食べて「発見」。

世界中のソーセージ、すべて自家製にて一網打尽。


Sep 17th, 2014

text_junichi kobayashi
photo_newyorker magazine

9月も下旬といえば、暦の上ではすでに秋まっただ中。確かにまだまだ暑さは続きますが、胃袋的にもすでに秋。どうもこの時期になると肉への欲望がむくむくと鎌首をもたげるのは、もしかしたら私だけかもしれませんが、今回はソーセージの専門店をご紹介。保持するレシピは無尽蔵、世界中のソーセージをすべて自家製にて提供する「ソーセージスタイル流行」へ、出掛けましょうか。

SHOP INFO
ソーセージスタイル流行
TEL:03-5422-8467
住所:東京都渋谷区恵比寿3-48-5 グランデ恵比寿2階
営業時間:18:00~23:00(土日祝~22:30)
定休日:不定休
席数:22席
HP:http://www.hayari-sausage.com/

保持するレシピは無尽蔵!?

提供するのは世界中各国のソーセージ。どれも自ら手作りする自家製で、持っているレシピは無尽蔵。自らのレストランでは24種のソーセージの中からローテーション、毎日10種ほどを提供するというスタイルで営業を続けるシェフの名は、村上武士さん。

品書きに目を移せば、ドイツのヴァイスヴルスト、レモングラスやバイマックルの香りが効いたタイのサイウア、韓国のスンデ、パプリカの芳香が鼻をくすぐるスペインのスパニッシュチョリソ、イタリアのサルシッチャ、ミャンマーのシャン族伝統のヌーソムムー、中国の腸詰、オーストラリアのチーズ入りのクランスキー、ラム肉の美味しさが光るモロッコのメルゲーズ。オリジナルの鶏のもも肉ソーセージにはマッシュルーム、松の実、レーズンがたっぷり。

旅先で味わった「あのソーセージ」があればしめたもの

どれもこれも美味しいので、おすすめは? と問われても返答に窮してしまうのですが、敢えて言えば、かつて訪れた土地で一度は食べたことのあるソーセージを注文してみること。そのソーセージが生まれた文化的な背景にも気を配ってしっかりと作り込まれているからか、旅先で食べた「あの味」を思い出してしまうくらいの再現力に、きっと驚くこと必至です。
…それにしても、なぜソーセージ? なぜ世界中? そんな疑問は誰しも抱くはず。

ソーセージは文化を伝えるメディア!?

「そもそもソーセージは挽肉を動物の腸などのケーシング(包装材)に詰めたものを意味するんですが、あるときソーセージのことを調べていたら、動物の肉を腸詰めにするという調理法は、ドイツだけでなく世界中に存在するということを知ったんです。世界中にはいまだに味わったことがないソーセージばかり」というわけで、村上シェフによるソーセージを探求する旅が始まったのだとか。

「とにかくソーセージに無限の可能性を感じた」という村上シェフ。「美味しければ何を腸詰めにしてもアリだな」というところまで辿り着いた瞬間に、旅の速度がアップし始めました。
独学で始めたソーセージづくりですが、各国のソーセージの基本や応用方法を学ぶたびに、その奥深さにはいつも魅せられ続けているのだそう。腸詰めにするという調理法は一緒なのに、その土地の食文化ごとに乾燥させて保存するためだったり、端切れの肉を美味しく食べるためだったりと、その目的は文化ごとにさまざま。ソーセージを研究すると、その土地の食文化まで見えてくるから不思議です。ちなみに、目下のところの村上シェフの関心事はオーストラリア。なんでも、まだ日本には入ってきていないスパイスが、オーストラリアには結構存在するそうで…。

デザートも腸詰め!?

そんなこんなで、メニューには前菜やパスタなどもあり、自家製のパンなども思わずお代わりしてしまうぐらい美味しいのですが、当然ながらソーセージ押し感はハンパない。…ソーセージだけでは飽きてしまうのではないか? なんて声も聞こえて来そうですが、心配はご無用。どのソ−セージも肉の種類や部位が様々で、口当たりも味わいも香りも驚くほど多彩。ソーセージ自体がひとつの料理として完成しているので、飽きるどころか全メニューを制覇したくなってしまいます。

なかでも独創的なのが、デザートソーセージです。プリンや茶碗蒸しから発想したというキャラメルナッツソーセージは、プディングの生地を腸詰にして加熱し、砂糖をまぶしてキャラメリゼしたオリジナル。香ばしいパリパリの皮の中にミルキーな生地がとろり。無限に広がるソーセージの魅力が存分に楽しめます。

新刊のレシピ本も!

あ、そうそう。もしもご自身でソーセージづくりに挑戦したいなんて野望が首をもたげたら、47のレシピが収録された村上シェフの著書『シャルキュティエのソーセージレシピ』がおすすめです。実は、さらに新作レシピ9品と展開料理が5品追加された増強版が2014年10月に発売予定とか。

ソーセージ3種盛り (¥2,050)

左から、ドイツのチューリンゲン地方の郷土ソーセージ「チューリンガー」。超あらびきの豚肉&背脂にローズマリーなどのハーブの香りをまとわせた、イタリアの「サルシッチャ」。そして最後は、レモングラスやコブミカンの葉で爽やかな香りを付けた、タイの激辛ソーセージ「サイウア」。それぞれの味わいや香りはもちろん異なりますが、ハーブやスパイスが利いているという意味で、共通点を発見できたりも。添えられた自家製のザウアークラウトも美味なり。

ソーセージ3種盛り (¥2,460)

左から、子羊(ラム)肉にクミンやコリアンダーを利かせたエキゾチックな芳香がやみつきになる、北アフリカの「メルゲーズ」。中央は、椎茸やしめじ、ときには松茸を入れることもあるという「茸のソーセージ」。秋限定のオリジナルです。そのお隣はご存じ「ブーダンノワール(+410円)」。豚の血液と香味野菜を生クリームでまとめた優しくて深い味わいがワインを呼びます。添えられたレンズ豆の煮込みと、フレゴーラ(伊サルデーニャの郷土パスタ)でフランスのビストロ風に楽しめます。

パスタメヒカーナ (¥1,320)

シアントロ(パクチー)と、トマティーヨ(緑色の食用ほおずき)、そしてほうれん草を豚ひき肉と合わせたメキシコのソーセージ「チョリソベルデ」が主役のパスタ。ハラペーニョとハバネロオイルの爽快な辛味が、盛り付けにも使われたシアントロとの相性をさらに上げてくれます。

キャラメルナッツソーセージ (¥730)

「とにかく(ソーセージに)無限の可能性を感じている」という村上さんが、肉を使わずにオリジナルで生み出したデザートソーセージ。小麦粉や卵などによる生地に、ナッツの小気味よい食感が加わったその味わいの完成度の高さから、ドイツの新聞も取材に訪れたほどだとか。

PROFILE
小林 淳一

編集者。東京メトロ駅構内で配布するフリーマガジン『metro min.』、食材のカルチャー誌『旬がまるごと』などの編集長を経て、主に食の分野で編集者として活躍。お酒を呑んで東北を応援するイベント「DRINK 4 TOHOKU」(http://www.drink4tohoku.com/)を開催している。

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