食べて「発見」。

女同士の週末ランチは、少しのお洒落と奮発を


Feb 4th, 2015

text_tomoko oishi
photo_kazuhiro fukumoto

30歳を過ぎてから、女友達との食事の単価が少し上がったなと実感します。前は、恋愛的な事件がある度に、近場のバーに即日集合!ということが多かったですが、なんだか最近は数週間前に本当に食べたい店を予約する、なんてことが主流に。特に週末のランチなどは、いい店のコース料理もお得に試せて、穏やかで美味しい時間を過ごせるもの。ときには定番のガールズトークはお休みして、食への好奇心を満たす女子会もオツ! そんなシーンにお薦めするのが、この「ジャンジョルジュ トウキョウ」です。

SHOP INFO
JEAN-GEORGES TOKYO
ジャンジョルジュ トウキョウ
TEL:03-5412-7115
住所:港区六本木6-12-4
営業時間:11:00〜15:00(LO14:30)/17:00〜24:00(LO22:00)
定休日:なし
席数:34席
HP:http://www.jean-georges-tokyo.jp/

六本木ヒルズのけやき坂に昨夏オープンした「ジャンジョルジュ トウキョウ」は、ニューヨークの3つ星シェフ、ジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリスティンが手がける日本初のレストラン。この東京店も、ミシュランガイド2015でさっそく1つ星を獲得しています。そう聞くと、“高級”“洗練”というイメージが先行するかもしれませんが、一度店に入ってみると、意外な楽しみ方が広がります。

まず驚くのが、フレンチにしてまるで割烹のようなカウンターを備えていること。それも、席のほうが若干の高さがあるので、シェフたちの仕事が手にとるように見えるのが面白い。“あ、いま仕上げているのは次に自分のテーブルにくる料理かな…”と、お酒を飲みながら期待を膨らませる時間もたまりません。

白とベージュで基調された店内に大理石のカウンター、そして高い天井と、女性同士であっても、お洒落とメイクに抜かりなく行きたい大人仕様の内装。またライブ感溢れるオープンキッチンに加え、日中は裁ち落としの窓から光がふんだんに入り、リラックスできるのもこのレストランのいいところ。

おすすめの席はやっぱりカウンターです。4人が座れるカウンターは列をずらし3つあるので、隣のカウンターの存在がそんなに気になりません。3〜4人のグループであっても、カウンターを指定する人も多いとか。外国人のお客も多く、カウンターがすべて外国人でうまったこともあるそう。

夜のコースは¥18,000〜ですが、ランチのプリフィックスは4皿+パン、食後にコーヒーor紅茶がつき¥4,800とかなりお得! ひと皿ごとのポーションも比較的大きいので、充足感もたっぷりです。

プリフィックス1皿めのうちのひとつ、“本マグロのタルタル仕立て”。これは夜のメニューのなかでもトップの人気を誇る料理のランチバージョン。マグロの下にはアボカドの粗いペースト、ソースは醤油、生姜、シャンパンビネガーからなるもの。卓上にはお箸も置いてあり、気がねなくつまめる一品です。

プリフィックス2皿めのうちのひとつ、“スパイスをまぶしたアイナメ スウィート&サワーソース”。皮目にナッツ(アーモンド&ヘーゼルナッツ)と白ごま、スパイスをまぶし、カリッと鉄板で焼き上げられています。きのこの出汁と醤油、ブラウンバターの効いたソースは、見た目や聞こえよりも重くはありません。

ひと皿につき1杯ワインかシャンパンを飲んだとして、私の場合、この辺りからちょっと調子が出てきちゃいますね。ホロ酔いで料理のライブを眺めて、気分が上がってきます。そう思っている人がカウンター席に何人かいるから、13時を過ぎたあたりから、店のテンションも自然と高くなります。

プリフィックス3皿めうちのひとつ、“乳のみ花悠豚のコンフィ”。子豚を半頭そのままコンフィにしてからほぐし、それを皮の上に積み、重しをしてもう一度焼き上げたもの。豚はゼラチン質が多いので、ほぐしたとはいえ密度は高く、サイズのわりに食べ応えは満点。パリッと焼かれた皮目と肉、ときおり感じる軟骨、それに生姜と玉ねぎのピューレのバランスが絶妙です!

