食べて「発見」。

この夏を楽しくする、ニッポンのクラフトビール


Jun 17th, 2015

text_tomoko oishi
photo_kazuhiro fukumoto

大人になってよかったと思うのは、仕事終わりのビールが最高に美味しいこと。それも、一日きつかった日や頑張ったときほどたまらない味になる。生き返りますよね。年がら年中美味しいわけですが、やっぱり夏の一杯はとりわけ魅力的! そんなわけで今回はおすすめのビア処をご紹介。いま、クラフトビールが大ブームですが、この秋葉原の店は、居心地の良さからいって一番好きかもしれません。

SHOP INFO
HITACHINO BREWING LAB.
常陸野ブルーイング・ラボ
TEL:03-3254-3434
住所:千代田区神田須田町1-25-4 マーチエキュート神田万世橋 N1区画
営業時間:11:00〜23:00(日祝〜21:00)
定休日:不定休
席数:テーブル15席/スタンディング20席
HP:http://hitachino.cc/brewing-lab/

いま、びっくりするほどクラフトビールがブームですね。ここ2〜3年でお店が増えて、特にこの1年でいい店が急増しました。シャンパンが一般的になって、ハイボールが流行って、人は常に何かしら新しい泡を求めているんだな、と感じます。

「う、旨い!」と、快感のあまり眉間にシワをよせ言ってしまうようなビールはいくつかあります。いきなり他店から褒めますが、代官山「スプリングバレーブルワリー」の“496”、神宮前「スミス」の“SMITH IPA”、白金台「I|R セカンドハウス」のアサヒスーパードライ(注ぎが違う!)、新宿「ベクタービアファクトリー」で飲んだ“COEDO 鞠花”、美味しかったですねー。いまでも初めて飲んだときの衝撃をクリアに思い出せます。ちなみにはじめの3つはその店でしか飲めない一杯。

そう素晴らしいものがいろいろあるなかで、なぜ今回こちらの店を選んだかといえば、ビールの美味しさはもちろん、ロケーションや内装が一番いいと思ったから。

場所は赤レンガのアーチが続く神田・万世橋のたもと。JRさんが明治の遺構である赤レンガをそのまま活かしつくった商業施設「マーチエキュート神田万世橋」なるものがありまして、その端、万世橋に一番近いところにこの「常陸野ブルーイング・ラボ」はあります。というわけで、歴史のある場所のなかに入る店の雰囲気はひと味もふた味も違う。お洒落なだけではなかなか勝てないんです。

店からは、神田川、万世橋、そしてその向こうに秋葉原の電気街、交通標識などが見え、その今昔のコントラストが面白い。外国人が見たら、“So exotic!!”とか言いますね、これは。私もそう思います。

夜になるとこんな感じ(ここだけ私撮影)。店のどの席からもこの景色は見えますが、やっぱり夏は川添いのテラス席がいいです。特に一席しかないソファ席ならよりリラックスできます。鉄道の音がすぐ近くに聞こえるのがまたいい。

さて、ようやく肝心のビールについて。「常陸野ブルーイング・ラボ」はその名のとおり常陸野ネストビールの直営店。都内初出店で、常時10種類のビールをドラフトで飲むことができます。常陸野ネストといえば酒造り190年の木内酒造による、日本が世界に誇るクラフトビール。2002年にホワイトエールがビールの世界大会でチャンピオンになって以来各国に波及。特にアメリカでの人気が高く、なんと300以上の店舗が常陸野ネストを置いているとか。

喉カラカラでお店に行くと、注がれるビールが聖水に見えてきます…。そうして飲むひと口めの旨いこと! この日一番はじめに飲んだのは例のホワイトエール(¥680)。ビールを喉に通すと、お腹まで冷たい液体が流れるのを感じ、口のなかでは数秒ごとに新たな風味がわきあがります。身も心も潤されますね。

ビールはオール¥680でキャッシュオン形式。PASMOで買えるのも嬉しい! 左から、常陸野ネストラガー、リアルジンジャーエール、ホワイトエール、アンバイ、レッドライスエール。ラインナップは日替わり。この日はなかったヴァイツェンも相当な美味しさです。一杯めにはやはりホワイトエールかヴァイツェンあたりでしょうか。

ここでは、ビールに合う料理をお酒のカップにつめて提供。レジの前でデリのようにメニューを選べます。料理はすべて常陸野で瓶詰めされ、すぐに直送されているそう。密封されて旨味がとじ込められるのか、どれもいいお味です。無添加で素朴な感じ。特にお気に入りは酒粕クラッカーにのせて食べるリエット。シンプルでいてコクがあり、何回食べても飽きません。

左から、ベーコンと粗挽きソーセージのシュークルート(¥650)、常陸野ふくれみかん風味のオリーブ(¥550)、豚のリエット(¥550)、酒粕クラッカー(¥380)、いろとりどり野菜のピクルス(¥550)。
料理を温めるだけなのでキッチンは非常にシンプルです。なんて機能的でいて美味しいシステム。早い!旨い!安い!の三拍子。この瓶スタイル、真似されるかも!?

一番人気の常陸野さばサンド(¥550)。さばに効かせた酸味がビールの旨味をひきたてます。

店内ではビールの原材料についてスタッフに話を聞くことができます。こちらはビールによって品種が変わる、さまざまなホップ。そもそもビールでよく聞くホップとはアサ科の植物。5m 以上の高棚で栽培され、その花(毬花)がビールの原料となります。

こちらはホップのアロマテスター。手の上に一滴ずつ垂らし、その香りの違いを知ることができます。シトラス系からフローラル系、スパイシー系までその香りはさまざま。

※表示金額は全て消費税込み。

PROFILE
大石 智子

編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。『GQ JAPAN』『東京カレンダー』『LEON』『メンズクラブ』など男性誌を中心に活動。趣味は海外のホテル&レストランリサーチ。

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