食べて「発見」。

都内全域 TWILLOトワイロゥ


Oct 15th, 2014

text_tomoko oishi
photo_newyorker magazine

肌寒くなってきた10月。“寒いからそのまま家に帰ろうかな……”、という気持ちと、“いや、やっぱり一杯飲みたい!”という気持ちの狭間にいる方もいらっしゃるかと。私は、欲望に忠実に飲むことを推奨。そこで今回は、おひとりさまでも楽しめる不思議なバーをご紹介します。移動式リアカーバー「TWILLO(トワイロゥ)」の特等席は、東京の空の下です。

SHOP INFO
TWILLO(トワイロゥ)
8年前にオープン。バーのオープン範囲は主に東京都心。営業は21時半前後からだいたい翌日の明け方まで。オープン情報に関しては以下Twitterに掲載 @Twillo0
ドリンク500円〜

都内を点々と移動する面白さ

そのバーには住所も電話番号もないけれど、美味しいお酒とシガー、そして大人の社交があります。神出鬼没に都内に現れる白いリアカーバー「TWILLO」は、今日もオーナー神条昭太郎さんのTwitterを合図に店をオープン。都内をちょこちょこ移動しながら営業を続けています。

原宿キャットストリートの入り口でファッション関係のお客をもつこともあれば、勝どき橋のたもとで新聞記者や地元のおじいさんが集まることも。一般的なバーが常連客をもつのに対し、このバーは日々移動しているため、場所が変わればお客も変わります。そして、紅葉の木の下で営業することもあれば、桜の木の下で営業することもある。街や季節に従順になじみ、店の表情を変える、カメレオンのようなバーなのです。

ハイクオリティなお酒とグラス

この店のすごいところは、移動式リアカーというバンカラな営業スタイルをもちつつも、細部がラグジュアリーなこと。グラスやデカンタは、なんとすべてラリックかバカラ。グラスが美しいだけで、こんなにも気分は上がるんだと実感するし、持つ人までをも2割増しくらいに見せてくれます。

そしてお酒は、いまでは非売品のメーカーズマークのブラックや23年もののロンサカパなど、レアなブラウンリカーから、日替わりの各国ビールやワインを揃えます。お酒があまり強くない女性でも、クランベリージュースを使用した甘めのカクテルなどもあるので大丈夫。さらに、シガーも数種類あるのです。そもそもシガーは外で吸った方が美味しいですしね。ちなみにシガーのアシュレイまでバカラと徹底!

品がよくインテリな店主

そう目利きなものが揃っているのは、オーナーの神条昭太郎さんがセンスのいい酒好きだから。このひと言につきるでしょう。

この神条さんですが、取材陣と名刺交換をしたときの姿勢がやけに丁寧。敏腕営業マンさながらの、腰を90度に曲げたきれいなお辞儀で名刺を受け取るんです。聞けば、元衆議院議員の秘書で、その前は銀行員だったとか。納得…。その後、自由な生活と稼げる仕事を模索した結果、このリアカーバーに行きついたそう。

確かに、競合店もないですし、席数は無制限。多い日には数十人のお客を持てる。「しいていえば、ライバルは雨風や台風」と神条さんは話します。

大人の社交場となっている

「TWILLO」は人間模様が面白い。本当に色々な人たちが集まります。「職場が近くてたまたま通りかかったから」という人や、「前に来たことがあって、今日は来たことのない街でオープンしているから行ってみようと思って」など、店にくる理由もさまざま。

そして、小体でスタンディングであるという特性から、仲良くなりやすいんです。取材日も、「どうしてこのバーを知っているんですか?」というちょっとした質問から、会話を始める人たちがちらほら。グループでここに来たかのような3人組みも、実はそれぞれがひとり客だったということもよくあります。普段はひとりでは飲まない女性も、ここでなら手持ち無沙汰になることはないはず。なんと、このバーで出会って結婚したカップルも、神条さんが知るだけで2組いるとか!!

屋外ならではの楽しさがある

バーではお酒しか出さないので、フードの持ち込みは自由。タコ焼きでも生ハムでも出前でも、夜のピクニック気分で好き勝手に食べることができます。冬は寒いかな…?と思うでしょうが、ホットラムやホットワインなど温かい飲み物もあるので、それらは逆に寒いなかで飲めば五臓六腑に染みわたります。また常連客によると、みなで「寒いけどもう一杯飲みたい!」と震えながら飲むのも、冬らしくて楽しいんだとか。

屋外にいることになるので、コートの着用はマスト。ダウンなら温かいけど、こういうカジュアルな店だからこそ、ちょっとドレスアップした方がギャップがあって面白い。男性はウール仕立てのチェスターコート、女性はファーのコートなどありかと思います。

そんな「TWILLO」は、基本無休で年末年始もオープン。冬空の下でカウントダウンをし、その時店がオープンしている場所から一番近い神社に全員で初詣に行くのが毎年の定番です。今年何も予定のない人は、遊びに行ってみてはいかが?

PROFILE
大石 智子

編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。『GQ JAPAN』『東京カレンダー』『LEON』『メンズクラブ』など男性誌を中心に活動。趣味は海外のホテル&レストランリサーチ。

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