デザートの“温かいJGチョコレートケーキ キャラメルアイスクリーム”。とろっと温かいチョコレートケーキとアイスの温度差が、頭にほどよい刺激を与えます。紅茶、もしくは食後酒をいただいたら、もうこのまま隣の「グランド ハイアット 東京」で寝てしまいた気分に……。一緒に行く相手が男性で、まだ彼氏じゃない場合、自然光の下で酔ってる姿を見せるのもハードルが高いですし、3時ころに「で、どっしよか?」と間延びするのも怖い。ヒルズで映画を観ても爆睡してしまう恐れもあるので、個人的には週末のランチコースは気軽に女友達と行きたいところです。

そんなこんなで、以上がプリフィックスの1名分の内容の一例。お気づきかもしれませんが、ジャン-ジョルジュの料理は、アジアの味とフレンチの技法を組み合わせているのが特徴のひとつ。それはジャン-ジョルジュ自身が、タイ、シンガポールなどアジア各国での生活が長かったことが理由でもあります。彼の料理に常に欠かせないのは、生姜、柑橘、唐辛子。いわゆるフュージョンの先駆者なのです。

 

そしてもうひとつの特徴は、食材の数を増やしすぎず、基本はシンプル。組み合わせの妙で魅せるということ。それは、東京店のシェフ、米澤文雄氏にも受け継がれています。米澤氏がそのポリシーを例をあげて教えてくれました。

「例えば付け合わせにしても、ジャン-ジョルジュは、ひと口ずつ色んな野菜があるのとかは嫌いなんです。それは見た目にはきれいかもしれないけれど、意味のないことも多く、何を食べたかは記憶に残らないことも。そうではなくて、例えばメインの豚のコンフィには色違いの3種のビーツのみを並べています。ここにスナップエンドウなんかがあってもいいかもしれないけれど、それはのせない。このお皿で意図するのは、豚とビーツを生姜の味で食べてほしいということだけだからです。その目的をはたすために、素材に合わせ、ソースとドレッシング、2種類の生姜の味をつくりました。ジャン-ジョルジュの料理は、食べて欲しいものがいつも明確なんです」

米澤文雄シェフは、東京のイタリアンで経験を積んだ後渡米。日本食レストランで働きつつ、スタジエとして各レストランを周ったそう。そのなかで“シェフが厳しく、働いている人たちの志が一番高い”と感じたジャンジョルジュに惹かれ、6年間厨房に立つことに。最後の2年はスー・シェフを務めていました。そんな米澤シェフと、カウンターごしに会話をできるのもこの店の醍醐味です。

ランチといっても、せっかくなので、アラカルトで“エッグキャビア”(¥4,800)を試すのもあり。これは「ジャンジョルジュ トウキョウ」のシグネチャーディッシュです。ランチコースと同じ値段ではあるけれど、この一品とシャンパンの組み合わせは、この上ない自分へのご褒美になります。ひと口食べて、ひと口飲めば、思わず後ろにのけ反る感じです。女子会もいいけど、デートでならふたりで卵ひとつをシェアしてみたい気も! う〜ん、やっぱりデートで行きたい店なのでしょうか……。いや、どちらにも対応するってことで!

近況報告的な女子会には、2階のテーブル席をどうぞ。でも、2〜3人で行くなら、やっぱカウンターを薦めます。

PROFILE
大石 智子

編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。『GQ JAPAN』『東京カレンダー』『LEON』『メンズクラブ』など男性誌を中心に活動。趣味は海外のホテル&レストランリサーチ。

春は昼酒。後ろめたさも味のうち。

「真冬のうなぎ」がとまらない。


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