食べて「発見」。

「食べること」に真正面から向き合える店。…素敵です。


Jan 27th, 2016

text_junichi kobayashi
photo_tamon matsuzono

その名は「sage & fennel ( セージ アンド フェンネル ) 」。食材の持つポテンシャルをできるだけ活かしながら、健康を志向する「スローフード」。それを「手軽かつ気軽に」楽しむことができる“スロー ファスト フード”という考え方をいち早く日本に紹介したことですでに有名なお店です。陽光が差し込む明るい店内で、食材のチカラをダイレクトに感じる料理の数々を味わっていると、ただ楽しく食べているだけなのに、なんだかとっても大切なことをしている気分になってくるから不思議です。

SHOP INFO
sage & fennel
TEL:03-6450-4789
住所:東京都渋谷区広尾 5-19-6
営業時間:11:30〜22:00 (21:30 LO)
定休日:月曜日
席数:24席
http://www.saf.tokyo/

広尾駅から徒歩3分、広尾商店街の活気が少しだけ落ち着いてくるあたりに佇むグレーのお店が「sage & fennel ( セージ アンド フェンネル ) 」。「たくさん食べたいけれど、できるだけ身体に良いものを摂り入れたい。食事を楽しんだ後に感じる罪悪感にも似た感覚から解放される食事を提供したい」。そんなパッションを、2人のオーナーが胸に抱きつつ2015年11月にこの店を開いたというのも周知のとおり。

店内では、まずカウンターで「SALAD」「MEAT」「SOUP」など、10種類以上のメニューの中から好きなだけオーダーしてサーブしてもらうデリスタイル。

各地の農家から直接届く旬の野菜をはじめとして、豆類などもふんだんに使われたサラダやマリネは、常時8種類。山形豚や大山鶏などの肉を使ったメイン料理が2~3種類で、野菜たっぷりのスープも2~3種類というラインナップです。

「1ポーション」が400円、「2ポーション」が750円、「3ポーション」は1050円。で、それ以上は1ポーションごとに400円を追加するというわけですが、本気でどの料理も捨てがたいので、ひとまずおすすめしたいのは「全部盛り」(1550円)!7~8種の前菜と、スープか煮込み料理をセットにしてドリンクを付けたセットのことで、トップ画面のメインカットがそれ。

健康的な「全部盛り」をご紹介

さて。この日の「全部盛り」のラインナップを簡単にご説明してみましょう。時計でいうところの「12時」の位置から時計回りでご説明します。

◉ ビーツと紅芯大根とレンズ豆のサラダ
自然栽培されたビーツと紅芯大根をレンズ豆と一緒にマリネした一品。野菜は土付きのまま届いたものを、敢えてあまり洗わずにオーブンに入れ、低温(140℃)で4~5時間加熱するそう。…これがまた土臭くて美味しいんだよなぁ。

◉ 新黒田五寸人参のラペ
長野県は「アトリエノマド」の「黒田五寸人参」を塩でもみ、数時間置いた後に使うそう。人参特有の香りと甘みと食感の全てを楽しめる、この店の定番。

◉ 鶏胸肉とビタミン大根マリネ
鮮やかなグリーンで、噛めば噛むほどに瑞々しい「ビタミン大根」は、その名の通り栄養価が高いことで最近農家の間でも注目されている新品種。鶏の胸肉のうま味が重なって、実に美味しい!

◉ ローストポークと紅くるり大根のハニーマスタード風味
北海道産で自然栽培された「紅くるり大根」は自家採種して育種も手掛ける農家の作。まず驚くのが、中まで赤い大根の色合いの可憐さ。寒くなる時期には甘みも増すので生食に適している大根だそう。

◉ エビとキャベツのサラダ 人参ドレッシング
食感のリズムを生み出すために、キャベツは敢えて雑に切るというのがこのサラダ。人参のドレッシングは他のサラダにも使われるこの店の影の立役者です。

◉ 色々キノコのマリネ
しめじやえのき茸などのきのこ類は、それぞれしっかり滋味深くて美味。どれも歯応えをしっかりと感じられるのは、きのこを高温&短時間で加熱するから。

◉ 大麦と色々ピクルスのサラダ(中央)
大根やたまねぎなどのピクルスを、大麦と和えた一品。大麦のプリっとした食感の間に、ピクルスたちのコリコリした食感が時おり挟まるので、食べるのが楽しいのです。

“食べる”ことの本来の意味を、改めて。

…というわけで「全部盛り」をしっかりと味わうと、野菜でお腹がいっぱいになる感覚。この感じ、なんだかとっても素敵です。まさにこの店のコンセプト通り「罪悪感フリー」な気分すら味わえる…。

オーナーの和泉大介さんと柴田大輔さんの本業はCMや映画の監督。「撮影の期間中などは、基本的にロケ弁的な食事がデフォルトで、夜飲みに行ったりすると朝まで…みたいな日が少なくないんです。つまり、この店を最も欲していたのは、私たちなんですよね」と振り返るのは柴田さん。身体に良い物を用意して、心を込めて料理するというのは、自らが子どもの頃には母親がしてくれていたことだけれど、大人になった今では、自分で意識すべきことだ、というわけです。

仕事で1年半の間LAで暮らしていたこともある柴田さん。当時の暮らしを振り返ると、温暖な気候に包まれて、豊かな食材を使った健康的な食生活を送っていたことに改めて感じ入ったそう。その時に思い出したのが「You are what you eat.」という言葉だったそう。

「You are what you eat.」

「LAで暮らしていた頃に“You are what you eat.”という言葉を聞いて、すごく腑に落ちたことを思い出したんです。要は“身体に良い食べ物をバランス良く食べなさい”という気持ちを込めて、お母さんが子どもたちに言うような言葉なんですが、食べたものでしか自分の身体は作られないなぁと思って…」と柴田さん。

お腹いっぱい食べることは、多くの場合「幸せ」と「後ろめたさ」をともに抱える、逆説的でダブルバインディングな状況だと思っていたけれど、この店の登場でそんな考え方を切り替えることが出来るのかも。

山形豚のアリスタ

大きな切身が3枚。しっとりした食感のローストポークは、ハーブでマリネして1日寝かせてから焼くそう。豚の香りがしっかりと立ち上るのに、それがまったく嫌味ではなく、豚の個性を味わえる逸品!(500円)

大山鶏とかぶの煮込み

ジューシーなかぶを煮込んだ鶏肉のうま味とともに味わう料理。実は自然栽培の野菜には個体差が。同じかぶでも素顔がまったく異なるそうで、生で齧ってみたり茹でてみたりしたうえで、調理法を決めるそう。(500円)

ちなみに料理はすべてテイクアウト可。オリジナルでつくりおろしたランチボックスも素敵です。

※料理の価格は全て税抜き表記です。

PROFILE
小林 淳一

編集者。東京メトロ駅構内で配布するフリーマガジン『metro min.』、食材のカルチャー誌『旬がまるごと』などの編集長を経て、主に食の分野で編集者として活躍。お酒を呑んで東北を応援するイベント「DRINK 4 TOHOKU」(http://www.drink4tohoku.com/)を開催している。

楽しいが美味しいに繋がる、とにかく明るい日本酒バル

私的、ホテルの朝食ビュッフェNO.1


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