいで、お店の方もニューヨーカーに合わせて、とても早起きだ。

珈琲馬鹿の僕は、時差ボケを逆手にとって、この早朝の「珈琲天国」をおおいに楽しんでいる。マンハッタンは狭い街だから、うまい珈琲を求め、朝の散歩も兼ねて、様々なエリアの珈琲屋に足を運ぶことができる。
 
はたして、うまい珈琲を飲んでいると、そこに集まるニューヨーカーたちが、エリアによって少しずつタイプが違うらしいことに気づく。ノリータの「Gimme! Coffee」は、近所に住んでいるらしい、犬を連れた人なんかが多い。ソーホーやノリータというのは、アート系の裕福な人々が住んでいると聞くが、その服装はリラックスしつつも上品で、チェックのシャツにスリムなジーンズ、デッキ・モカシンなど。ここの珈琲は、ゆっくり飲む深煎りの珈琲だ。

エース・ホテルに併設の「Stumptown Coffee」は、オシャレな宿泊客で賑わうイメージだが、実はオフィス街も近く、スーツの人も多い。やはりここに来る人のスーツは都会的で仕立てがよく、靴や鞄にもこだわりが見られる。フレンチプレスで淹れる浅煎りの珈琲は、仕事前にピッタリだ。

トライベッカの「La Colombe」では、フリーランス風情の若者が、ラップトップを睨みながら朝食をとっている。ツイードのジャケットにニットキャップ、リジッドのジーンズの裾をブーツにインして。エスプレッソが得意なここのカプチーノは、昼間は若者で行列ができるほどの人気だ。

このように、エリアごとに特徴のある人々のファッションは、そのエリアの風景になる。だから、僕も自然とその風景に馴染むようなファッションをして、早朝の「珈琲天国」に出かけていくことにしている。


今月の一杯 【KAKOのオリジナルブレンド】

1972年から名古屋の自家焙煎珈琲の礎を築いてきた名店「KAKO」のオリジナルブレンド。コロンビアベースで深煎りと、コクの強いこの珈琲は、ペーパーやネルドリップでしっかり落として、どっしりした旨味を味わいたい。喫茶店マナーで、ミルクを落としてもまた美味である。


PROFILE
尾崎 雄飛

2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。

珈琲の流行と傾向について。

朝、コーヒーを飲むということ


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